第19話 アスール・キュアノエイデスの根性
アスール視点です。
僕はアスール・キュアノエイデス。
キュアノエイデス公爵家の嫡男だ。
僕には2つ年下の可愛い又従姉妹がいる。
リディア・フルウム子爵令嬢だ。
母親同士が仲の良い僕達は物心ついた時から一緒にいて、一緒に成長した。
僕はリディアが好きだったし、リディアも僕を好きでいてくれるみたいだったから、このままいけばリディアと婚約できるのではないかと思っていた。
けれども、ある時からリディアの中の僕への好意が全く感じられなくなってしまった。
それはリディアが10歳の時、フルウム子爵家でのお茶会の途中で倒れたあとからだった。
倒れたあとも変わらず僕のことを「お兄様」と慕ってくれていたけれど、それまであったはずの僕への好意がリディアの中からすっかり消えてしまっていた。
変わったのはそれだけではなかった。
引っ込み思案で受け身な性格だった彼女が、自分の将来を考え、意見をはっきりと言える子になっていた。
10歳でお茶会デビューをしたリディアは、色々なお茶会に参加していると言っていたから、そこで同年代の女の子達と接するうちに、彼女の世界が広がったのだろう。
僕と2人だけの閉ざされた世界から、リディアが外の世界を知って成長したのが嬉しい反面、淋しくもあった。
リディアの中の僕への思いがなくなってしまったのなら、もう1度好きになってもらえば良い。
リディアの好みは「浮気をしなくてほどほどに経済力のある男性」だという。
やけに現実的なのは女の子の方が成長が早いからかもしれない。
僕は公爵家の嫡男だからほどほど以上の経済力がある。
リディア以外に興味はないから浮気も絶対にするつもりはない。
そのことを知ってもらって、僕のことを好きなってもらいたい。いや、好きにさせてみせる。
……と、そう思っていたけれど、リディアは中々手強かった。
将来は文官になるのだと熱く語る彼女は日々努力を重ね、難関のエリュトロン学園に首席で合格。
入学後の試験でも首席を維持し、生徒会活動に加えて、薬草の新たな用途の発案など大活躍だった。
そんなリディアには婚約の申し込みが数多く舞い込んでいるとのことだったけれど、フルウム子爵夫人いわく、本人の結婚よりも文官になりたいとの希望を尊重して全て断っているという。
この時ばかりは文官になりたいという彼女の希望に感謝した。
おかげで僕も全く意識されていないけれど。
リディアは僕を兄として慕ってくれているけれど、僕がほしいのは兄の立場ではない。
リディアに異性として見てもらいたかった。
けれども学園を卒業するまでの間にそれは叶わなかった。
でも諦めるつもりは毛頭ない。
昔、リディアはヴェルメリオに言っていた。
諦められないなら「根性を見せるしかない」と。
僕もリディアを諦めるなんて無理だ。
となれば、残る手段は1つ。
僕も根性を見せるかな。
リディア、君が振り向いてくれるまで。




