第14話 後夜祭と、【ヒロイン:ピンク】の動向
学園祭はつつがなく終了した。
生徒は1度帰宅して制服から後夜祭用の衣装に着替えて、夜になったら再び学園に行く。
わたしも着替えのために1度帰宅した。
お兄様から誕生日の贈り物としていただいたドレスは朝には届けられていた。
綺麗に包装された箱を開けると、中に入っていたのはお兄様の髪と瞳の色を彷彿とさせる、夏空のように鮮やかな青色のドレスだった。
華美ではないけれども清楚で可愛らしいデザインに、わたしのなけなしの乙女心がくすぐられた。
めちゃくちゃ可愛い!!
……けど、これ完全にヒロイン用だ。
ゲームの中でお兄様がヒロインに贈ったのと全く同じものだった。
モブのわたしがもらったらまずいのではないかと一瞬迷ったけれど、もらった以上着ないわけにはいかない。
それに、ヒロインはウィリディス先生かアマレロ狙いの可能性が高い。
せっかくいただいたのだから、ありがたく着させてもらおうと開き直った。
後夜祭まであまり時間がないので、急いで身支度をする。
いつもおろしている髪は丁寧に結って、青いリボンの髪飾りを着ける。
青い石のアクセサリーは持っていなかったので、急遽お母様からお借りした。
そうして身支度を終えて鏡を見ると、清楚な雰囲気のご令嬢が映っていた。
凄い。いつもより3割増しくらい美人に見える!
鏡に映る自分の姿にうっかり見惚れていると、お兄様がいらっしゃったと侍女が教えてくれたので、慌てて玄関ホールへ向かう。
「お兄様! お待たせしてすみません!」
「今来たところだから大丈夫だよ」
玄関ホールにいたのは、いつもの5割増し以上にキラキラした、まるで王子様のような装いのお兄様だった。
ま、まぶしすぎる……!!
お兄様の衣装は豪奢な金糸の刺繍が施された青いジュストコールだった。
クラバットには直径数センチはありそうな大きなアンバーが飾られている。
ゲームでは確か、ヒロインのイメージカラーのピンクの宝石だったはず。
わたしに合わせて変えてくださったのかな?
そんなことを考えていると、お兄様は甘やかに微笑んだ。
「リディア、とても綺麗だね」
「ありがとうございます。お兄様からいただいたドレスのおかげです。素敵な贈り物をありがとうございます」
「気に入ってくれたなら、なによりだ。じゃあ、行こうか。僕のお姫様」
お兄様はそう言うと、流れるようにスムーズにわたしの手を取り、そこにそっと口づけを落とした。
ひぇ……っ!?
胸の鼓動がどきりと大きく跳ねた。
さすが人気ナンバー1(友人談)の攻略対象!!
一歩間違えたらドン引きするような気障な言動がめちゃくちゃ様になる!!
きっとこれが「※ただし、イケメンに限る」というやつに違いない。
お兄様は動揺と感心と照れで固まるわたしの手を引き、馬車へとエスコートしてくださった。
前世も今世も恋愛に全く免疫がないわたしの心臓は、ずっとどくどくと早鐘を打ち続けている。
今世は平穏無事に生きて天寿を全うしたいのに、寿命が縮まりそうだとこっそり嘆いた。
♢♢♢
初めて訪れる夜の学園は、街灯が灯されていて昼間とは全く違う雰囲気になっていた。
中でも後夜祭の会場になっている講堂は、天井から吊るされた豪奢なシャンデリアに灯りが灯り、まるで皇城のように豪奢で華やかだった。
お兄様のエスコートで講堂に入ったわたしは、さりげなくヒロインのピンクの髪を探した。
この世界の人は茶系の髪色が多いためいつもならすぐに見つかるけれど、今日は皆華やかに着飾っているので、ピンクの髪が全く目立たない。
カラフルな人混みの中でようやくピンクの髪を見つけたわたしは、ヒロインのドレスの色を見て驚いた。




