【第1章】完璧な私の、完璧な恋人たち
私は28歳、実家暮らしのOL・みずき。
ぽっちゃりとした体型で、最後に彼氏ができたのはもう5年前のことだ。
地元の中小企業で事務員として働く毎日。
やりがいなんて微塵もない。
控えめな性格が災いしてか、周りから押し付けられる雑務を断ることもできず、平日はひたすら書類と向き合っている。
そのせいかミスも多く、同期は主任になっているのに、私はいまだになんの役職もない。
スマートフォンを開けば、学生時代の友人たちは次々と結婚し、子供を育て、マイホームを手に入れたという幸せそうな投稿であふれている。
そんな眩しすぎる現実から目を背けるように、私が毎晩ベッドの中で
必ずやっていること――それが『妄想』だ。
せめて寝るときくらい、現実のしがらみから解放されて、誰よりも幸せでいたい。
妄想の世界の私は、誰もが羨むトップモデルだ。都内の高級マンションで一人暮らしを満喫し、SNSのフォロワーは50万人を超える。
有名ファッション誌の専属モデルを務め、テレビCMにも引っ張りだこ。現実の友人たちも、画面の向こうの私に憧れの眼差しを向けている。
そして何より、この妄想の世界には4人のイケメンで完璧な恋人たちがいる。決して四股をかけているわけではない。
それぞれのパラレルワールドで、私は彼らと甘い時間を過ごしているのだ。
1人目の男性は、日本を代表する人気歌手のれん(33歳)。
「ファンの子も大切だけど、1番はみずきだよ」
私がモデルとして起用されたCMで彼が楽曲を担当したことをきっかけに親しくなり、彼の家に遊びに行った際に告白された。
大人の色気が漂う彼は、ただ目の前にいるだけで胸のきゅんきゅんが止まらない存在だ。
2人目の男性は、大手企業のエリートサラリーマン・みなと(29歳)。
「疲れたでしょ? 今日は僕が美味しいご飯を作るから」
行きつけのお洒落なカフェで何度かすれ違ううちに向こうから声をかけてくれ、交際に発展した。
スラッとした体型でスーツが抜群に似合い、優しくて料理も得意。
一緒にいると心から落ち着ける。
3人目の男性は、美容室の経営者・ひろき(28歳)。
「みずき、こっち向いて。可愛い顔がみたい」
私が新人モデルだった頃、サロンのホームページのモデルに起用してくれたのが彼だった。
圧倒的なトーク力で会うたびたくさん笑わせてくれ、女性の扱いも抜群に上手い。
最近の言葉で言うなら、とびきり「メロい」男性だ。
そして4人目の男性は、IT・Web系のエンジニア・そら(25歳)。
「みーちゃん、今日も大好き。ずっとくっついてたい。」
基本はリモートワークで自宅にこもっている彼は、オンラインゲームで出会った。
オフラインで顔を合わせて意気投合し、恋人同士になった。
とにかく甘えん坊で可愛い癒し系であり、記念日やサプライズを絶対に欠かさない。
そんな、それぞれに異なる魅力を持った最高の男性たちと、妄想の中で愛し合っている私。その甘い夢の
なかにいるときだけは、私は何者かになれた気がした。




