最終話 モブなので、平穏無事に生きたい。けれど……
「こ、根性ですか……」
どうしよう……。
乙女ゲームのキラキラした超イケメンから某皇太子殿下みたいな熱血な言葉が飛び出した。
いや、某皇太子殿下も乙女ゲームのキラキラした超イケメンだけれども。
「うん。リディアが振り向いてくれるまで根性で頑張るから」
お兄様はそう言うと、すっとわたしの手を取り、流れるような動作でそこに口づけを落とした。
そして、まっすぐにわたしの目を見つめて言った。
「だから、覚えておいて。僕がリディアを愛してるってことを」
ひぇ……っ!?
お、乙女ゲームのキラキラした超イケメンの直球勝負の威力が凄まじすぎる……!!
それをまともにくらってしまったわたしの心臓は断末魔の悲鳴を上げているし、顔が燃えるように熱い。きっと真っ赤になっているに違いない。
どきどきしすぎて苦しいけれど、不思議と嫌ではなかった。
そんなわたしを見て、お兄様は満足そうに甘く微笑んでいた。
♢♢♢
結局。
乙女ゲームのキラキラした超イケメンのなりふり構わない直球のアプローチに、前世も今世も恋愛に免疫のないわたしが抗えるはずもなく、わたしはあっさり陥落してしまった。
お兄様のアプローチが嫌ではなかった時点で、きっと答えは出ていたのだと思う。
そして、わたしは学園の卒業と同時にお兄様と婚約した。
ちなみにお兄様は4年制の高等学院へ進学されていたので、お兄様が卒業されるまでの2年間は文官として働けることになっている。
つまりは、お兄様との婚約というイレギュラーはあったけれど、前世の記憶を取り戻した時に決めたライフプラン通りになる予定だ。
あと、平穏無事に生きて天寿を全うしたいという目標については……
「リディア、僕と一緒にいるのに考えごと?」
お兄様に声をかけられて、わたしは今がお兄様とのお茶会の最中であったことを思い出した。
「すみません、お兄様」
「リディア、婚約したのだからそろそろ慣れてほしいな」
「あ…………ア、アスール様」
「うん、よくできました」とお兄様は満足そうにわたしの頭を優しく撫でた。
胸の鼓動がどきりと大きく跳ねる。
2年前のお兄様のあの告白以来、わたしはお兄様を意識してしまうようになった。
そのため、お兄様からの接触に毎回しどろもどろになってしまう。
名前を呼ぶのも一苦労だ。
こんな超イケメンからのストレートな愛情に慣れる日がくるのだろうかと遠い目になる。
こんなにどきどきしていては、当初願った平穏無事な人生とは言いがたいのかもしれない。
けれど。
ふわふわと甘く浮き足立つ心は決して不快ではなくて、こんなイレギュラーなら意外と悪くはないのかもしれない。
これで完結です。
最後までお付き合いくださり、ありがとうございました。
少しでも面白いと思っていただけましたら、ご評価くださいますと幸いです。




