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第8話 期末試験の結果と、予想外の贈り物

 子爵令嬢というのは、紛れもなく下位貴族だ。

 フルウム子爵家の経済状況は可もなく不可もないけれど、決して裕福な訳ではない。

 公爵家などの高位貴族や、まして皇太子殿下とは住む世界が全く異なるので、普通ならば接点すらないはずだった。

 けれどもお兄様繋がりで縁ができた彼らとは、すっかり幼馴染みになってしまっている。

 権謀術数渦巻く社交界において、なんの打算もなく心から信頼して付き合える幼馴染みというのは非常に得難く貴重なものだ。

 なんとか彼らとの仲を維持しつつ、乙女ゲームの期間を無事に乗り越えられないだろうかと、わたしは日夜考えていたけれど、残念ながらこれといって良い考えは浮かばなかった。


 ただ、幸運なことに学園生活は大きな波風もなく順調に過ぎていった。




 そんな中行われた春学期の期末試験の結果、わたしはまたしても首席だった。


 日頃の努力の結果が目に見えて表れて、達成感でいっぱいだ。


 文官の登用試験には在学中の成績も加味されるという。


 このまま好成績を維持して卒業後は文官になろうと決意を新たにした。


 ちなみに次席はアマレロ・フラーウムだった。


 ヒロインの名前は掲示される上位10名の中にはなかった。

 下位クラスから10位以内に入るのは厳しいのだろう。



 ♢♢♢



 試験の結果発表があった週の週末。


 お兄様がフルウム子爵家に尋ねて来られた。


 近頃のお兄様はキュアノエイデス公爵夫人とは別にちょくちょくおひとりで子爵家を訪れて、わたしと2人でお茶会をしている。


 今日もいつものお茶会だろうかと思っていたら、お兄様は


「リディアに渡したいものがあるんだ」


 と言って、懐から綺麗に包装されてリボンが巻かれた小箱を取り出した。


「先日の試験で1位になったお祝いだよ」

「えっ!? わざわざありがとうございます。開けてみても良いですか?」


 お兄様に手渡された小箱を開けると、中には青い色の万年筆が入っていた。


「わぁ! 万年筆だ!」

「よく知ってるね」


 羽ペンが主要な筆記具であるこの世界において、万年筆は最近開発されたばかりの最新の筆記具だった。

 ゆえにとんでもなく高い。


 というか、このお兄様の髪と瞳の色を想起させる夏空のように鮮やかな青色の万年筆、ヒロインがもらうものだった気がする。


 ヒロインが期末試験で好成績を収めると、その時点で一定の好感度を獲得している攻略対象からお祝いの品を贈られる。


 その中で、お兄様から贈られるのがこの万年筆だったはずだ。


 ゲームではその攻略対象のイメージカラーのものを贈られるのが好感度のバロメーターになっている。


 ということは、お兄様はわたしに好感を持ってくださっているということになる。


 又従姉妹だからそれなりに好感を持ってくださっているのはわかるけれども……これはゲーム的には特別な意味のあるアイテムだ。


 どうしよう。

 これ、モブのわたしがもらっても良いのだろうか。

 さすがにちょっと気が引ける……。


「こんな高価なもの、いただいても良いのでしょうか」

「高価と言っても所詮筆記具だから大した額じゃない。気にしなくて良いよ。それでリディアの勉強が捗れば嬉しい」

「ありがとうございます。では、ありがたくいただきますね」


 ここまで言われたら受け取らないわけにはいかない。ありがたくいただくことにした。


 それからお兄様とわたしはいつも通り、お茶をしながらのおしゃべりを楽しんだ。

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