90話 祐樹の父親への相談
祐樹の父親に会う日曜日となった。
その日は天気も良く、気温も高くかなり暑さの感じる日となっていた。
佳代子は11時頃に自宅を出て、祐樹の家に向かうことにした。
聞きたいことは昨夜にまとめておいた。
自宅を出る前にもう一度その内容を確認する。
「IT関連企業に入るにはどの様な知識が必要か?」
「その時に優位になる資格はどの様なものがあるか?」
「プログラミング言語やIT関連用語はどのあたりまで覚える必要があるか?」
「来年度のIT企業の採用はどの程度まで見込まれているか?・・・」
など書いた内容をもう一度頭に入れておいた。
何度も口ずさんでいたが、ふと時計を見た。
「あっ11時だ、そろそろ出掛けよう」
佳代子は自宅を出て、電車で祐樹の最寄り駅まで行くことにした。
途中で昼食を早めに食べて、駅に着いたのは12時30分くらいになっていた。
駅に着いた佳代子は、祐樹にLINEを入れた。
[今駅に着きました。]
直ぐに返信があった。
[わかりました]
その返信を確認すると祐樹の家の方向に歩きだした。
スマホのナビを頼りにその方向に歩く。
「この辺だと思うけど・・・」
佳代子は近くの家の表札を確認すると、相沢の表札を見つけた。
「多分ここだぁ」
時間は12時50分
佳代子はインターホンのボタンを押した。
直ぐにインターホンから声が聞こえた。
「はい!」
「島田です。島田佳代子です。」
「はい、ちょっと待ってください。」
しばらくすると玄関から祐樹が出て来た。
「佳代子さん、おはようございます。」
「祐樹君おはよう!」
「来て頂いてごめんなさい」
「いえ、私の相談なので」
「すぐわかりました?」
「スマホのナビで」
「なるほど、暑いからとりあえず入って下さい。」
「ありがとう」
そう言うと佳代子は祐樹と一緒に玄関に入った。
「おじゃまします。」
玄関に入るとそこには祐樹の母親がいた。
「おはようございます。」
「おはようござます。初めまして私、島田佳代子と言います。」
「初めまして、祐樹の母親の恵です。」
「今日はご無理を言ってすみませんでした。」
「いえ、祐樹のお友達だからいいのよ」
「でもごめんなさいね。主人が会社に呼ばれて朝から出掛けてしまったの。さっき連絡があって、13時半ころには戻るって言ってたからそれまで待ってて下さる。」
「もちろん大丈夫です。」
「とりあえず上がって下さいね。」
「失礼します。」
佳代子は玄関で靴を脱ぎ、玄関ホールに上がった。
母親が祐樹に確認する。
「どうする?お父さん帰ってくるまで祐樹の部屋で待ってる?」
「そうだね。佳代子さんも気を遣うからその方が良いかな?どうですか?佳代子さん」
「私はどちらでも構いません。」
「なら俺の部屋に行きますか?エアコンも着いてるし」
「うん」
そう言うと2人は階段を登り、祐樹の部屋に向かった。
「どうぞ!」
「おじゃまします」
佳代子が中に入ると「ここが祐樹君の部屋なんだね。結構広いね」
「一応12畳あるんです。」
「そんなにあるんだぁ」
佳代子は祐樹のデスクにあるパソコンを見つけた。
「祐樹君、デスクトップで本格的じゃん」
「まぁ最近はみんなノートパソコンなんですけど、いろいろといじるのが好きでデスクトップにしています。」
「へーそうなんだぁ。どこのメーカのパソコン?」
「一応、オリジナルです。」
「えっ!自作?」
「はい」
「えー。やっぱり凄いね」
「まぁ好きなだけで!」
「あっこちらに座ってください。今飲み物を持ってくるんで」
「あっ、これ美味しいかどうかわからないけど食べて下さい。」
そう言うと佳代子は袋を祐樹に渡した。
「気を使わなくて良かったのに」
「一応礼儀として」
「さすが、ありがとうございます。」
「じゃあ少し待ってください。」
そう言うと祐樹が部屋から出て行った。
祐樹が出て行くと佳代子は初めてみるデスクトップの、それも自作のパソコンに興味深々になった。
立ちあがりパソコンを眺めていた。
するとデスクの奥側の棚にゲームのコントローラーとゲームソフトを見つけた。
「すごい、ゲームのコントローラーもいっぱいある。祐樹君こんなにゲームするんだぁ」
「ソフトもいっぱいあるし」
するとゲームソフトの横に小さなぬいぐるみを見つけた。
「あっこれ、私のと一緒!昔私が凄く好きだったキャラクターのぬいぐるみじゃん。懐かしい」
