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33話 世界最高峰の癒し手

お久しぶりです。

一時的に更新復活です。

「トキちゃんが毒を受けたって?!」


ノーヴィスの報告を受けてハーべナーが部屋に老人を連れて飛び込んでくる。


「酸性の毒で防具を溶かされただけだから大したことないよ?」

「──っ! バッカたれ! 早く見せなさい」


ハーべナーの剣幕にタジタジとしながらトキは着替えさせられた服をまくる。


トキの皮膚は軽く炎症を起こしているようで、赤くなっている。


「ね? なんともなってないでしょ?」

「トキ、これ咥えて」


ハーべナーは真剣な表情で木の棒を差し出す。

トキは初めてハーべナーに呼び捨てされたことに内心驚きつつ、差し出された棒を咥える。


「黒に近い紫…」

「だいぶヤバい毒じゃな…何にヤラれた?」


手渡された咥えた木の棒の色を見てハーべナーが絶句し、隣の老人が尋ねる。


「カイザーホネット? ってやつ」

「ふむ…王級ホネットか…。女将、素材はあるか?」

「悪い。対ホネットシリーズの薬草は3年前に切らして以来入荷してない。翁、扱いはある?」


ハーべナーは下唇を噛みつつ老人に聞くと老人はサムズアップしてみせる。


「儂を誰と思って連れてきたんじゃ? 儂は【蠱毒(こどく)のアルベルト】じゃぞ? それにしてもお前さんが薬草を切らしてたことにはおどろいたのぉ」

「迷宮でホネットシリーズが出たって情報が無いから後回しにしてたのよ。迷宮周りなんて言う旨みも何もない所で狩りするやつおりゅ?」

「旨み、無いの?」


ハーべナーの言葉にトキは疑問符を頭に浮かべ尋ねると2人は頷き答えた。


「「全くない」」

「なんで?」


トキの問いにはハーべナーが答え、老人はポーチから薬草を数種類取り出しすり潰し始めた。


「うちの周囲はそう対してつよい奴は湧かない。かと言って奥の方が強いけどそこで狩るより迷宮潜った方が実入り多いんだよ」

「その迷宮ってどんなモンスター出るの?」

「様々じゃな」


老人が言うとハーべナーはウンウンと首を縦に振った。


「『様々』って…例えば?」

「それは──「翁、それ以上口にしたら首が飛ぶよ。主に物理的に…」?! おっとくわばらくわばら…」

「ここにある迷宮の名前は『天地開闢の塔』。SSS(トリプルS)オーバーというの世界に5つもない貴重な超々高難易度迷宮でね、この迷宮の情報開示は冒険者ランク2ランク下までしか許されていないのよ」

「え?でもAランクの冒険者やBランクの冒険者もここにいるよ? 2ランク下って言うならSまででしょ? AランクやBランクの冒険者もその迷宮に挑戦するために来てるんでしょ?」


ハーべナーはため息を1つ吐き、言う。


「迷宮のランクってのはKからSまでしかないの。そのSの中でとりわけ難易度が高いものを3つに区分した結果SからSS(ダブルS)、SSSがあるの。そもそも姫ちゃんはBの下のさらに下、最下級のKでしょ? ここの迷宮の情報を知る権利はないの。もし情報を得た場合…情報発信者は厳罰に処されるわ。厳罰の内容は主にコレね」


そう言ってハーべナーは自分自身の首に自身の手刀をトントンとあてて言う。


その意味は言葉にしなくてもトキには容易に想像できた。“断頭台にて処刑”…。

トキは思わず息を呑む。


「なんでそんなに重罪なの?」

「危険である分、かなり旨みがあるのよ。低層であってもね。それだから無茶をして死人が出たり、高ランクを詐称する輩が出る。無論、高ランクの詐称も重罪だけど……」

「じゃあ──」


トキは食い気味にハーベナーに話を聞く。

その様子を見たセラはハーべナーに目配せし、そっと呟くように声をかけた。


「主様、私は廊下で待っていますので……」


トキはセラの声が聞こえていないかのようにハーべナーに夢中で話を聞いている。


セラは音もなく扉を開け退室し、静かに扉を閉める。


部屋の外には強面の冒険者達が雁首揃えて心配そうに見つめている。


「なにか?」


セラが睨みをきかせながら一言発すると蜘蛛の子を散らすように我先に逃げ出した。


セラは扉にもたれ掛かりズルズルとその場に座り込む。


『ハーべナーの【癒し手の言葉(ヒーリング・ワード)】と【患者を看る言葉(イージス・ワード)】、【相談する癒し手(インテンシブ・ケア)】が発動した。これでいくらか時間は稼げる。分かってはいたけど……でも気づいて貰えないのは結構クるなぁ』


ハーべナーには2つのメインスキルがあり、その1つ【癒し手の言葉】は声をかけるだけで僅かに対象の状態を改善する。

そしてもう1つの【患者を看る言葉】は患者の声から状態を確認することが出来るスキルである。

そして称号の【相談する癒し手】は対象に「自分との会話を優先する」という認識誘導を行う。


【癒し手の言葉】は本当に僅か。雀の涙ほどの回復しか見られないし、既に重傷であれば意味をなさない。

【患者を看る言葉】は体調が刻一刻と変わるため会話が途切れてしまえば看ることが出来ない。

【相談する癒し手】は戦闘中や自身よりステータスの高い相手には効きづらい。

これらのことからそれぞれは一般的には「ゴミスキル」と称され、蔑まれた時期があった。それは単体としての話である。

ハーべナーが冒険者として初心者の時もこれらのスキルは「弱小スキル」と呼ばれる傾向にあった。しかし、今ではSSS(トリプルS)として、世界最高峰のヒーラーと呼ばれるほどである。

その努力は計り知れない。


「私の出来ることは終わったよ…姉さん」


セラは天井を仰ぎながら姉の帰還と無事を祈った。

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