87話 佳代子の相談事
夏休みも後半に差し掛かっていた日、祐樹は朝から学校にいた。
希望者が参加できる夏季学習に参加していたためである。
夏季学習には早苗も参加していた。
夏季学習の間の休憩中に早苗と祐樹は中庭にいた。
「祐樹君、今日は教室が一段と暑いね。外の方が涼しい」
「本当にそう!」
「学校が休みだから全館空調が止まっているし、教室の小さい空調だけでは特に暑さが感じられるから。やっぱり図書館かどかかでの勉強の方が捗るかも?」
「本当にそう思う!」
「夏季学習も考えものだね」
「そうですね」
「あっそうだ、秋には星のコンサートがあるけど祐樹君も行く?」
「うん、知ってます。行きたいですね」
「私、ファンクラブ入ってるから情報わかれば教えるね」
「ありがとうございます。」
「チケットも私が予約した方が良いかも知れないからその時は予約するね」
「はい!」
早苗が時計を見た。
「さぁもう少し勉強頑張りますか?」
「頑張りましょう!」
2人は教室に戻った。
夏季学習は午前中のみであったため、時間は3時間程度、休憩を挟んで50分の授業が3回行われる。
その日の夏季学習が終了した。
「祐樹君、この後どうするの?」
「特に予定がないので帰ります。」
「それならお昼一緒に食べない?」
「はい、大丈夫ですよ」
そんな話をしていると祐樹の携帯に電話が掛かった。
画面には島田佳代子と表示された。
「早苗さん、ちょっと待ってて」
祐樹が電話をもって、早苗から少し離れた場所で電話に出た。
「もしもし」
「もしもし、祐樹君?」
「はい」
「私、佳代子だけど、今大丈夫?」
「少しなら大丈夫です」
「ちょっと相談したいことがあるんだけど、今日の午後からとか時間とれる?」
「えっとー、これから友達と食事に行くんで14時くらいからなら大丈夫です。でも何ですか?」
「詳しいことはその時に話すけど私、来年就活だからちょっと祐樹君のお父さんにお話し聞いてもらえないかな?って思って」
「あーなるほど。佳代子さんIT系の会社に入りたいって言ってましたね」
「そう、祐樹君のお父さんの会社に入れることはないと思うけど、何かアドバイスなど貰えないかな?って思って」
「わかりました。詳細はその時に聞きますね。」
「じゃあ場所は祐樹君の近くまで行くから、あとで場所教えてね」
「わかりました。では後程」
「うん、ありがとう」
祐樹が電話を切った。
「誰からだったの?」
「あー佳代子さん」
「あのセミナーで出会った美人の女の人だね」
「そうですね」
「なんて内容なの?」
「何か就活のことで、自分のお父さんに相談したいって!」
「あーそう言うことか?」
「佳代子さん大学生?」
「なんかIT系の専門学校に行ってるって言っていました。」
「そうなんだぁ、年上だったんだね」
「うん」
「この前の星のイベントあった日ね、楽屋に行ったでしょう?」
「はい」
「星がセミナーの日だったと思うんだけど、秋葉原の喫茶店で祐樹君と佳代子さんらしい人を見たって言ってて」
「それが祐樹君の新しい彼女だと思っていたみたい。」
「えっ!その日星も秋葉原にいたんですか?」
「そうみたい」
「そうなんだぁ」
「私はセミナーで出会った人って言って、彼女じゃないよ!って言っといたけど・・・」
「彼女じゃないです!本当にセミナーで出会った友達なんで!それに佳代子さん彼氏いるから」
「そうだよね」
「そうです。」
「信じない訳じゃないけど、星が心配してたから」
「そんなことがあったんですね。知らなかった。今後は気を付けますね」
「そうだね。じゃあごはん行きますか?」
「そうですね」
2人は学校を出た。
早苗と昼食を終えた祐樹は、家の最寄りの駅近くの喫茶店にいた。
時間は14時前
喫茶店の扉が開く音がした。
「いらっしゃいませ!何名様ですか?」
「ちょっと待ち合わせをしてまして」そう言うと祐樹を見つけた。
祐樹も佳代子を見つけた。
「あの男の人です。」
そう言うと佳代子が祐樹のテーブルに向かって歩いた。
「祐樹君、ごめんね。待ったでしょう?」
「いえ、14時の約束だから大丈夫です。」
店員が水とおしぼりをもって来て、声を掛ける。
「ご注文は如何しましょうか?」
「あっ、アイスコーヒーで!」
「アイスコーヒーですね。少々お待ちください。」
「ごめんね。急に呼び出して。何も予定なかった?」
「午前中は学校に夏季学習に行ってて、午後からは予定なかったから大丈夫です。」
「ありがとう」
「お父さんに相談したいってどうしたんですか?就活のことですか?」
「来年就活だけど、自分には祐樹君みたいに専門的な知識もないから、IT企業に行きたいって言っても入れるかどうか?」
「でもそのために専門学校で勉強されてるんですよね」
「この前のセミナーあったでしょう?あの時に祐樹君の知識の高さを知って、ちょっと不安になっちゃったの」
「僕のせいですか?」
「そう言う訳じゃないけど、IT企業に入れる何かきっかけが無いかな?って思って」
「なぜそんなにIT企業に入りたいんですか?」
「小さい頃にね、ちょっと助けてもらったことがあって、私より年下の男の子だったんだけどその男の子がお父さんの様な仕事がしたいって言ってたの」
「お父さん、何してるのって聞いたらゲーム作ってるって言ってたの」
「その時は何も言えなかったんだけど、ゲームって言ったらIT系でしょう?」
「ちょっと恩返しじゃないけど、そう言う仕事してたらいつかその子に会えるんじゃないかって思って」
「そうなんですね」
「でもIT系の人っていっぱいいるからね」
「そう、多分自分の気休めだと思うんだけどね」
「わかりました。一度お父さんに聞いてみますね。結果わかれば連絡します。」
「ありがとう!」
そうしていると店員がアイスコーヒーを持ってきた。
「ご注文は以上でしょうか?」
「はい」
「ではごゆっくり」
「そうだ、この前のHIKARIのイベントで言っていたこと。早苗さんだっけ?楽屋に行ったって!あれから何かあった?」
「特に、お互い楽しかったって言ってましたよ」
「そっか、でもいいなぁ。HIKARIが友達だなんて!まあ、祐樹君は微妙かも知れないけど・・・。」
「その話は本当に内緒ですよ!」
「うん、わかってる。誰にも言ってないから・・・。」
「ありがとうございます。」
その後もお互いの近況を話していると1時間ほどが経った。
「あっ、そろそろ帰ります」
「もうこんな時間なんだね」
「今日はここの支払い出しとくね」
「えっ!この前のセミナーの時も出してもらったじゃないですか?」
「でも今日は私が呼び出したんだから。それにお父さんに確認もしてもらわないといけないから。出しとく!」」
「じゃあ、お言葉に甘えさせてもらいます。」
「はい!素直で宜しい!」
「はは」
佳代子が支払いを終えると、2人は喫茶店を出た。
「祐樹君、今日はありがとう。お父さんの件よろしくね」
「はい、わかれば連絡します。」
「またね、バイバイ」
「はい」
2人は違う方向に帰って行った。
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