佳代子がその棚のぬいぐるみを取ろうとすると、机の角に引っ掛かりよろけそうになった。
それと同時にデスクにあった、ファイルや資料が落ちた。
「えっ!びっくりした。」
「資料落ちちゃった。」
佳代子がそれをまとめて机に戻そうとしたが、その資料の1文が目に入った。
「HIKARI応援プロジェクト[アイドルを捕まえろ]?」
佳代子がその資料だけ持ち上げた。
「何これ?ゲームの企画書?」
そして、企画書の下の方の名前を見つけた。
[ユピネス]
「ユピネス?ユピネスってあのゲーム配信者の・・・」
そう言うと、部屋の外から階段を登る音が聞こえた。
佳代子は急いでその資料をデスクに戻して、他の資料をその上にかぶせた。
そして何事も無かった様に座った。
「お待たせしました。」
「丁度お父さん帰ってきたので、リビングに行きますか?」
「はい」
佳代子は一気に緊張が高まり、先ほど見たことが記憶から消えて行った。
階段を降りた2人はリビングに入ると、そこには祐樹の父親がいた。
「父さん、こちらが言っていた島田さん」
「初めまして、島田佳代子と言います。」
「ああ、祐樹の父親の聡です。いらっしゃい」
祐樹の母親が「2人とも座って!」
「ありがとうございます。」そう言うと佳代子がソファーに腰かけた。
「お父さん、島田さんからロールケーキをもらったんですよ」
「そうなのか?気を使わせてすまないね」
「いえ大丈夫です。」
「ちょっと同じ様なものになるけど、食べながらしましょう!」
母親がそう言うとケーキと紅茶を佳代子の前に置いた。
「ありがとうございます。」
佳代子が改めて祐樹の父親の顔を見た。
ふと何か違和感を感じ心で思った。
「この人見たことある。」
でも佳代子はそれを完全には思い出せないでいた。
「で、私に確認したいことってなんなんだい?」
祐樹の父親の聡が尋ねると、佳代子はふと我に返った。
「はい、私来年就活になります。どうしてもIT関係の仕事に就きたくてご相談をお願いしました。」
佳代子は昨夜にまとめたものを丁寧に説明した。
説明し終わると聡はうつむいた。
「今の就職の条件は昔と変わっていて、知識も必要だけどそれをどれだけやりたいか、会社にどれだけ貢献したいかを問われるようになってきてるんだ」
「やる気を重視されることがある。だから自分がどうなりたいかを持つことが一番大事なんだと思うよ。」
「あとは、うちの人事に確認してみるよ。私は採用より技術系だからそれらは人事関係に聞くのが良いからね」
「はい、ありがとうございます。」
「結果わかれば祐樹から連絡してもらうけどそれでよいかな?」
「はい、大丈夫です。」
「今日は時間を取って頂いてありがとうございました。」
「ケーキ食べてね」
「あっ!はい!」
しばらくケーキを食べながら雑談の時間となった。
初めはIT専門学校の話になり、次第にプライベートの話まで出る様になった。
「島田さんは生まれは東京?」
「いえ、生まれは静岡で小さい頃は静岡で住んでました。」
「そうなんですね。私達も祐樹が小さい頃は静岡にいたこともあるんだよ。」
「祐樹君も静岡にいたんだぁ」
「自分はあまり記憶が無いんだけどね」
「祐樹はいつもお父さんの仕事場について行ってたからね」
「へーそんなことがあったんですね。」
「ああ、あの頃は休日も関係無く毎日会社から呼び出しがあったからな。少しでも祐樹と一緒に居たいと思ったことから始まったんだ」
「仲良かったんですね」
「まぁ祐樹に反抗期はなかったかもね」
「私は凄く反抗してたみたいです。」
「女の子はね、どうしてもね」
「あっ、そろそろ私は・・・。本当に今日はありがとうございました。」
「大丈夫よ。また遊びに来て下さいね。」
「はい、ありがとうございます。」
そう言うと佳代子は立ち上がった。
「祐樹、駅まで送ってあげて。」
「ありがとうございます。でも大丈夫です。」
「そうなの?」
「はい」
「本当にまた来てね」
「本日は本当にありがとうございます。では失礼します。」
そう言うと佳代子は深々と頭を下げた。
玄関から出ると祐樹も一緒に出て来た。
「祐樹君、今日はありがとう」
「お父さんの人事からの内容わかればまた連絡しますね」
「うん。ありがとう。ではまたね」
「バイバイ」
「また」
そう言うと佳代子は駅に向かった。
読んで頂き、ありがとうございます。
面白いと思って頂いたら、評価、ブックマークの登録をお願いします。




