74話 Web会議
その週の金曜日の夜、星と岩永社長、秘書の美香、星のマネーシャーのさやかの4人はスターライン・プロダクション事務所の会議室に集まった。
社長の岩永が美香に尋ねる。
「打ち合わせは何時からだっけ?」
「19時からです。」
岩永が自分の腕時計を見る。
「あと10分かぁ」
「ユピネスってどんな人なんでしょう?」
「全然検討がつかない。年齢も職業も性別も一切公表していないからね。ただゲームに関してはプロ以上の腕前と言う事かな?」
「でも送って来た企画書の内容からゲームも作れるって事だからどこかのゲーム制作会社の社長か?その関係者か?と言うのも考えられますね」
「そうだなぁ」
「きっとIT技術に優れた人なんだろうなっ!」
星が話す。
「私も企画書見ました。どうして私なんかにこれだけのことをしてくれるのでしょうか?」
「星ちゃんの初めてのライブに来てたって言うことは、その時からの根っからのファンと言う事なんだろうね。」
「でもこの企画書、事業的な感じがしないんだよなぁ。どちらかと言えば個人?」
「事業的ならもう少し収益を考えると思うんだよね」
「従業員もいるだろうし、ゲームを作るならそれだけの経費、時間が掛かるだろうしね」
「売り上げの2/3をうちにってないと思うだぁ~」
「確かにそうですね。」
「会社なら従業員がいる訳ですから、自分の勝手な企画ってできないでしょうからね」
「とりあえず打ち合わせで確認してみましょう!」
「そうだな」
「1分前です。」
「接続しますか?」
「うん」
美香がパソコンから送られてきた接続先へアクセスした。
画面には『HIKARIさんの著作権に関する打ち合わせ』と表示された。
「まだ参加していないようだね」
しばらくすると、いかにも自分で制作したと思われるアイコンのマークと『ユピネス』と表示されたユーザーが参加した。
社長の岩永が話す。
「初めまして、私はHIKARIが所属しているスターライン・プロダクション代表取締役の岩永と申します。本日はよろしくお願いします。」
「初めましてユピネスです。参加が遅くなりすみません。こちらこそよろしくお願いします。」
「声の感じからすると男性だよね」とさやかが小さくつぶやいた。
「こちらには私、岩永、社長秘書の二宮、HIKARIのマネージャーの新道、そしてHIKARI本人が参加しています。」
みんなが一斉に「よろしくお願いします。」と答えた。
数秒の沈黙があった。
「ユピネス側は私1人で参加しています。よろしくお願いします。」
社長が話を始める。
「まず弊社から著作権の件について説明させて頂き、その後ユピネス様から頂いた企画の内容を説明頂くことでよろしいでしょうか?」
「はい、問題ありません。」
「では、二宮の方から説明させて頂きます。」
「まずHIKARIがデビューする前からやっていましたYouTubeですが、当初は拡散希望と言うことでダウンロードも可能としていました。」
「しかし、現在HIKARIはデビューもしていて、CDも発売しています。」
「現在CDを買って頂き、それを対価にHIKARIの歌を提供しているのにも関わらず、一方でYouTubeからの無料ダウンロードも可能と言うのは著作権問題とわかり、それらを停止させて頂きました。」
「ここまでは大丈夫でしょうか?何か質問等あれば答えさせて頂きますので何なりと発言してください。」
「はい、大丈夫です。その内容は理解しています。」
「弊社が調査させて頂きました結果、自分のアカウント等でHIKARIの曲を使用されている方が数名わかりましたので、全員に使用の停止をお願いさせて頂いています。」
「ただ、ユピネス様に関しましては、当初HIKARIのデビュー前に知名度を上げて頂くことに大変助けて頂いたと聞いています。」
「よってユピネス様でHIKARIの曲を使用して頂けるのであれば、弊社と契約することで使用権を発行するとさせて頂きたいと思っています。」
「本来であれば使用して頂く場合、ユピネス様から使用するための費用を頂くことが望ましいのですが、ユピネス様の影響力も理解しています。」
「ですので、使用して頂く前提で反対にこちらから、どの様な言葉が正しいのかわかりませんが、人気アップ費としていくらかお支払いをさせて頂きたいと考えています。」
「如何でしょうか?」
「では、お答えします。まず費用を頂くことはできません。私は趣味でゲーム配信をしています。事業性はまったくありませんので、いつまで続けられるかの保証がありません。」
「ですので費用は頂くことはできません。」
「ご存じかも知れませんが、私はHIKARIさんのいちファンであります。」
「HIKARIさんの人気が出るお手伝いをするのは当たり前のことですので、これからもHIKARIさんの曲を使用しても良いのであれば無償で使用させて頂きたいと考えています。」
