表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
38/40

34話

◆◇◆◇◆


 地下第五階層───打って変わって鬱蒼とした森の中を突き進む、魔物の種類も昆虫型になっており地下第三階層までの迷路型、地下第四階層の海辺とはまた違った顔をのぞかせていた


 不思議なことに魔物の数がF級の筈なのにも関わらず、量はそれほど多くないことにマージは驚いていた。叩き潰した魔物も思いの外弱く疑念は深まるばかりだった



 地下第十三階層───降りる程に魔力の滞留が深刻になっていく中、地面のぬかるみが激しくなっていくのを徐々に感じていた。鼻につくツンとした〈湿気特有の異臭〉が鼻腔を刺してくる


「ん?」


 地下第十三階層にて、マージは魔物の死体を確認した。自分の扱う得物とは全く別系統の切創に〈人の足跡〉の持ち主であることを考えると先程とは違い足音を殺す形で奥へと進んでいく


 足跡の量からして4〜6人、重装ひとり確定、斥候を少なくともひとり、後は軽装、もしくは魔法使いの類とマージはぬかるんだ足元を注意深く観察して歩みを再開した


「…ぃた」


 足跡の深さが増していく中、足跡の持ち主たちに追いつくことになってしまったマージは物陰に隠れて様子を伺い始めた


 人数は4人だった。剣士と斥候、魔法使いらしき2人概ねの構成を知ったと同時にマージは領域内でよく見かける〈領主の家紋〉が目に入り思わず息を呑んだ


 それは〈アビークの家紋〉だったのだ


〈何で?〉〈不可侵の森〉

〈アビークの家紋〉〈人の足跡〉

〈彼等を中心とする環境魔力の湾曲〉


 マージはゆっくりと呼吸をする。吐く息を細く、弱く押し出すというより垂れ流す様に、吸う息を滑り込ませる様にゆっくりと、確実に呼吸をした


「誰だ!出てこい!」


【斥候の直感】を使われていた───【スキル】による炙り出しに引っ掛かり、存在を勘づかれてしまったマージは、こうなった以上次の一手に戦闘となる恐れを感じ、【スキル】の常時展開と【見つかるまでの時差】を図るため再び息を殺した


「なんだ、どうした」


「里の奴らでしょうな

 こんなところまで来るとは

 根性がある」


「…もう分かってんだよ、さっさと出てきな」


「…」


 マージは武器を背負い、顔を隠すと物陰から姿を現して敵意のないことを4人に示す様に両手を外側に向けて手の甲を頭の位置に掲げた


「子供?」


「て、敵意はありません」


「貴様、組合の者?人間か?

 所属と名を申せ」


 剣士の男がマージに向かって剣を向ける。魔法使いと斥候とは違い警戒を解かず直様マージと後衛3人の前に出てきた───手慣れた陣形維持戦術だった。


「元組合所属

 現在は浮空草(ウキクサ)のタイギと申します」



 浮空草───組合に所属していないもののこと、もしくは団体に所属していない者のこと



 マージはそう名乗った


「探索者、ではない…?

 こんな場所で何をしている」


「…」


「今は巡礼者として各地を回っています

 その成り行きでこの迷宮に入った次第です」


「【嘘は】…ついていませんね」


「チッ

 今現在、この場所はアビーク公の所有だ

 許可なく立ち入ることは禁止されている」


「…そうですか」


〈嘘である〉───迷宮は〈災害の前兆〉であり、自然の一部としてその定義が〈法書〉により定められている。仮に所有者がいたとしても立ち入りを禁ずる法はないのだ


 それを厳粛に管理するのが迷宮を管理する組合だ。これの存在により救援隊が派遣されたり、採取隊が派遣されたりする。富の独占や死者数をできる限り減らすために


「そうなのですね。てっきり

 新しくできた迷宮のため

 小遣い稼ぎにちょうどいいと思ったのですが」


「…それは残念だったな

 ここは既に認知されている迷宮だ」


〈嘘である〉───組合は迷宮を管理する。これは形だけではなく『術式』とそれを保管する〈建物〉を側に立てることで出入りした探索者の人数と滞在日数等を管理する。従って外観にその様なものが一切ないというのは管理外ということである


 加えて最凶迷宮に至っては〈依頼〉という形で報酬を用意し、滞在日数を厳格に管理、支援が受けられる。〈F級〉は早期発見、そもそもが破壊することが優先される。組合は常に監視対象に指定。事後受注・報告。入室制限は二の次だ


「貴方方は拝見するにアビーク家の私兵

 もしくはその系列に属される方々で

 間違いありませんか?」


「答える義理はない」


 マージは目の前の人間を見定め始めた───元仲間達が交渉ごとに向いていないため、自然と身についた相手を見定める力だった



〈立ち居振る舞いからして

 軍所属のものに違いない

 しかし、妙だ。態々森に出向くのだろうか

 それも少数で〉


〈家紋偽装によるものとも考えられない

 緻密な細工の施された腕章は

 本物と見て間違いない〉


〈陣形への理解と警戒の強さは

 新人ではない、洗練はされていない戦技から

 所属から2年と少しと断定〉


「戻ることもままならないので

 皆様と一緒に行かせては貰えませんか?」


「どうする?」


「ならん。怪我をしないうちにおとなしく帰れ」


「そこをどうか」


「…ボク、何か特技はある?」


「おい!メロ勝手なことをすんな!」


「何よ、このまま帰した方が

 怪我しちゃうでしょ」


「妨害魔法と回復を少しだけなら…」


「その歳で回復魔法を扱うとは

 親がしっかりしていたのであろう」


「…」


「あたしは賛成、あんたが

 連れてこなかった回復使いよ?」


「…ッチ」


「この子を入れれば盤石じゃない?

 そこんとこどうなのよ小隊長?」


「あぁ、ガキのお守りなんざまっぴらごめんだぜ

 お前が面倒を見ろよな」


「はいはい」


 話し合いがついたのか、女性がマージに近づき、挨拶を始めた


「私はメロ=ブランデ

 臨時だけど回復魔法で支援してね」


「よろしくお願いします」


 斥候のメロ=ブランデの近く、中距離に配備された

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