【第2章】占い師と、1ヶ月の期限
そんなある日、現実の仕事を終えて駅までの道を歩いていると、路地裏の一角で怪しげな占い師に声をかけられた。
(うわ、絶対に関わらない方がいいタイプだ……)
そう思いながらも、持ち前の断れない性格が災いし、私は足を引き止められてしまった。
すると占い師は、無言のまま一枚のチケットを私の手のひらに押し付けてきた。
「い、いらないです!」
怖くなって引っ込めようとしたが、
「タダであげるから持って行きなさい」
と不気味に微笑む。
急いでその場を離れたものの、あとから法外な代金を請求されたらどうしようと恐怖心が一気に膨らみ、振り返って突き返そうとした。
しかし、数秒前にそこにいたはずの占い師の姿は、すでに跡形もなく消えていた。
心臓をバクバクさせながら急いで実家に帰り、自室のベッドに倒れ込んでスナック菓子を開け、ようやく一息ついた私は、おそるおそるそのチケットをしげしげと眺めた。
チケットの表面には、鮮やかな色合いのQRコードが印刷されている。ウイルスや詐欺の可能性を考えてためらったが、それ以上に得体の知れない好奇心が勝ってしまい、私は震える手で自分のスマホをかざした。
【ご案内】
あなたが毎日みている妄想を実現することができます。ただし、選べる男性はもちろん1人。妄想の中のモデルの仕事も現実となります。
ただし、現在は妄想の中の『理想の部分』しか見えていませんが、やがて『現実』も突きつけられることになります。
有効期限は今から1ヶ月。妄想の中で誰と結ばれたいのか、じっくり見極めて決めてきてください。
私は息を呑んだ。妄想の内容なんて誰にも話していないはずなのに、まるで私の頭の中のスクリーンをそのまま覗き見されているような文面だった。
最初は混乱したが、不思議と疑う気持ちは起きなかった。むしろ、「この1ヶ月の間にあの4人の中から本気で1人を選び、このパッとしない現実から抜け出して幸せを掴み取るんだ」
と、妙な使命感に火がついた。
その夜、私は胸を高鳴らせながら、夢の世界へと飛び込んだ。




