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第15話 後夜祭と、【ヒロイン:ピンク】の動向 2

 わたしはヒロインのドレスの色を見て驚いた。


 てっきりウィリディス先生のイメージカラーの緑か、アマレロのイメージカラーの黄色いドレスを身に着けていると思っていたら、ヒロインはなんとピンクのドレスを身に着けていた。


 後夜祭のドレスの色はゲームにおいて非常に重要な要素だ。


 後夜祭で攻略対象から贈られた彼らのイメージカラーのドレスを身に着けることで、それ以降個別のルートへ入るからだ。


 つまり、ヒロインは誰からもドレスを贈られていないことになり、このままだとノーマルエンドかバッドエンドになってしまう。


 やっぱりわたしが首席になったことでゲームのストーリーを歪めてしまったせいだろうか?


 もしそうだとしたらヒロインに申し訳がないし、ゲームの強制力によりストーリーを歪めたわたしが排除されないかも心配だ。


 そんなことを考えていると、いつの間にか学園長先生の挨拶が終わっていた。


 そして楽団が音色を奏でると、ヴァイオレットお姉様と皇太子殿下のファーストダンスが始まった。


 お2人は仲睦まじく、息の合ったダンスを披露された。


 ゲームでは冷え切った関係だったけれど、現実では仲の良い恋人同士のように見える。


 これもゲームとは異なっている点の1つだ。




 ダンスを終えたお姉様と皇太子殿下がこちらにやって来た。


「アスールにリディア。そこにいたのね」


 ヴァイオレットお姉様は皇太子殿下の髪と瞳の色と同じ、目の覚めるように鮮やかな赤いドレスを身に着けていた。

 アクセサリーも大粒のルビーのようで、存在感が凄い。


 一方、皇太子殿下も豪奢な金糸の刺繍が施された真っ赤なジュストコールだった。

 クラバットには大粒のアメジストをいくつも散りばめた豪奢な飾りを着けている。


 華やかに着飾った貴族の子息子女が集う中で、お2人の衣装は一際豪華絢爛だった。

 それを当然のように着こなすヴァイオレットお姉様も皇太子殿下も凄い。

 さすが乙女ゲームの登場人物だ。


「リディアはアスールの色のドレスにしたのね」

「はい。お兄様が誕生日の贈り物としてくださったのです」

「誕生日の贈り物ねぇ……」


 ヴァイオレットお姉様は意味深につぶやいてお兄様を見た。

 それに対してお兄様は無言のまま笑顔で応える。


「まあ、そうことにしておきましょう。アスール、頑張ってね」

「勿論」


 わたしと皇太子殿下はなんのことかわからず首を傾げたけれど、お兄様とヴァイオレットお姉様の間では意思の疎通が成立したようだった。


 首を傾げていると、お兄様はわたしの方を向いて笑顔で言った。


「リディア、僕達も踊ろうか」

「えっ!? いえ、わたしはダンスは苦手でして……!」

「あら、リディアでも苦手なものがあるのね」


 ヴァイオレットお姉様は意外そうに言う。


 そう、わたしがガリ勉したのは一般教養だけで、令嬢教育の方は辛うじて合格点がもらえる必要最低限しかしていなかった。


「僕がリードするから大丈夫だよ。お手をどうぞ」


 促されてやむなくお兄様の手を取ると、彼は流れるようにスムーズなエスコートで、会場の中央へ進み出る。


 音楽に合わせてなんとかうろ覚えのステップを踏んでいると、お兄様はぐいっとわたしを引き寄せた。


 ふわりと爽やかで甘いお兄様の香水の香りがして、どきりと胸の鼓動が大きく跳ねた。


「リディア、僕を見て?」


 ひぇ……っ!?


 至近距離で囁かれた甘い声に心臓が悲鳴を上げる。


「お、踊るのに精一杯でして……っ!」


 顔に熱が集まって、お兄様の顔が見られない。


「大丈夫。きちんと踊れているよ」

「お、お兄様のおかげです……」


 実際その通りだった。

 お兄様のリードに身を任せていたら、うろ覚えでもそれなりに踊れてしまった。


 踊り終わっても心臓はどくどくと早鐘を打っているし、まだ顔に熱が集まっている気がする。


 乙女ゲームの攻略対象の超絶イケメンにエスコートされて、ダンスも一緒に踊って、まるでゲームが現実になったかのようだった。


 いや、ここは「colorful world」の世界だから、確かにゲームが現実になっているんだけども。


 それくらいに現実味がなくて、後夜祭が終わってからもふわふわと浮き足立つ心地のまま、その夜はなかなか寝つけなかった。


 確実に言えるのは、この半日で寿命が大分縮まった気がする……。

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