「もちろん世間体で著作権問題が発生するのであれば、契約することは問題ありませんのでよろしくお願いします。」
「ただ契約書にはユピネスと言う名前、住所は未記入、受け渡しも郵便局留めでお願いしたいと考えています。如何でしょうか?」
「承知しました。契約書の内容に関しては弊社の弁護士に確認し回答させて頂きます。」
「ご確認よろしくお願いします。」
星が話す。
「ユピネスさん、HIKARIです。いつも応援ありがとうございます。どうして私のためにそこまでして頂けるのでしょうか?」
しばらく沈黙が続いた。
「すみません、マイクの調子が悪いようで、先ほども言いましたがいちファンとして応援していると言うことです。その様な回答でよろしいでしょうか?」
「ありがとうございます。本当にいつもありがとうございます。」星のが少し涙声に変わった。
「では次に私の企画に関して説明させて頂きます。」
「承知しました。お願いします。」
「送りました企画書を開いて頂いてもよろしいでしょうか?」
「はい、開いております。」
「ありがとうございます。」
「ではまずこの企画は現時点ではゲーム自体がありませんので、半年後に完成したらその時から発生する契約とさせて頂きたいと思っています。」
「それは一からこのゲームを作るってことでよろしいでしょうか?」
「その通りでございます。」
「先ほど趣味でゲーム配信と言われましたが、この内容も趣味でやられることでしょうか?であれば弊社として採用は難しいかと思います。」
「お答えします。このゲームが出来る前に私が会社を立ち上げます。名前は仮としましょう!『ユピネスITソリューション』です。」
「ですので、契約もこの会社が出来て事業間での契約とさせて頂きたいと考えています。」
「それなら問題ありませんが、あなたはどの様な人物なのでしょうか?」
「現時点でどの様なお仕事をされているのでしょうか?」
一瞬沈黙が続いたが「フリーランスのIT関連アドバイザーを行っております。」
「なるほど、理解しました。」
「では中身に入ります。1ページ目を開いてください。」
ユピネスはその企画の内容を丁寧に時間を掛けて説明した。
岩永社長、美香、さやかはそれらを理解しようと一生懸命聞いていた。
でも星は少し違った。
ユピネスの企画書の説明が、何か聞いたことがある様な雰囲気に感じた。
「この説明の仕方、どこかで聞いたかも? そうだ。体育祭のポスターの時・・・」
星は説明の仕方が祐樹に似ていると思った。
「祐樹?でも声は違うし、フリーランスのIT関連アドバイザーって!やっぱり気のせい?」
「でも凄く懐かしい響き」
星は祐樹の笑顔を思い出していた。
心の中で祐樹に逢いたいって・・・。
「以上で説明を終わります。」
「何か質問がありますでしょうか?」
「説明ありがとうございました。素晴らしい企画と思いました。」
「ありがとございます。」
「ユピネス様がもしこれを成功させたら凄い影響力だと思います。」
「その際は弊社と契約をさせて頂きたいと考えています。」
「HIKARIも良いよね!」
「えっ!あっ、はい!」
「その中で1点だけ質問させてください。」
「はい!大丈夫です。」
「この内容であれば、主人公はHIKARIだけでなく他のアイドルとかに変更できる様にすれば更に売り上げが上がるのではないでしょうか?」
「現時点では、売り上げ、収益が目的でなくHIKARIさんが今以上に有名になって頂くことが目的です。ですのでこの仕様で考えました。」
「半年後、会社が立ち上げた時にその様な仕様も検討します。」
「なるほど、わかりました。」
「今は企画だけですので、定期的に進捗は報告させて頂きます。」
「必要であればこの様な打ち合わせも開催させて頂きます。」
「お互い、このメールアドレスでやり取りすることで宜しいでしょうか?」
「はい、問題ありません。」
「では今後ともよろしくお願いします。」
「あっ!先ほどの件は、弁護士に確認し回答させて頂きます。」
「承知しました。よろしくお願いします。」
「失礼します。」
Web会議が終了した。
「ユピネスが男性、そしてフリーランスのIT関連アドバイザーってことがわかりましたね。」
「そうだね」
「そして。星ちゃんのことが本当に好きって言うもの伝わりました。」
「半年後、楽しみですね」
「そうだね」
「星ちゃん?どうした?」
「いえ、大丈夫です。」
星は企画の内容半分、あと半分は祐樹のことを考えていた。
「星ちゃん、今日は良いから帰宅してね」
「はいわかりました。お先に失礼します。」
読んで頂き、ありがとうございます。
面白いと思って頂いたら、評価、ブックマークの登録をお願いします。




