表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ユウキサーガ ~ 悪を撃ち抜くCheckmate!~  作者: クレキュリオ
恋歌編

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

101/103

第11話 正義の断罪者

「感じるか? この感情ぉ……。私の心を具現化した、この闇の感覚をよぉ……」


 ユウキの足元にも、黒い液体が広がっていた。

 朝倉の能力を思い出す。心の闇やトラウマを攻撃に転換する能力。

 前回の戦いで感じた、心を掴まれる感覚はない。


 足を通して、刺激が神経を走る。

 唐辛子を肌に塗られたみたいに、ピリピリする。


「感じるさ。懐かしい感覚だ」


 ユウキは抑揚のない声を出す。

 朝倉はトーンを聞いて、満足そうに笑みを浮かべた。

 武器を掲げて、指を鳴らす。


 床に広がる闇が。朝倉の足を掴むように、飲み込まれていく。

 彼女の姿勢が徐々に低くなる。液に飲み込まれていく。


「不特定多数への憎しみ。誰にやり返せば良いか分からない、苛立ちだな」

「良い……。それだよぉ。お前の本性を出させてぇ……。お前と言う人間を壊したぃ」


 床から三本の剣が飛び出してきた。

 サメのヒレが泳ぐ見た目で、地面を滑り始める。

 三方向から、ユウキへ移動する。


 ユウキはその場で素振りをした。

 斬撃か空振り、防御の意味をなさない。

 同時に近づく三本の剣。ユウキは正面のものとだけ、向き合った。


「確かにお前と僕は似ている。怒りの矛先も。戦っている理由も」


 左右から迫る刃。両方に鈍い音が響いた。

 僅かだが刃が弾かれる。その影響で、速度が下がる。

 ユウキは正面の刃を剣で防御。刃に擦らせて、受け流す。


 正面の刃の真横に移動。そのまま前転を行った。

 時間差で来た残りの二本。お互いぶつかり合い、対消滅する。


「自分が許せなくて。自分を壊すために、戦っている」


 背後から気配を感じた。下から上に伸びる風が接触する。

 金属を動かす音が、鼓膜を動かす。

 ユウキは上体を倒した。肩の上を、黒い剣が通過する。


「似てはいるが……。全くの別物だな……」


 ユウキは通過した剣へ、手を伸ばした。

 サイコパワーを腕に充填。腕の分身と共に剣を掴む。

 自分の腕力を超えた力で、剣を振り回す。


 剣を握った朝倉と共に、壁に叩きつけた。

 朝倉は立て直しながら、剣を変形。

 銃に変えて、エネルギー弾をユウキに放つ。


「おいおい。まさか正義か悪かなんて。お前までそんな下らない事言わねぇよな?」

「ああ。お前と僕の違いは……。自分を壊したか、殺したかだ」


 ユウキは右手に、青い剣を召喚した。

 剣の力を解放して……。魔人を体に纏う。


「ひゅ~。いきなりそれで来てくれたねぇ」

「この世に正義なんてない。みんなその単語で……。自分を正当化しているだけだ」


 ユウキは瞬間移動した。朝倉の目の前に移動して。

 二本の剣で、攻撃を仕掛ける。


 右手の剣で、力強い一撃を放ち。

 朝倉に武器で防御させる。

 動きを封じたところで、左手の剣を動かす。


 素早さ重視の武器で、連続攻撃を行った。

 剣を逆手に持ちながら、連撃を朝倉に加える。

 一撃は軽い。ユウキは一カ所を全ての軌道に入れる事で、それを補う。


「ぐぅ……。期待以上だぁ。ならこっちも……」


 朝倉の瞳が、赤紫に光った。

 彼女の背後に。床から黒い物体が飛び出す。

 物体は形を変え。悪魔か魔王と形容できる姿になった。


 背後の魔王は朝倉を、抱きしめるように包む。

 彼女に体を、魔王の体が纏う。


「魔王ちゃんで行っちゃうよ」


 朝倉は武器を振った。ユウキは弾かれる。

 吹き飛ばされただけじゃない。腕を電流が走る。

