第17話 ゲームの進行と、【ヒロイン:ピンク】の接触 2
「ちょっとお話ししませんか? 『colorful world』について」
ヒロインの言葉に一瞬頭が真っ白になった。
そんなわたしの反応を見てヒロインは確信を得たらしく、その口調ががらりと変わった。
「やっぱりね! おかしいと思ったのよねー。皇太子と悪役令嬢は仲睦まじいし、ウィリディス先生は学校を辞める気配がないし、急にハーブティーが流行り始めるし。最初はわたしが生徒会役員になれなかったせいかと思ったけど、全部あなたがしたことでしょ?」
「……すみません」
「別に怒っていないわ。むしろ感謝してるくらいよ? ウィリディス先生が学校を辞めないおかげで、これからも攻略のチャンスがあるしね!」
「ウィリディス先生推しなんですか?」
「そう! でも、テストが難し過ぎて全っ然上位に入れないから、このままだと先生が結婚のために学校を辞めちゃってバッドエンドになるかと思ったわ。そういうあなたはアスール推しなの?」
「いえ、わたしは完全なるモブなので推しとかそういうのではないです」
「え? リディアは別に完全なモブってわけじゃ……」
ヒロインがなにか言いかけたけれど、つぶやくようなその言葉はよく聞こえなかった。
「そうだ! それにあなた後夜祭で青いドレスを着てたじゃない!」
「あれはお兄様が誕生日のプレゼントにくれたんです」
「『お兄様』って……。あー、そういえば、リディアはアスールの又従姉妹だっけ。なるほどねー。ま、わたしは先生推しだからどっちでもいいや。頑張ってね!」
「いや、別に頑張らないです」と内心で突っ込んだ。
ヒロインは「原因が知りたかっただけだから。じゃあね!」と言って颯爽と去って行った。
わたしがゲームのストーリーを歪めてしまったのがまさか却って奏功するなんて。
でもヒロインの恋路を邪魔してゲームの強制力から排除される心配がなくなってほっとした。
♢♢♢
それから生徒会活動後に図書室へ勉強をしに行くと、ヒロインと度々遭遇するようになった。
試験で上位に入ってウィリディス先生から贈り物をもらいたいとのことで、一緒に勉強することになり、気がつけばすっかり友人になっていた。
「今度こそ絶対ウィリディス先生から贈り物をもらう!!」
「頑張ってください」
「首席は余裕よねー」
「そんなことないですよ。将来がかかってるので、割と必死です」
「将来?」
「わたし、文官になりたいんです」
「文官!? 乙女ゲーの世界に転生してなんで文官なのよ?」
「良妻賢母とかほんと向かないので、自分で稼ぎたいなって」
「あー、確かにこの世界、価値観が昭和よねぇ。でもまぁ、わたしはウィリディス先生のお嫁さんになりたいけどね!」
「頑張ってください」
「ありがと! 頑張るわ!」
10歳の時に乙女ゲームの世界に転生したと気がついてから早5年。
お兄様やヴァイオレットお姉様、皇太子殿下と親しくなれたけれども、彼らにはゲームのことや転生のことは話せない。
全ての事情を理解してくれる友人ができて、わたしは初めてこの世界で独りではないと思えた。




