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第11話 アマレロ・フラーウムの多忙な夏休み

アマレロ視点です。

 ぼくはアマレロ・フラーウム。

 薬草を主力に取り扱うフラーウム商会の次男だ。


 我が家は長年薬草を取り扱ってきたけれど、ここ数年の大豊作により薬草と医薬品の価格が大暴落してしまった。


 我が家の商品はほとんど薬草に特化しており、また大きな商会でもないので、販路も限られている。


 そのため、主力商品で利益が出せなくなると、我が家は経営に行き詰まってしまった。


 父は申し訳なさそうに「学園を辞めてもらうかもしれない」とぼくに言った。


 あんなに頑張って次席で合格したので悔しいけれども仕方がない。

 家族の生活には代えられない。


 あの名門校に春学期だけでも通えて、生徒会役員にまでなれたんだ。それで満足しなければ。


 そう思おうとしたけれど、それでもやっぱり未練は捨て切れなかった。


 落ち込むぼくを見かねたのか、同じクラスで生徒会役員でもあるフルウム子爵令嬢が手を差し伸べてくださった。


 薬草を医薬品以外に用いるという斬新な発想を提案して、同じ生徒会役員の皇族と大貴族の方々との伝手を作ってくださったのだ。




 帰宅後、エリュトロン皇国最高の家々からの注文を受けた旨を伝えると、父と兄は泡を吹いて倒れそうなほど仰天していた。


 それはそうだ。


 いくら生徒会役員になれたとはいえ、平民のぼくでは彼らと必要な業務内容について話すのが精一杯で、とても伝手を作ることなどできはしない。


 貴族との伝手はいくらお金を積んでも得られるものではないのだ。まして皇族の方など言うまでもない。


 これは非常に大きなチャンスだ。


 もし成功すれば、傾いた経営を立て直すどころか、我が家はエリュトロン皇国有数の商会になれる。


 ただし、失敗すれば信用を失ってもう2度と皇国で商いはできなくなるだろう。


 フルウム子爵令嬢が作ってくれたこのチャンスを無駄にしないように、家族一丸となって全力でことに当たった。



 ♢♢♢



 商談には父と共にぼくも同行させてもらった。


 全く面識のない父がひとりで赴くよりも、多少なりとも面識のあるぼくがいた方が信用を得やすいのではないかとの父の判断だった。


 まずはお召しを受けて皇太子殿下の元へ赴いた。


 初めて入る皇城の謁見の間に、足がすくんで立っているのがやっとだった。


「フラーウム、わざわざ来てもらって悪いな! 医薬品について話を聞きたいんだ」


 皇太子殿下は医薬品の大量需要に心当たりがあるので、余剰な医薬品の種類や量について詳細をお知りになりたいとのことだった。


 学園と同じく気さくな口調の皇太子殿下のおかげで、ぼくと父はなんとかご説明することができたけれど、殿下の「今の説明を俺から父上に奏上してみるな!」とのお言葉に気を失いそうになった。


 一平民の説明を皇帝陛下へ奏上。


 畏れ多くて倒れそうだった。


 そのあとどうやって家に帰り着いたのか記憶がない。



 ♢♢♢



 次に赴いたのは、ウィオラーケウス公爵家だった。


 ウィオラーケウス公爵令嬢は、ご自身のお茶会で提供する薬草を用いたお茶やお菓子を所望された。


 ぼくはフルウム子爵令嬢からいただいた助言に従い、味のクセが少なく用途が広いもの、美容効果のあるものをお勧めし、試食もしていただいた。


 ウィオラーケウス公爵令嬢はお気に召したものをいくつか購入してくださった。


 ウィオラーケウス公爵令嬢のお茶会で我が家の薬草を用いたお茶やお菓子が提供されると、どうやらご好評いただいたようで、お茶会に出席されたと思われる貴族の方々から注文が舞い込むようになった。



 ♢♢♢



 ウィオラーケウス公爵令嬢のお茶会で薬草を用いたお茶やお菓子が話題になると、今度はキュアノエイデス公爵家からお招きを受けた。


 キュアノエイデス公爵家の輸出網を使って国外へ薬草を用いた食文化の輸出をしたいとのことだった。


 それに伴い、国内向けと国外向けの商品の共同開発を行うことになった。



 ♢♢♢



 これらの動きは全て夏休みの1ヵ月の間に起こったことだった。


 平民の小さな商会が皇族や大貴族の方々との伝手を得て商売をするなんて、前代未聞の奇跡的な出来事だった。


 それがたった1ヵ月の間に起こってしまった。


 傾いていた我が家の経営は急速に立ち直り、夏休みが終わる頃には、ぼくは秋学期以降も学園に通えることが決まっていた。


 これも全てフルウム子爵令嬢のおかげだ。

 どんなに感謝してもし切れない。


 少しでも感謝の気持ちを伝えたくて、夏休みが明けて登校すると、ぼくは真っ先にフルウム子爵令嬢にお礼を伝えに行った。


 フルウム子爵令嬢はなんでもないことのように、そして当たり前だと言うように言った。


「だから言ったじゃないですか。伝手もニーズもあるって」


 ぼくはその発言の器の大きさに驚いた。


 そしてこの恩を返すために、フルウム子爵令嬢になにかあれば、今度は微力ながらぼくが必ず力になろうと誓った。

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