第6話 予想外の展開と、事前準備
本日3回目の更新です。
「驚いたな……」
ヴァイオレットお姉様が帰ったあと、お兄様はぽつりとそう口にした。
「あの勝ち気なヴァイオレットがあんな風に穏やかに笑うなんて。それに当初あんなフラれ方をして、現在上手くいっていることにも驚いた」
「そうですねぇ……、殿下は暑苦……いえ、情熱的な方ですから、あの勢いでアプローチされたら絆されやすいのではないですか? まあ、それが成功するのは殿下の顔と身分と経済力があってこそですけど」
皇太子殿下はなんと言っても乙女ゲームの攻略対象だけあってもの凄く顔が良い。それに身分は皇太子だ。
そんな相手から熱烈なアプローチを受けたら、悪い気はしないだろう。
「リディアも、ヴェルメリオみたいな男が好みなの?」
「いえ、殿下みたいな方は暑苦しくてちょっと……」
「じゃあ、リディアはどんな男性が好みなの?」
「うーん、そうですねぇ……。浮気をしなくてほどほどに経済力のある方、ですかね?」
「浮気をしなくてほどほどに経済力のある……か」
お兄様はわたしの言葉を噛み締めるように繰り返した。
紹介でもしてくれるのだろうか?
「でもまぁ、わたしは結婚するよりも文官になりたいんですけどね」
「え!? リディアは文官になりたいの!?」
「はい。自分で稼げれば、人生の選択肢が増えますから」
「人生の選択肢か。まだ10歳なのに、きちんと将来のことを考えていて偉いね」
わたしには十数年分の前世の記憶がある。
だから普通の10歳の令嬢ではないのだけれど、それは墓場まで持って行く秘密なので、わたしは曖昧に微笑んで頷いた。
♢♢♢
うーん、なんかゲームの登場人物との接点が増えていない?
お兄様は又従兄弟だから仕方がないとして、皇太子殿下やヴァイオレットお姉様とも知り合いになってしまった。
平穏無事に生きるためにゲームの登場人物達には近づかないようにしようと思っていたのにどうしてこうなったのだろう??
帰宅後、わたしはベッドで仰向けになって、腕を組んで思案に暮れていた。
ゲームではお兄様と皇太子殿下が3年生、ヴァイオレットお姉様が2年生の時にヒロインが新入生として学園に入学してくる。
つまり、ヒロインとわたしは同い年だ。
学年が違うから普通なら学園ではお兄様達との接点はないはずだけれども、唯一例外がある。
それが入学試験で優秀な成績を収め、生徒会役員に抜擢された場合だ。
ヒロインは入学試験で次席を取り、首席の攻略対象と共に生徒会役員に抜擢される。
そこで学年の異なる攻略対象達との親睦を深めるのだ。
同じ学園に通っていたら、お兄様達やヒロインとの接点ができる可能性もあるかもしれない。
いざそうなった時に慌てないように、今から備えておかなければ。
まずは記憶がはっきりしているうちにゲームの内容をまとめておこう。
わたしはベッドから飛び起きると、デスクに向かった。
デスクに向かったわたしはノートの端に試しに日本語を書いてみた。
すると問題なく書けたので、日本語で覚えている限りのゲームの情報をひたすらノートに書き出していく。
途中までしかプレイしていないのでそんなに多くはないはずだけれど、それでも深夜までかかった。
わたしは書き上げたノートの最初のページを開いた。
♢♢♢
【攻略対象】
1.ヴェルメリオ・エリュトロン
・イメージカラー:赤
・皇太子
・生徒会長(3年生)
2.アスール・キュアノエイデス
・イメージカラー:青
・公爵家嫡男
・副会長(3年生)
3.アマレロ・フラーウム
・イメージカラー:黄色
・平民の特待生
・書記(1年生)
4.ヴェルデ・ウィリディス
・イメージカラー:緑
・教師
【悪役令嬢】
ヴァイオレット・ウィオラーケウス
・イメージカラー:紫
・公爵令嬢、皇太子の婚約者(但し関係は冷え切っている)
・会計(2年生)
【ヒロイン】
ローザ・ロセウス(※名前変更可能)
・イメージカラー:ピンク
・元平民の男爵令嬢
・庶務(1年生)
【ゲームの期間】
・学園入学から1年生の終わりまで。
♢♢♢
ゲームの登場人物達の情報を改めて見返してみて、わたしは現実との相違に気がついた。
皇太子殿下とヴァイオレットお姉様の関係だ。
ゲームでは冷え切っていたけれど、皇太子殿下のあのベタ惚れ振りと、満更でもなさそうなヴァイオレットお姉様の表情を見たら、今後も関係が冷え切ることはなさそうに思えた。
まぁ、少しくらいは違いもあるか。
それよりも、残りの登場人物達は学園に入学するまで確実に接点はなさそうだ。
これなら入学までのあと5年弱は平穏無事に過ごせるだろうとほっと胸を撫で下ろした。
明日以降は毎日12時に更新予定です。




