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藤浪 花音編 墓地でぼっち、でも空腹で その3

<異世界(藤浪 花音)サイド>


■名前:エーサ ■職業:くノ一 ■性別:女 ■年齢:− ■Lv:17


一度、自分を認めてしまえば、自分の強さに惚れ惚れしてしまう。


犬亜人の嗅覚、聴覚、牙、爪、脚力という能力。からくり人形の隠し暗器とそれを使いこなすくノ一のセンス。そして…不老不死のゾンビボディ!! 人間のときのボディも好きだったけど、今も良い感じよ?


エーサって、強いわ! 最高よ? 何でもできちゃうの!


人殺しなんて日本にいたら、絶対に経験できなかったわ! それに道徳的にアウトであり、実際に殺したら…きっと罪悪感や警察に追われる恐怖で頭がおかしくなっちゃうはず! でも、でも…ここなら、いえ、エーサなら…仕方ないよね? だって、そういう風に産まれちゃったし、作られちゃったんだもん。


今では、人を沢山殺したいの! あの死ぬ瞬間に垣間見る恐怖と絶望を乗り越えた悟ったような表情がたまらなく好きなの!! 殺した後、まだ温かい死体に貪りつく感じも最高!!


あぁ…また誰か来ないかしら? 彩乃が来たら喰ってやる!!


人を殺していたらね、Lvが上がっちゃったの! それでなのか、わからないけど…。墓場から、沢山の遺体がゾンビとなって、地上に出てきちゃったの! 生きた人間は、エーサの食べ物だよ! って宣言したら人間が来ても食べずに我慢してくれるの! みんな良い子なんだよ!


ぎゅるるるるっ! あぁ…お腹減ったよ〜。


「あなたゾンビ? 嫌だ、臭い…」


振り返ると、ゴシック・アンド・ロリータ風のドレスを着た赤い瞳の少女が立っていた。 とある組織の実験台として幼少期から厳しい訓練と教育を受けてきたエーサにはわかった。


「吸血鬼? あなたこそ、血の臭いがプンプンしているわ。節操がないみたいね」


「はっ? 殺すぞ、糞ゾンビ」


「ふふふっ。ゾンビは死んでるからゾンビなのよ」


9歳ぐらいの少女とは思えない鋭く重い蹴りが、腹部を直撃した。流石は吸血鬼。


「ぐっ」っと息が漏れる。こちらも吸血鬼を捕縛するため、からくり人形のギミックである鎖を使うが、吸血鬼特有の霧化によって避けられてしまう。


「無駄よ」という吸血鬼に対して、からくり人形の別のギミックを起動させる。そう爆弾だ。ゾンビボディとからくり人形ボディのため、自分を犠牲にしながら爆破させる。霧化した吸血鬼も体も拡散する。


「ちょっ、ちょっと!! あなた…馬鹿じゃないの?」


「あら? その程度で、泣き言を言うの?」


吸血鬼は黒い狼を複数召喚する。対してエーサは墓場にいるゾンビたちを呼び集める。


お互い内心は焦っていた。不死身に近く恐るべき回復力を持つ吸血鬼。対するは不老不死のゾンビであり…何故か不思議な暗器を隠し持つ犬亜人。


互いに決定打がないまま、その戦いは数日に及んだという…。


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