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ユウキサーガ ~ 悪を撃ち抜くCheckmate!~  作者: クレキュリオ
恋歌編

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第8話 集まる小石

「完成したか。ご苦労だった」


 ビジランテ社の社長室。斎野修一は内線を受けていた。

 笑顔で報告を受け取り、優しい声色を出す。

 部屋の隅で、朝倉が気味悪そうに修一を見ている。


「開発チームには臨時ボーナスと、暫くの有給を追加しよう」


 背もたれにもたれかかり。頬が緩んでいる修一。

 見た目だけなら、爽やかな社長だ。


「君達は会社の為に十分、時間を使ってくれた。暫くは自分の為に、時間を使ってくれ」


 修一は受話器を置いた。足を組み、椅子を回す。

 朝倉に体を向ける。腕を組みながら目を細めた。


「なにか不満かね? 朝倉君」

「いやぁ……。手駒とは随分、接する態度が違うなぁって思って」


 朝倉は隅から移動した。彼女も腕を組みながら、壁を背にする。

 修一は表情はそのまま、鼻だけで笑った。


「私は社員のプライベートを大事にする主義でね。労働者には敬意を払う」


 修一は立ち上がった。グラスに赤ワインを注ぐ。

 口にすることなく、グラスを揺らすだけだ。


「会社の利益の為に、自分を犠牲にしろ。などと言う企業には、奴隷しか残らない」


 グラスを背後に投げつける。

 ガラスが割れる音が、部屋に響く。


「それでは有能なものが離れていくだけだ。会社の発展には繋がらない」

「無能は切り捨てて、有能を切り捨てると? 花薗の様に」

「出来る出来ないではない。反省しない人間は、私には邪魔なだけなのだ」


 修一は引き出しから、デバイスを取り出した。

 スマホの様に見えるが、構造が違う。

 画面にはオレンジの球体が、映し出されている。


「NAIが一体、私のもとの戻った。アーマーも完成した。順調に見える」


 修一は拳を握りしめた。机を叩き、手を振動させる。

 鷹の様な目つきを、朝倉に向ける。


「だが敵が増え、味方が減ったのが現実だ。不利な形勢なのだよ」

「欲しいものが手に入った割に。通りで唐辛子みたいな空気出すわけだ」

「私は目先の利益より、長期的安定を重視するタイプなのでね」


 朝倉は腰から剣を、引き抜いた。

 刃を修一に向けて、挑発する笑みをする。


「じゃあ、次の一手はどう仕込む? 社長さんよぉ」

「斎野敬を始末しろ。奴が回収したNAIを、取り返すのだ」


 修一は乱暴に、引き出しを閉めた。

 彼の事が分かってきた朝倉は、一切表情を変えない。


「敵が一枚岩になる前に、砕く。もっとも目立つ小石をな」

「アンタにとっては、後手に回り続けている存在だからなぁ」


 朝倉の言葉に、修一は眉を細めた。

 喉の形が整わず、言葉が上手く出てこない。


「アンタの事を熟知しているし。技術も高い。おかげでユウキに逃げられちまった」

「欠点は慎重すぎるところだ。信頼できるか、まだ見定めている」

「完全にユウキを信頼して。接触を図る前に消す訳か」


 朝倉は頷きを繰り返した。ゆっくりと、修一に近づく。

 彼の首元に、剣を向ける。


「引き受けよう。だが報酬と約束は……。忘れないでくれよ?」

「それは君の成果しだいだ」


 修一はこの状況で、恐れを見せない。

 朝倉は笑みを引っ込めて、瞼を少し閉じた。


「つまらない人間だな。社長さんは」


 朝倉は足元から、黒い霧を発生させた。

 体を覆い隠す。剣だけを修一に向けた。


「一応警告していく。未払いの代償は、永久なる悪夢だ」


 黒い霧と共に、朝倉は姿を消した。

 修一は深いため息とともに、椅子に座り直す。


「やれやれ。出来れば敵に回したくないものだが……」


 修一はNAIの入った、デバイスを見つめる。


「そう上手くいかないものだな。私も彼女も」


***


「下手な入れ方だなぁ。味が落ちてるぜ」


 リベリオンの店内。

 カップに口をつけながら、柴葉が文句を口にする。

 

