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澄斬姫 ―神殺しの男に背負わされた、復讐の妖刀―  作者: 白杜深月
第一部

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第三十五章 再会の果て(第二話)

「何者だァ!」


龍之介に向かって、白羅が怒号を放った。

龍之介は弾かれたようにその声の主へ目を向けた。

そこには、大男に押さえつけられ、地に伏せさせられている清志郎の姿があった。

顔は土にまみれ、苦痛に歪んでいる。


「せ、清志郎!」


龍之介は思わず、探し求めていた友の名を叫んだ。

そして、その場に居並ぶ者たちの顔を見て、すべてを悟る。


「もしやお前たちは、澄斬姫とその眷属たちか! たった一人を相手に寄ってたかって……卑怯ではないか! 今すぐ清志郎を離せ!」


普段はその大柄な体格に似合わず温厚な龍之介が、怒りをあらわに刀を抜く。

たちまち燕羽と雪音が、澄斬姫を庇うようにその前へ進み出て、龍之介を鋭く睨みつけた。


「ほう、今度はお前が相手をしてくれるのか? おい、玲牙。俺の代わりに、こいつを押さえていろ」


白羅は清志郎を玲牙に任せると、金棒を握りしめ、獰猛な笑みを浮かべながら龍之介のもとへ歩み出した。


「……ば、か……やろう……逃げ、ろ……龍、之介……」


清志郎は、喉を潰したようなかすれ声を絞り出す。

だがその声はあまりに弱く、無情にも龍之介には届かない。

清志郎を押さえつけている玲牙にしか、聞こえていなかった。


「くっ……み、巳山、殿……龍之介は……村の者じゃ、ない……村とは……関係、ないんだ……た、頼む……見逃し、て、くれ……」


玲牙は何を思ったのか、じっと清志郎の目を見つめた。

清志郎も目を逸らさず、必死に言葉を継ぐ。


「あ、いつは……武者修行で……村に、立ち寄っただけの……ただの、お人好し、なんだ……何の、罪も、ないっ!」


玲牙は、ふっと清志郎から視線を外した。

その横顔から感情は読み取れない。


(聞き入れるわけねぇか……! 龍之介を死なすわけにはいかねぇのにっ! 畜生っ……!)



――また、失うのか。

――また、俺のせいで人が死ぬのか!



清志郎の目から、こらえきれぬものが零れ落ちそうになった、その時だった。


「姫様。その者は千凪村の人間ではないと、清志郎が申しておりますが……」


「――!」


玲牙の声に、皆の視線が一斉に彼へ注がれた。

境内が、水を打ったように静まり返る。


「だ、だから何だと言うのだ。村の者でなかろうと、清志郎と深く関わりのある者であろう」


沈黙を破ったのは白羅だった。

だが、それに応じたのは玲牙ではない。

澄斬姫である。


「龍之介とやら。何をしにここへ来た」


「清志郎の……その……朝比奈家の紗世という娘の命が危ないのじゃ! それで、清志郎を探しに来た」


「さ、紗世が!」


清志郎の顔から、さっと血の気が引いた。

宗真の報告では、順調に回復していると聞いていたからだ。


「どうしたのだ。病か? それとも……」


澄斬姫が怪訝そうに、龍之介へ問いかける。


「あの娘は父親の自害を、刃を握りしめて止めたのじゃ。深い傷を負い、高熱も出たが、いったんは落ち着いておった。……それが、先程、容態が急変してしもうて……」


龍之介はそこで言葉を切り、清志郎のほうを見た。


「な、何だって? そんな……」


(玄庵先生でも、どうにもならないということは、膿毒が回ったのか。もう、天命に任せるほかないということか)


清志郎はその意味を悟り、目の前が暗くなるような絶望を覚えた。


「一刻も早く、清志郎を連れて帰りたいのじゃ! 澄斬姫とやら、清志郎を解放してくれ!」


龍之介の必死の訴えに、白羅は呆れたように吐き捨てる。


「何を都合のいいことを言っておるのだ! そのような話が通るものか――」


「わかった。連れて行くがよい」


白羅の言葉を断ち切るように、澄斬姫が告げた。


「なっ! ひ、姫様!」


白羅だけではない。

燕羽も雪音も、そして玲牙までもが、わずかに目を見開いた。


「玲牙、清志郎を離しなさい」


静かな命令だった。

だが、逆らうことを許さぬ響きがあった。

玲牙は無言のまま、清志郎から手を離す。

その瞬間、龍之介が駆け寄った。


「清志郎、大丈夫か? どこをやられた?」


「大丈夫だ。水月に、強烈なのを一発くらっただけさ」


「立てるか?」


「ああ」


清志郎は荒い息を整えながら、どうにか立ち上がる。


そして、澄斬姫へと視線を向けた。


「理由はわからぬが、礼を言う」


澄斬姫は、少しも表情を動かさなかった。


「よい。お前はどのみち、私からは逃げられぬ。それを肝に銘じておけ」


低く、静かな声だった。

脅しとも宣告ともつかぬその言葉に、場の空気がひやりと冷える。

清志郎は何も返せなかった。

その声音の奥にあるものを、どうしても測りきれなかったからだ。


「行くぞ、清志郎。急がねば」


「ああ、わかってる」


龍之介に肩を貸されるようにして、清志郎は歩き出す。

澄斬姫の脇を通り過ぎる、その刹那――ほんの一瞬だけ、彼女の横顔に翳りのようなものが差した気がした。

だが、確かめる余裕はなかった。

清志郎と龍之介は、朝比奈家へ向けて急いだ。

【Norion資料設定へのご案内】

https://flossy-game-aea.notion.site/30dcc3fba41480a789b3c56f9470edac


Notionで設定資料集を公開中です。

現在も工事中ですが、ご参考までにご覧ください。

登場人物、用語集、ギャラリーなど、随時更新していく予定です。




【Xアカウントへのご案内】

https://x.com/shiramori_lab


白杜 深月(小説)/ココロの迷宮(YouTube)

@shiramori_lab

和風ダークファンタジー小説『澄斬姫 ―女神の妖刀―』を執筆中。

江戸の闇と人の情、そして神の祟りを描く物語。

カクヨム・なろう・Nolaで連載。

YouTube「ココロの迷宮」では心理と恐怖をテーマにしたショート動画を制作。

静かに語る物語を、静かに愛してくださる方へ。

※画像と動画はAIを使用しています。

※フォローしていただけると嬉しいです。

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