第十三話『-心道編- いつの日か心中して』其ノ陸
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「__廻君!今日こそ一緒に遊びに行きましょう!」
次の日、朝のニュースで梅雨明けが発表された。空はすっかり晴れていて、雨の跡はもう何処にも見られなかった。そんな放課後、悠太君は変わらず僕を遊びに誘ってくれた。
「うん、一緒に遊びに行こう」
そう笑って返せば、悠太君は少し驚いた顔をした後とても嬉しそうに笑った。すると、教室の外から僕達を呼ぶ声が聞こえて振り返る。そこにはやっぱり狼君と弥子君がいて。
「久しぶりに皆で遊べますね!!僕ゲーセン行きたいです!」
「ゲーセンってまじで金ドブじゃない?」
「今日はキレんなよ、弥子」
「ゲーセン如きでキレたことないし」と言って余裕そうな笑みを浮かべる弥子君に、悪戯な笑みを零す狼君、楽しそうに僕の手を引く悠太君、僕の世界は今日も変わらずに廻り続ける。
僕は前を歩く三人に声をかけた。
「あの……僕少しだけ寄り道していくから、後で合流するね」
振り返った三人はきょとんとした顔で首を傾げる。そんな三人に、僕は短く息を吸い込んで吐き出した。
「____笑子ちゃんのお墓参りに行ってくるんだ」
そう言えば、三人は揃って驚いた顔をした。それが何だか可笑しくて、僕は少しだけ笑ってしまう。そんな僕に、悠太君は目を細めて優しく笑いかけた。
「今度、僕達4人でも会いに行きましょうね」
たったそれだけの言葉に、悠太君と狼君と弥子君の想いが全て詰まっていた。笑子ちゃんの死が傷跡になってちゃんと泣けるようになった僕は、どうにも涙腺が緩い。だから少しだけ、目に涙が滲んだ。
「それじゃあまた後で!」と僕に背を向けて歩き出した悠太君達に、僕は慌てて「っあと、もう一つあって……!」と声をかけた。振り返った三人に、僕は少しだけ言い淀むけど、やっぱり聞いて欲しくてゆっくり口を開いた。
「あの、ね……僕、笑子ちゃんの事が………好き、だったんだ」
声に出すと、それは途端に恥ずかしさを増した。好意を伝えると言うのは、こんなにも勇気がいる事なのか。
……やっぱり、笑子ちゃんは凄いや。
記憶の中の笑子ちゃんに想いを馳せていると、優し気な三人の声が耳に届いた。
「だろうな、お前も心道も見てるこっちが歯痒かったわ」
そう言って狼君は悪戯に笑う。
「回道も心道も、お互いに振り回されてて面白かったよ」
弥子君はそう言って思い出すように笑う。
「二人の空気が甘すぎて、僕気絶しそうでした!」
なんて言って悠太君が嬉しそうに笑う。
三人とも、僕の告白に何も驚いてはなかった。まるで全部知っていたみたいに。
「みんな、驚かないの……?」
僕がそう聞けば、三人とも目を丸くする。そして次の瞬間、吹き出すように笑い始めた。そんな三人に戸惑う僕に、悠太君が酷く優しい目をして笑う。
「だって廻君も笑子ちゃんも、同じ顔をしてましたから____」
じわっと涙が滲んだ。
そう言った悠太君の言葉が、僕の柔らかい部分を刺激する。三人が優しく僕に笑いかけるから、僕の言葉を聞いてくれるから、僕と笑子ちゃんが三人の目にそんな風に映っていたという事実が。
全てが、温かかった。
僕は目に滲んだ涙を、グッと腕で拭ってあと一つ、伝えなければいけない事を伝えた。
「ねえ、弥子君」
名前を呼べば、弥子君は首を傾げて僕の言葉を待ってくれる。そんな彼に、どうしても伝えたかった事を言った。
「この気持ちも、笑子ちゃんの全部を、僕は一緒に連れて行くことにしたよ」
大きく見開かれた弥子君の黄色の瞳が、きらりと陽の光に反射する。そしてゆっくりと瞬きをひとつ落として、とても安心したように笑った。
「____そっか」
そう言った弥子君の笑みは、今まで見た中で一番綺麗で本物に見えた。




