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透明人間の俺だが、片思い中の同期のスケベが拝めない  作者: saba20


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13/15

13話:マドンナと帰り道

弱音を吐ける場所が、人を強くする。


あのカフェで藤咲の涙を見てから数日。

俺の中でくすぶっていた決意は、時に甘い

誘惑となって俺を試していた。深夜、自分の部屋で

ベッドに横たわりながら、俺は自分の右手を

すっと透明化させる。透明人間になって藤咲の家に

忍び込むことで、藤咲が何に悩んでいて

どんな本音を抱えているのか、全てを知ることが

できる。陰からそっと見守り、裏から手を

回して助けることだって簡単にできるはずだ。

だが、俺は透明化を解除した。藤咲の秘密を

覗き見したところで、俺は一生

影の守護者のままだ。俺がなりたいのは

コソコソと裏で暗躍する存在じゃない。

生身の人間として藤咲の視線を受け止め

堂々と隣に立ちたい。弱さを振り払い

俺は改めて心に強く誓った。


週が明け、新しいプロジェクトの重圧に

押し潰されそうになりながら懸命に戦う藤咲。

別部署の俺に仕事の直接的な手助けは

できない。だが、俺にしかできない

寄り添い方があるはずだ。昼休みのピークを

過ぎた社員食堂。浮かない顔で一人

端の席に座ったままの藤咲の姿を見つけた。

俺は自販機で買った温かいお茶を

持ってそっと近づいた。


「藤咲さん、根詰めすぎてないですか?」


「あ……佐藤さん! ありがとうございます」


俺が声をかけた瞬間、藤咲の瞳がパッと

明るくなった。温かい缶を両手で

包み込みながら藤咲は小さく吐息を漏らした。

その瞬間、柔らかいニットの胸元が

かすかに揺れ、綺麗に浮き出た鎖骨と

透き通るような首筋が露わになる。

缶に添えられた薄桃色の唇と、少し潤んだ瞳で

上目遣いに見つめてくる無自覚な色気に

俺の心臓はドクリと跳ね上がった。

普段は完璧なマドンナとして気を張っている

藤咲も、こうして俺と接するわずかな

時間だけは、気の抜けた柔らかい

素顔を見せてくれる。


「佐藤さんの顔を見ると

不思議と肩の力が抜けるんです。」


恥ずかしそうに頬を朱に染めながら

小さく首を傾げて微笑む藤咲。可憐で艶やかな

その姿は、俺の胸を強烈に締め付けた。

こうして互いに向き合い、言葉を交わして

藤咲が自分の足で立つための心のオアシスに

なること。それこそが、今の俺にできる

一番の誇りあるサポートなのだと

実感していた。自分の足で前を向こうとする

愛おしい笑顔を見つめながら俺の胸は熱い

愛おしさで満たされていった。


奇跡的に退社時間が重なった俺たちは

夜風が心地いい帰り道を並んで歩いていた。

街灯の下、昼間の疲れを滲ませながらも

晴れやかな表情で自宅付近まで歩みを進める。


「えっ嘘!?お隣だったんですか!?

全然気づかなかった……!

なんだかすごく恥ずかしいです......」


「ぼ、僕、影が薄いですから。でも、隣なら

何かあった時はすぐに駆けつけられますね」


目を丸くして驚く藤咲に、ずっと前から

知っていたことを隠すように、冗談交じりで

返答した。夜の静けさの中、頬を赤らめて

小さく微笑む藤咲。生身の距離がまた一歩

縮まった感覚に、俺の胸は温かい愛おしさで

満たされていった。


そんな二人の穏やかな帰り道を、物陰から

暗い瞳で見つめる男がいた。同僚の高木は

藤咲と同じプロジェクトに関わり、 

アプローチを重ねていた。自分を突っぱねる藤咲が

なぜ部署の違う冴えない俺とだけ

あんなにも密やかに笑みを向け合っているのか

理解できず、肥大化したプライドに激しく

苛まれていた。暗い執着と嫉妬の炎が

静かに一線を超えようとしていることに

俺たちはまだ気づいていなかった。

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