第7話 学園入学と、【攻略対象:黄】との出会い
それから学園入学までの5年間、わたしは文官を目指してひたすら(令嬢教育以外の)勉強に明け暮れた。
お兄様とは相変わらず頻繁にお会いしていたし、それにヴァイオレットお姉様や皇太子殿下が加わったりして、4人でいることがいつの間にか当たり前になるくらいに親しくなった。
けれども他の登場人物達とは会う機会は訪れなかった。
♢♢♢
15歳になった春。
わたしは乙女ゲームの舞台であるエリュトロン学園に入学した。
エリュトロン学園は入学試験に合格すれば身分を問わず誰でも入学できるけれど、試験が難関であることに加えて学費が高額なため、生徒はほとんど王侯貴族の子息子女だ。
裕福な平民もいなくはないけれど、数える程度だという。
イメージカラー黄色の攻略対象、アマレロ・フラーウムはそんな数少ない平民の生徒の1人だ。
そんな学園にわたしは首席で合格した。
次席はアマレロ・フラーウムだった。
ちなみにゲームでは首席はアマレロ・フラーウム、次席はヒロインだった。
けれども、ヒロインは入学試験で成績別に分けられた上位クラスにもいなかった。
ではどこにいるのだろう?
入学式でピンクの髪を探してみると、なんと3つあるクラスのうちの下位クラスにいた。
これでは生徒会に所属できないのでお兄様達との接点がなくなってしまう。
それに上位クラスでもないので、アマレロ・フラーウムとの接点もない。
攻略対象で自然に接点ができるのは、教師のウィリディス先生くらいだろうか。
なるべく関わらなくて済むように事前にゲームの情報を整理しておいたけれど、ここまでゲームと現実の乖離があると、ゲーム通りにことが運ばないかもしれない。
平穏無事な学園生活を送るために気を引き締めなければ。
入学式のあとはクラス別にオリエンテーションが行われた。
ゲームと同じ制服を着て、ゲームと同じ景色の場所にいると、まるで主人公にでもなったかのように錯覚してしまう。
けれどもわたしはゲームには登場しないモブだ。
少なくともゲーム終了の1年生の終わりまでは目立たないように過ごそう。
うっかり首席になって生徒会役員になってしまったけど、これ以上は目立たないようにしよう。
ゲームの登場人物達ともなるべく関わらないようにしよう。
そう思っていたけど、さっそくアマレロ・フラーウムに声をかけられてしまった。
「フルウム子爵令嬢、よろしければ一緒に生徒会室に行きませんか?」
今日の予定は入学式とオリエンテーションだけなので、一般の生徒はオリエンテーションが終われば帰宅できる。
けれどもわたしとアマレロ・フラーウムは生徒会役員になってしまったので、このあと現生徒会役員であるお兄様達のと顔合わせがあった。
ちなみにゲームでは、同じようにアマレロに声をかけられるのはヒロインだった。
そして同じ1年生の生徒会役員同士として、ヒロインとアマレロは親しくなっていく。
けれどもヒロインの代わりに生徒会役員になったのはモブのわたしなので、彼はわたしに声をかけてきたのだ。
不可抗力だから仕方がない。
「ええ。フラーウムさん、是非」
わたしはなるべく悪い印象を与えないように意識して、微笑みながら答えた。
歩きながら隣りのアマレロをこっそりと盗み見る。
彼はまるでひまわりのように目の覚める真っ黄色の髪と瞳をしていた。金髪ではなく、真っ黄色。
入学式で全体を見渡した時に思ったけれど、この世界の人々の髪色は様々だけれど茶系や黒が多く、ゲームの登場人物達のようなカラフルな色味は非常に稀だった。
わかりやすくて助かるけれど、誰も疑問に思わないのかな?
そんなことを考えていると、生徒会室の前に着いた。
ノックをして中に入ると、お兄様や皇太子殿下、ヴァイオレットお姉様が出迎えてくれた。
「俺が生徒会長のヴェルメリオ・エリュトロンだ! よろしくな!! 2人とも歓迎するぞ!!!」
「ようこそ生徒会へ。僕は副会長のアスール・キュアノエイデスだよ。首席だなんて、さすがリディアだね。君も歓迎するよ」
「わたくしは会計のヴァイオレット・ウィオラーケウスよ。よろしくね。さすがリディアだわ。あなたならきっと首席になると思っていてよ」
お兄様達の言葉を聞いたアマレロが驚きに満ちた顔でわたしを見た。
「フルウム子爵令嬢はお3方と面識があるのですか?」
アマレロの問いにお兄様達がそれぞれ答えた。
「僕はリディアの又従兄弟なんだ」
「リディアはわたくしの妹分よ」
「俺の心の友その2だ!!」
驚きのあまり言葉を失うアマレロを見て、ゲームの登場人物達と関わらずに平穏無事に学園生活を送るのは難しいのではないかとこっそりため息をついた。




