75話 Web会議の裏側
スターライン・プロダクションとのWeb会議の1時間前、祐樹は自分の部屋で音声変換ソフトの確認をしていた。
設定はマイクから発せられた声を少し低い声にする様にしていた。
「あーっ!あーっ!」
「こんなもんかな?」
「私は祐樹です。」
「もう少し低くするか?」
設定の低音レベルを1段下げる。
「私は祐樹です。」
「うん、こんな感じか?」
「これで行こう!」
あとは企画書の内容を再確認していた。
「企画書の説明は体育祭の実行委員会で一度経験しているから、話す順番、強調するポイント、すべて出来る様に資料を構成している。」
「でも念には念を!繰り返し練習するか?」
「それでは私の企画の説明をさせて頂きます。まず・・・・・」
祐樹は30分ほど練習した。
説明はともかく星と久しぶりに会話できることに少し緊張していた。
向こうは自分が祐樹だと分かっていないのに何か緊張して気分が高まっていた。
時間は19時Web会議が始まった。
「初めまして、私はHIKARIが所属しているスターライン・プロダクション代表取締役の岩永と申します。本日はよろしくお願いします。」
「初めましてユピネスです。参加が遅くなりすみません。こちらこそよろしくお願いします。」
「ここまでは順調!」
すると小さな声で「声の感じからすると男性だよね」と聞こえた。
「あっユピネスが女性かも知れないって噂も聞いたことがある。男だと思われたんだぁ」
「こちらには岩永、秘書の二宮、HIKARIのマネージャーの新道、そしてHIKARI本人が参加しています。」
「よろしくお願いします。」
「星の声!」祐樹の心臓の鼓動が一瞬にして早くなった。
「落ち着け!落ち着け!」
気持ちが落ち着くまで数秒掛かった。
その後、プロダクション秘書の説明が続く。
完全に落ち着いた祐樹はその後は普通に接することが出来た。
すると星の単独の声が聞こえた。
「ユピネスさん、HIKARIです。いつも応援ありがとうございます。どうして私のためにそこまでして頂けるのでしょうか?」
思いがけない質問に祐樹は戸惑った。
心臓の鼓動がまた早くなった。
「なんて返したら良いのか?」頭の中でぐるぐるしていた。
今度は落ち着くまでにかなりの時間が掛かった。
「あっ言い訳しないと!」
ふと出た言葉が「「すみません、マイクの調子が悪いようで・・・」
心では「こんな回答で良かったかな?」って思っていた。
次に祐樹の説明の番になった。
「練習通りにすればよい!」そう言い聞かせながら説明を始めた。
説明の間も星のことを思って、丁寧に慎重に説明を進めていた。
「ふ~う。終わった。」心で呟く。
「何か質問がありますでしょうか?」
「説明ありがとうございました。素晴らしい企画と思いました。・・・」
「HIKARIも良いよね!」
「星に確認?」
「えっ!あっ、はい!」
「良かった。」
その後、質問に丁寧に答えて会議が終了した。
「・・・失礼します。」
祐樹はWeb会議から退席した。
「ふー!疲れた」
「でも星と久しぶりに話せて良かった。」
「今日は疲れたから早く寝よう!」
祐樹がベットに横になると1時間ほど眠ってしまった。
「祐樹!お風呂空いたよ!」
「母さんの声が聞こえる。」
「祐樹!聞こえてる。」
祐樹が目を覚ました。
「寝てた!はーい、直ぐに行くから・・・」
祐樹がクローゼットから着替えを取り出していると携帯に着信がなった。
「誰だろう?」
番号を見ても知らない番号であった。
「もしもし!」
「・・・・」
「もしもし、聞こえますか?」
「・・・・」
「いたずら電話ならやめて頂けますか?」
そう言うと電話が切れた。
「もう、こう言う無言のいたずら電話やめてほしい!」そう言いながら部屋から出て階段を降りて行った。
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プロダクションの事務所から帰宅した星は自分の部屋にいた。
「星?ご飯は?」母親が尋ねる。
「あっ!食べるけど少し後にする。」
「何かあった?凄く疲れてる様だけど・・・。」
「大丈夫!」
「それなら良いんだけど。」
「食べる時に声かけて!」
「うん、ありがとう」
母親が星の部屋から出て行った。
本当はWeb会議から祐樹のことが頭から離れないでいた。
「祐樹、どうしてるのかな?」
「星は携帯を眺めていた。」
掛けることはないと思っていながらも、祐樹の電話番号はアドレス帳に登録されていた。
「声が聴きたい・・・。」
星の目から涙がこぼれていた。
「こんな気持ちになったのは、祐樹と離れてから初めて・・・。」
「祐樹の声が聴きたい・・・。」
星は知らず知らずのうちにアドレス帳から祐樹の番号を押して、着信を押した。
しばらく呼び出し音のあと掛かった。
「もしもし」
星は声が出なかった。
「久しぶりに聞く祐樹の声!」星の心臓が爆発しそうになっていた。
「もしもし、聞こえますか?」
「いたずら電話ならやめて頂けますか?」
星は「はっ!」と我に返った。
そのまま電話を切った。
祐樹を怒らしてしまった。でも声が聴けてそれだけで心は満たされていた。
「ふーう!」
星は大きく深呼吸をすると、
「お母さん、ごはん食べるね」
と部屋から出て行った。
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