第2話 人生設計と、【攻略対象:赤】との出会い
本日2回目の更新です。
高熱から回復したわたしを待っていたのは、リディア・フルウム子爵令嬢としての日常という名の令嬢教育の日々だった。
これがとんでもなくわたしに向いていなかった。
リディアとしての10年間の記憶と知識があったからなんとか様になったけれど、それがなければ散々な結果になっていただろう。
お母様も家庭教師の先生も、令嬢教育は立派な貴婦人になるためには必要不可欠なことだという。
そう、この世界の貴族女性はほぼ100%結婚する。結婚して子供を産み良き妻、良き母になることが求められている。
昭和かとツッコミたかったけれど、この世界は近世っぽい文明レベルなので、昭和ですらなかった。
貴族女性の結婚率はほぼ100%だけれど、中には例外がある。
修道女になったり、文官や侍女としてお城で働く女性もごくわずかながらいるという。
わたしには禁欲的な生活はとても無理なので、修道女は却下。
他人のお世話ができるほど器量が良くないので、侍女も却下。
となると必然的に文官一択だ。
どう考えても狭き道に違いないけれど、自分で稼げれば無理に結婚しなくても生きていける。良妻賢母が無理なら文官を目指すしかない。
こうして消極的な理由により、わたしのライフプランが決定した。
♢♢♢
それからのわたしは文官を目指してひたすら(令嬢教育以外の)勉強に明け暮れた。
一般教養は前世の知識が割と役立ったし、リディアは地頭が良いらしく、すぐに知識を吸収できたので、前世とは異なり勉強するのが苦ではなかった。
そんなある日。
お母様と一緒にキュアノエイデス公爵家にお招きを受けた。
キュアノエイデス公爵夫人はお母様の同い年の従姉妹で、仲の良いお2人は頻繁にお互いの家を行き来してお茶会をしていた。
先日わたしが倒れた時は、公爵夫人とお兄様がフルウム子爵家を訪れていた。
お母様と公爵夫人がサロンでお茶会をする間、いつもわたしはお兄様と一緒に遊んでいる。
庭のガゼボにいるというお兄様のところへメイドに案内してもらうと、わたしの姿を目にしたお兄様が笑顔で手招きしてくれた。
ガゼボに入ると、お兄様の他にテーブルに突っ伏している子供がいることに気がついた。
その子のまるでペンキをぶちまけたかのような真っ赤な髪色にわたしの目は釘づけになった。
このど派手な髪色、もしかしてゲームの登場人物じゃない!? 赤って誰だったっけ?
「リディア、もう体調は大丈夫なの?」
「はい、おかげさまで。ご心配をおかけしてすみませんでした。もうすっかり元気です」
「そうか、良かった。でも今日は念のためゆっくりおしゃべりでもして過ごそうか」
「はい。あの、ところでお兄様、こちらは……」
お兄様は突っ伏している赤髪の子に全く触れなかったので、気になって仕方がなかったわたしは自分から聞いてみた。
「ああ、ヴェルメリオだよ。もう1時間もこんな状態なんだ」
お兄様は困ったような、少しうんざりしたような表情で言った。
ヴェルメリオって……、皇太子のヴェルメリオ・エリュトロン!?
ゲームの攻略対象だ!!
そうだ、イメージカラー赤は皇太子殿下だった!!
謎が解けてスッキリしたけれど、すぐにもう1つの謎が浮上した。
確か彼は底抜けに明るい熱血元気系のキャラだったはずだ。
それなのにどうして1時間も突っ伏しているのだろう。
「皇太子殿下は一体どうされたのですか?」
「聞いてくれっ!!!」
「ひぇ……っ!?」
わたしの問いに皇太子殿下はがばりと勢いよく顔を上げた。
思わず仰け反ったわたしは、皇太子殿下が滂沱の涙を流していることにも驚いた。
「フラれたんだ……っ!!!」
まるでこの世の終わりのような表情でそう叫んで両手で顔を覆った皇太子殿下は、泣きながら事情を話してくれた。
本日18時にも更新予定です。