「うるせぇな。なら自分で入れれば良いだろ。看板娘なんだから」


 ユウキが目を細めながら、反論する。

 机の上で装備のメンテナンスを行う。


「私は料理担当だ。コーヒーは入れたことねえよ」

「じゃあ、偉そうにすんなよ。豆抜いてやろうか?」

「んなもんだしたら、お前にぶっかけてやるよ」


 二人共作業をしながら、悪口をぶつけ合っている。

 文句言われながらも、ユウキは顔が緩い。

 遠慮なく、声と心がリンクする。


 リベリオンに足を運んでから、日は浅いが。

 ユウキは柴葉と言う少女に、壁を薄めた。


「ここ数日、進展なし。次の一手もなしだ」

「うるせぇな。だから私が、情報集めてやってんだろ。感謝しろよ」


 柴葉はVA事件のデータを、解析し終えた。

 実験の成果と、被験者の名前。責任者が斎野修一だと分かった。

 とは言え、反撃するにはパンチが足りない。


 柴葉は諦めず、情報収取を続けていた。

 忙しいせいか、最近はユウキをコキ使うようになった。


「熱湯ぶっかける様な奴に、感謝したくなね」

「かけてねぇよ! お前が豆抜きコーヒー、持ってこなければな!」

「持ってたらかけるんだろ? っていうか、豆抜きコーヒーってなに?」


 ユウキは余りにも、状況が変わらな過ぎて。

 すっかりテンションが日常に、戻ってしまった。

 チラリと、隣の席に座る恋歌を見つめる。


 彼女は会話など、耳に入れていないのか。

 ずっと同じ顔で、ゲームをしている。


「こっちも進展なしだな。お前」


 柴葉が口角を下げ、憐れむ目で見つめる。

 視線の先に、恋歌を捉えている。


「暇とは言え、なにも解決してないからね。正直、そういう気分になれないかな」

「まあ、そうか。全部終わったら、私も協力してやるよ」

「No Thank You。そういうの、失敗フラグって言うんだぜ」


 メンテナンスを終わらせて、ユウキは装備を整えた。

 剣とガントレットの調子を確かめる。


「意外だな。お前、機械弄りとか出来たのか?」

「メンテくらいなら。修理や開発は、出来ないけど」

「あぁ……。そこら辺はごっちゃにされるが、意外と専門が違うんだよなぁ」


 柴葉は目を閉じながら、頷いていた。

 ユウキも思わず、苦笑いが飛び出す。

 太陽の光はないのに。ユウキは日向ぼっこ気分になった。


 そこへ、カフェの扉が開く。

 鈴の音と共に、入口を見つめる。


「いらっしゃいま……」


 柴葉は店員口調で挨拶する。

 だが入店者の様相を見て、言葉が詰まった。

 ボロボロな服装。腕から血を出している少女が入ってきた。


「ど、どうかされました?」


 慌てて駆け寄ろうとする柴葉。

 それをユウキが手で制止した。

 恋歌もその少女を見て、ゲームから目を離す。


「よお、ローズ。ただ事じゃ、なさそうだな」

「アジトが襲撃された……! 紫のコートを着た。二刀流の奴に……」

「見覚えのある、容姿情報だな」


 ユウキはローズに、近づいた。

 致命傷は受けていないが、手当が必要な怪我だ。

 

「場所を教える……。敬を……。敬を助けてくれ!」

「敬? 斎野敬か……。やっぱり協力者って言うのは、彼の事か」

「敬は私を逃がすために、襲撃者の足止めを……!」


 ローズは膝をついた。弱々しい動きで、メモを渡す。

 ユウキはメモを受け取り、ローズを支えた。


「傷の手当を。ちょっくら、決着をつけてに行ってくる」

「そんな軽く、引き受けんのかよ? まあ、良いけど」


 ユウキは店の奥に、ローズを運んだ。

 柴葉がマスターを呼び、傷の手当てをする。


「ここはマスターに任せて。私らは直行と行こう。今日は休日だな」

「ああ。って、柴葉も来るのか?」

「私だって、最低限は戦える。今回は人命がかかっているからな」


 柴葉はカフェのを隠し金庫を開いた。

 造詣が特殊な銃を取り出す。


「意外だな。僕の良く知る、天才ハッカーは。インドアが服を着た人だったけど」

「いや、インドアは服を着ているだろ……」

「二人共、バカ言ってないで急いで!」

「恋歌に言われるのは、微妙に納得いねえな……」


 三人はローズ達のアジトへ、急いだ。

 廃棄された線路の奥にある、小さな小屋。

 そこが彼女達が隠れていた、秘密基地らしい。


「斎野敬は、VA事件の被害者なんだよな? そしてローズも……」

「ローズ……。花薗さんも、母親に実験体にされたから……。苦しみを分かち合えたのかも」

「なら絶対に助けねえとな。私らも仲間を失いたくねえし」


 トンネルを潜り抜けて、人里から離れる。

 脇にある小さな小屋に、近づいた。

 情報によると、その小屋が隠れ家だったらしいが。


 小屋の出入口に、スーツの男性が待ち構えていた。

 斎野敬ではない。ユウキにも見覚えのない人物だ。


「やはり来たか。ネズミを逃げせば、仲間も来ると思っていたよ」


 スーツの男性は、懐からデバイスを取り出した。

 防衛軍が使う、アーマーを装着する装置に似ていた。


「おっと。こちらの姿を、初めてだったね。私は……」

「斎野修一だろ? ムカつく態度で、直ぐに分かったぜ」


 ユウキの隣で、恋歌が首を傾げた。


「ほら、前に会った時は。アーマー装着してたから」

「あ、ああ……。わ、分かってたし!」


 ユウキの耳内に、恋歌は強がった。

 目の前にいる修一は、生身を見せている。


「彼女には悪いが。君達に長生きされては、業績悪化に繋がるのだ」


 修一はデバイスのスイッチを押した。

 手首のリングに装着する。デバイスから、緑の粒子が吹き出した。

 粒子は修一の体を包み込む。


「よって、私自らが処分することにした。まだ、アドバンテージがあるうちにね」


 粒子が変化していき、修一の体を隠す。

 光が弱まる。粒子が白銀のアーマーになる。


「ようやく完成に至った。これで対等以上に戦える」


 修一は指を鳴らした。音が聞こえた直後。

 ユウキは背後に吹き飛んだ。無意識に腹部を抑える。

 修一は動いた気配がない。


「なんだ? 何が起きたんだ……?」

「それを知られる前に、片付ける。対策を取られないために」

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