 以前見た蛇とは違う。パワー負けしている。


「お前が酷ぇ本性見せてくれたから。私も醜い本性見せてやったぜぇ」

「確かに。どっちも化け物だな」

「でも……。社会や世間の方が、よっぽど醜いだろ?」


 朝倉は笑みを引っ込めた。

 言葉に明確な感情が。怒りが混ざっている。


「みんな自分の言動に責任を持たない。自分がなにをしたのか分かっていない」


 朝倉は武器を双剣に分離させた。

 双方の剣に黒い靄が集まり。不気味な光を放つ。


「コメント消せば。なかった事に出来ると、思い込んでいやがる」


 朝倉はユウキへ飛び込んできた。

 瞬間移動もしていないのに。数秒の間もない速度。

 空気の動きが、後から来たほどだ。


「言葉は取り消せても。言われた方の、傷は消えない。世の中言ったもん勝ちだ」


 朝倉は剣を振り下ろす。先ほどよりも強い、一撃だろう。

 まともに防御すれば、崩される。こんな咄嗟に、瞬間移動は出来ない。

 ユウキは左手の剣で受け止めた。剣が当たる瞬間に手を離す。


 振動が伝わる前に繋がりを断ち。即座に銃を引き抜いた。

 至近距離にいる朝倉へ、銃口を向ける。


「みんな理由をつけて、誰かを攻撃したのさ。自分が優れていると思いたいために」

「それで正義を気取る連中が、嫌いになったと? まあ、気持ちは分かるけどね」


 ユウキは弾丸を発射。弾は朝倉の剣で弾かれる。

 朝倉は二本の剣を、どちらも構えられない。

 その隙に右手の剣で、朝倉を斬る。


 剣が朝倉に当たる直前。ユウキの腕が、見えない力に阻まれる。

 背後に飛ばされて、体も持っていかれる。


「私の異能力は。心の闇を具現化する。私は全てを拒絶する。否定する」

「マジか……。物理現象まで、拒絶すんの? 前の爆破は、これで助かったのか……」

「無限に仕える訳じゃねえよ。私の心にも限界があるからなぁ」


 朝倉の表情が、少しだけ歪んでる。

 彼女は心から、無限とも言える闇を具現化させている。

 でも心だって消耗する。彼女は体力の代わりに、心を使っているとユウキは思った。


 攻撃を通して、彼女の心も伝わって来る。

 強い憎悪、悲しみ。それらをぶつけることの出来ない、絶望。

 入り込む負の感情。ユウキは心の空洞に、全て流し込んだ。


 どれほど心を刺激する闇も。ユウキには通用しない。

 逃れるために作った空っぽが、全てを飲み込む。


「普通なら心を開いてやるんだろうが……。僕はこじ開けたりしない主義だ」


 念力で剣を引き寄せる。左手に掴み、再び二刀流へ。

 僅かに掴む力が、緩んでいる。

 疲労していると、自覚する。


「目を逸らすしかない奴に。見ろとは言わない。現実を見たところで、何も変わらない」

「やっぱりな……。お前は私を、理解してくれると思ったぜぇ」


 朝倉は両腕を広げた。胸を張り、上体を後ろに倒す。

 床を覆っていた、黒い液体が引いていく。

 その全てが朝倉の体に、戻っていく。


「もうプライベートモードだ。お互い、ビルを壊すつもりで。最大の攻撃をしようぜぇ」


 黒い液体を吸収した朝倉。同じ色の光に包まれる。

 彼女の体から衝撃が放たれる。ビルが振動するほどの力が、溢れる。


「こっちは最初から……。個人的に戦っている!」


 ユウキも力を込めた。右手の剣は、異世界の神器だ。

 人の心に反応して。その力を変化させる。

 自分がなぜ戦っているのか。それをこの一撃に込める。


 頭の中で、恋歌の顔が浮かぶ。想いが強くなるが。

 直ぐにかき消した。それは迷いにも繋がるから……。


「いくぜぇ……。冬木ユウキ!」

「朝倉光日……!」


 力を溜め終えたユウキは。真っすぐ突撃した。

 部屋の中央で、お互いの剣がぶつかる。

 接触と同時に、部屋に圧力が放たれた。


 剣がぶつかり合う最中も、衝撃が飛ぶ。

 部屋中の壁に、ヒビが入る。


