33話 魔導の極致(3)
「…(《完全無効》シリーズの最大の欠点をつく以外方法がないんだけど…)」
ユネはため息ひとつこぼすと両手を広げる。
すると空を埋め尽くすほどの大量の魔法陣が展開される。
「立体交差、順序変更、起動」
ユネの紡いだ言葉によって無数の魔法陣は位置を変え、煌々と輝き出す。
毒蜂の皇帝も危険を察知したのか羽を震わせ始める。
「拘束せよ。無数の縛鎖」
毒蜂の皇帝が飛ぶ直前、見えない手に阻まれ、地面に押される。
しかし持ち前の《完全無効》によって解除される。
次は毒蜂の皇帝の足に光の鎖が絡みつく。
これも《完全無効》の対象である為、かき消される。
土の蔦が地面からわき、毒蜂の皇帝の手足や体に巻き付き動きを阻害する。
だが《完全無効》によって土の蔦は土塊となって消え失せる。
他の魔法陣との位置関係、重なり方、方角、地上からの高さ、文字配列、魔法陣の回転の向き、魔法陣の回転の速度、1つとして同じ魔法陣は存在しない。
熟練の魔導師でも神経一本一本を研ぎ澄まして集中しなければあっという間に瓦解、暴発する無数の魔法陣をユネはまるで料理のレシピを片手に、鍋を振るうような気軽さで鼻歌を歌いつつ指を振るう。
拘束、解除、拘束、解除、拘束、解除、拘束、解除、拘束、解除…
手を替え品を替え、ありとあらゆる方法で毒蜂の皇帝を拘束、行動を阻害する。
拘束が解除される度、空の魔法陣が1つ砕ける。その代わり、違う魔法陣が空に構築される。
絶え間なく飛ぶ拘束術式。しかしそれを尽く打ち消す毒蜂の皇帝。
一見無意味な事と思うかもしれない。それでもしっかり効果があるとユネは確信していた。
「方角は火鼠、雷虎、金竜、銀狼、一角獣を除いた7方位、時間は拘束、攻撃に適した赤から黒の刻、1カウント刻みで変質する拘束術式郡対処法は4つだけ。『術者の処理速度を超える負荷をかける』か『術者の魔力が尽きるまで術式を無力化し続ける』か『強引にぶち破る』か『私の魔法陣設計図案が尽きるまで無力化し続ける』かのみ。
でも1つめの対処は見たところ不可能。2つめは魔力が随時回復する私にとってデメリットになり得ない。3つめはそれが出来るようなやわな術式構築はしていない。となれば4つめの私の魔法陣設計図案が尽きるまで無力化し続けるのみ
対して《完全無効》シリーズの欠点は『覚えたては魔力消費が激しい』という点。だから絶え間なく《完全無効》シリーズを起動させ続ける。同じ魔法陣だとただただ熟練度を上げて消費魔力を減らしてしまい手がつけられなくなる。ならば細部の異なる多種多様な魔法陣で拘束し起動させ続ける。さぁ、私の魔法陣の設計図案と貴様の魔力、どちらが先に尽きるか…根比べと行きましょうか?」
銀髪の魔術師は残忍な笑みを浮かべて拘束術式を起動させる。
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