88話 父親への確認
佳代子の相談を受けた次の日の朝、祐樹は早めに起きて部屋から出てきた。
階段を降りてリビングに向かうと母親が朝ごはんの準備をしていた。
「おはよう、母さん」
「おはよう、あら、珍しい事もあるのね。祐樹がこんな早く起きるなんて」
「そう言われると思ったよ。お父さんは?」
「お父さんはもう仕事に行ったよ」
「えっもう仕事に行ったの?早~い」
「いつもと一緒だよ。祐樹が毎日遅いだけだからね」
「そうなんだぁ。なら帰ってからにするかな?」
祐樹が部屋に戻ろうとした。
「お父さんに何か用事?」
「うん、ちょっと相談事が」
「またセミナーか何か?」
「今回は違うよ。ちょっと友達に頼まれたからその確認」
「私で良かったら聞くよ」
「母さんではわからないよ」
「言ったね!こう見えて大学卒業してるんだよ!」
「文系でしょう?ITのことわかるの?」
「IT?インテリジェント何とか?って言うやつでしょう?」
「全然違うし!この前俺がセミナーに行ったパソコン関係のこと」
「あーそっち系ね。」
「母さんじゃ話にならないよ!」
「そう?あっ!たまに早く起きたんだから、朝ご飯ゆっくり食べて行きなさい。」
「はーい」
そう言いながら祐樹は顔を洗いに洗面所に行った。
洗面所から戻った祐樹は椅子に座り朝食を食べ始めた。
「最近は勉強順調?」
「そうだね、頑張ってるよ」
「本当に慶應受けるんだね」
「うん、そのつもり」
「無理してない?」
「してないよ!」
「ならしっかり食べて栄養つけなさい!」
そう言うと母親がもう一枚パンを焼き始めた。
「それ誰の分!」
「祐樹の分」
「母さん、もういいよ、1枚でお腹膨れたから」
「あら、そう?まー私が食べるわ」
「母さん、ダイエットするって言ってなかった?それ何枚目?」
「えっと3枚目かな?・・・そんなこと言ってたっけ?」
そう言うと母親はパンを食べ始めた。
「ダイエットねぇ」
「何!」
そんな会話が朝から久しぶりに続いた。
夕方帰宅した祐樹は、自分の部屋で父親が帰ってくるのを待っていた。
20時過ぎ、父親が帰ってきたのがわかった。
「父さん帰って来た。」
祐樹が部屋から出ようとすると。「夕食、食べるでしょう?」と母さんの声が聞こえた。
「これから夕食か?、なら後でも良いか」
祐樹は食事を終わってから話そうと様子をうかがっていた。
その頃父親はビールを飲みながら夕食を食べていた。
「何か夜、祐樹が相談事あるみたいだよ」
「そうなのか?」
「また何か勉強のことかな?」
「何かIT?の事って言ってたけど」
「またセミナーの事かな?」
「後から聞いてあげて」
「そうだな」
祐樹は、父親が夕食を食べ終わったのを確認し、リビングにやって来た。
「父さん!」
「祐樹か、珍しいなぁ」
「それ、朝に母さんにも言われた。」
「そっか、で何か用事か?」
「ちょっと相談したい事があって!」
「相談?本当に珍しいな」
「この前もセミナーの時にしたじゃん」
「あっ、そうだったな。で、なんだ」
「この前のセミナー行ったときに知り合った、一つ上の女の人がいるんだけど」
「うん、彼女か?」
「違う!」
「その人が今IT関係の専門学校に行ってて、来年就活らしいんだぁ。」
「あー就活ね」
「その人、IT関係の仕事に就きたいって言ってて、父さんがIT関係の会社に行っているって言ったら一度相談させて欲しいって!」
「相談と言ってもなぁ。その女の子のこと知らないからどんなアドバイスが出来るかわからんよ」
「そうだよね。でも一度会って話だけでも聞いてくれないかな?」
「最近コネで入社も出来ないし、そんな時代じゃないから、結局は自分の力で内定もらわないといけないから、どんなアドバイスができるかだな」
「うん、それは十分わかっていると思う。父さんの会社に入れる訳じゃないって思ってるみたいだし」
「そんなんだね」
「だから、何かのきっかけになれればって言ってたから、一度会ってもらえないかな?」
「まぁ祐樹の友達なら無視はできないな」
「じゃあOKと言うことで良いよね?」
「まあ仕方ないか」
祐樹はカレンダーを見た。
「いつなら空いてる?」
「土曜日は急に仕事になるかも知れないから、日曜日かな?まぁ日曜日も呼び出しが掛かるかも知れないけど、土曜日より可能性は低いから」
父親もカレンダーを見る。
「そうだなぁ・・今度の日曜日ってどうかな?」
「今度の日曜日だね。わかった一度良いか聞いてみるね」
「ああ」
「祐樹!本当に彼女じゃないんだな?」
「違うって!でも彼女なら対応変わるのか?」
「そりゃ彼女なら身なりもきちんとしないとな。第一印象が大事だから・・・」
「あのなぁ。」
「はは、冗談だよ。一度日曜日が良いか聞いてみて!」
「時間は何時ごろが良い?」
「そうだなぁ昼食後の13時頃からでどうかな?」
「わかった、日曜日の13時だね。また結果は連絡するね」
「ああ」
「ところで、勉強は順調か?」
「うん、順調だよ」
「そっか。あまり無理せず頑張れよ!」
「うん、ありがとう!」
そう言うと祐樹は自分の部屋に戻った。
早速、佳代子に電話を掛けた。
「出るかな?」
直ぐに佳代子の声が聞こえた。
「もしもし、祐樹君?」
「はい、祐樹です。」
「こんばんは!」
「こんばんは」
「この前の件ですが、お父さんに相談って件」
「うん、聞いてくれたの?」
「はい、今確認して今度の日曜の13時頃どう?って」
「今度の日曜の13時だね。ちょっと待ってて」
佳代子はスケジュールを確認した。
「もしもし。日曜日の午後、大丈夫!」
「それなら家に来てくれますか?この前の喫茶店からそんなに遠くないので・・」
「うん。良いけど場所教えてくれる?」
「この後位置情報送りますね」
「ありがとう」
「それじゃぁ日曜日に!」
「祐樹君ありがとうね」
「いえいえ。でも本当に話を聞くだけって言ってたから」
「うん、何かきっかけが掴めれば良いからそれで大丈夫!」
「はい」
「ではよろしくお願いします。」
「祐樹君おやすみ!」
「おやすみなさい」
祐樹は電話を切った。
そのまま、再びリビングに行き、父親に報告した。
「父さん!日曜日大丈夫だって!」
「そっか、わかった!」
その時母親が台所から戻って来て、「何?何?日曜日がどうしたって?」
「祐樹の友達が私に相談があるって、家に来るんだよ」
「そうなの?男の子?」
「違う、女の子」
「彼女?」
「もう、みんな同じこと言う!違います。この前のセミナーで出会った女の人」
「そんなんだぁ。じゃあケーキか何か買ってこないとね」
「あまり気を使わないで!」
「それは親の務めだから、任せておいて」
「何か心配だなぁ」
「友達って言っても将来彼女になるかも知れないでしょう?」
「もう!その人には彼氏います!」
「なんだぁ彼氏持ちかぁ」
「母さん!」
「はいはい!」
「じゃあ父さん、日曜日よろしくお願いします。」
「ああ」
そう言うと祐樹は自分の部屋に戻って行った。
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