「嬉しいぜ。こんなに全力で、向かい合える相手は久しぶりだなぁ」

「お前、友達"少な"そうだもんな」


 ユウキは軽口と同時に、サイキックを発動。

 腕の力が抜けない程度に、集中する。

 自分達の周囲に、八体の青い人影が出現。


 分身を作って、お互いを取り囲ませた。

 二体ずつ飛び掛かり。時間差を作って、朝倉へ攻撃する。

 一発は軽い。それでも朝倉の力を緩ませた。


 ユウキは朝倉の剣を弾く。

 彼女の体は空中に投げ飛ばされる。


「でも少ない繋がりを大事にしてそうだ。じゃなければ、そんな思想にならない」


 ユウキは空中に投げ出された朝倉へ飛んだ。

 両足のキックを放ち。彼女と共に壁際まで飛ぶ。


「安心しろ。お前の心も責任も……。僕が背負ってやる」


 朝倉は壁を貫通して。外とへ吹き飛ぶ。

 高層ビルの上層から、投げ出される。


「責任を背負うか……。やっぱり、最高だぜ。お前」


 朝倉の体から光が消える。纏っていた魔王も消滅する。

 落下していく彼女は。満足そうな笑みを浮かべていた。


「ふ……。ハハハ……。アッハハハ……!」


 笑い声を上げながら、朝倉は爆発に包まれた。

 体に取り込んだ力が、衝撃で暴発したのだろう。

 ユウキは呼吸を整えて。壁の穴から視線を逸らした。


 まだ戦いは終わっていない。寧ろここからが本番。

 気合を入れ直したユウキ。そこへ奥のドアが開いた。

 想像通りの人物が出てくる。


「斎野敬。やっと本戦だぜ」

「こういうの。漁夫の利みたいで、嫌いだが。そうも言ってられないか」


 スーツ姿の斎野敬は、腕を組んでいる。

 ビルが壊れようが。先ほどの振動を感じようが無反応だ。

 嘲笑うのでもなく。好奇心旺盛な子供の様な目でユウキを見る。


「十年かけて作った、ミラーアースだ。流石にここで頓挫は、勘弁かな?」

「ミラーアース?」

「この世界よりも、次元が上がった世界だよ!」


 斎野敬はミラーアース計画について、語り出した。

 もう直ぐ街中の人の、記憶がデータ化されること。

 そこでは誰もが好きな才能を手に入れられる事を。


「そんなもん、作って何になる? 地球を管理して、神にでもなろうってか?」

「そんなものに興味ない。神様が完璧なら、この世界は歪んでない」


 敬はポケットに、手を入れる。

 支配欲とは無縁そうな表情を、ユウキに向けた。


「大体、私だけが人間のままでは不便だろ? 私もデータ化するのさ」

「なんの為に、VA事件なんて、起こしたのかって聞いているんだよ」

「思いついたから。それを実験出来る、試した。それだけだ」


 まるで悪びれる訳でもなく。挑発することもない。

 本気で技術者として、悪意のない返答だ。

 恋歌達を巻き込んだ怒りが。底知れぬ狂気への拒否反応に代わる。


「技術って言うのは、暮らしを良くするものだろう? 私がみんなの理想を叶えてやると言うのだ」


 寧ろ善意が籠った声で、敬は言った。

 脳が理解を拒む。価値観が違うと、判断するしかない。


「その顔、理解してくれないみたいだね。良いよ。慣れている」

「一応聞いておくが……。自分の価値観に自覚はあるのか?」

「天才はね。理解されたら天才でなくなるのだよ!」


 斎野敬は腕に、デバイスをつけた。

 斎野修一と同じ。アーマーを纏う装置だ。


「人類の発展に、役立てたんだ。彼女達も真実を知れば、満足するはずだ」

「お前……。そこまで行ったら、人間じゃねえぞ……!」

「人間の枠組みに囚われては、技術は廃れる!」


 敬はデバイスを起動した。黒い粒子が発生して、体を包む。

 粒子が変化して、黒いアーマーへと変化した。

 ヘルメットが不気味な青紫に発行している。


「朝倉との戦いで消耗しているだろ? 無理せず、データ化を受けれいたらどうだ?」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