30話
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「書簡をお返しに伺いました
これは旦那様へはお通ししかねます」
「待ってください!
説明の機会を!」
切望と感嘆、興奮冷め辞めないうちに終わった御披露目会から七日が経った。その間、アルトラはアビーク公爵の元に面会を申し出る書面を送り、幾度となく返事を受けていた
探索者組合の一室で執事と2人、受付嬢を除く、誰もがいなくなるまでアルトラは必死に食い下がっていた
「はて、答えは既に返事にて回答を…」
「で、ですからあの日
あの場所にマージが居なかったのは…」
「よいですか、アルトラ様
貴方は何か勘違いされておられるようですが」
黒服の執事は顔色ひとつ変えることなく、白手袋を整え直し、指を三本立ててみせた
「旦那様は本件をひどく気に入っています」
「そ、そりゃもう存じてますとも」
アルトラの返事を受け流し、執事は続ける
「貴方の活躍は十分に再現できたことでしょう
酒場で自らが話して見せた通りの活躍と
何故迷宮攻略の時に救出されたのかを」
「それは、それはあの時は
酔っていて、あることないことを
迷宮攻略にはマージが!」
「それに関しては私の
預かり知らぬところでございます」
アルトラは言葉を飲み込む。それを返答と見て執事は続ける
「お披露目会の催される前にマージ様は
貴方のパーティーから脱退
ひいては組合からの退団を為されています
これではマージ様を呼ぶこともままなりません」
「…」
「お気持ちは分かります
聞くところによれば迷宮攻略後に
マージ様は皆様をひとりで助け出し
迷宮救出隊にその任を引き継いだと」
執事は片眼鏡をクイと持ち上げて続ける
「ですが今回の場において
マージ様が呼ばれていないこと
招待の資格がなかったことは
決定事項でございます
何卒ご理解の程を」
「どうしてだ」
アルトラは【先読み】により幾度と試そうとも望む未来がないことに震え始め、苛立ちを募らせていった
「これは私個人の独り言にございますが
あの場にいないものにも褒美をというのは
やはり難しいと思われますよアルトラ様」
「…」
「貴方がひどくマージ様を気にされているのは
これまでのことを
詫びるためでもあるのでしょうが」
「…!」
「寛容な旦那様は貴方に協力をしても
良いとお考えです。ですが貴方同様に
位を授けるにはどうしても
目に見えた功績が足りません」
「何か、何か方法はないんですか」
「人との出会いは別れがつきもの
貴方はまだ若い、どうぞ視野を広く持ち
これからの輝かしい未来に目を…」
「…」
事実上の完全拒否。立ち去る執事を、アルトラは黙って見送ることしかできなかった
◆
「…くそ、クソッ!!」
アルトラは床を踏みつけ、机を力の限り叩いた
積み上げた先で望むものが、望むことが叶ったというのにも関わらず、肝心な部分ばかりが抜けていて見るに堪えない醜態を晒しているというのに〈周りは賛辞ばかりを送る状況〉───とてつもなく不快極まる様にアルトラは目を血走らせながら唇を噛み潰していた
教会に行ったきり戻らないティーナ
精神を病んだゴードン
制御不能のエリア
「そうだ…錬金術士だ
錬金術士アンジェリーナ
あいつがまだ来ていない!」
マージを追い出すにあたり補充人員として錬金術士が神銀の剣に加わることになっていた。アルトラはそのことをすっかり忘れていた
「功績が足りないなら作ればいい
マージはそもそも戦闘に向いてねぇんだから」
アルトラは光明を得て貧乏ゆすりをやめていた
「貴族も唸らせる学者にさえなれば
あいつが俺の元に返ってくる」
アルトラの偏愛───所有欲に似たそれが周りを巻き込み、マージ自身を困らせるまで後3日




