31話 魔導の極致(1)
ユネが杖を手に取った同時刻の憩いの狩場…
「うげぇ…」
「おろろrr…」
宿の客数名が吐き倒れていた。
「女将、どういう事だよ!! 食中毒か?」
「馬鹿、大声で言うんじゃ…」
「あんだと? こちとら衛生に気を配って厨房も掃除も徹底して、食中毒の危険性のある食材はその都度捨ててんぞゴルァ!!」
「トーナどうどう」
厨房から肩をいからせて出てこようとするのをファリスが何とか推し留めようとする。
「ここは私の出番ですね」
眼鏡をクイッと押し上げ、一同に声をかけた男がいた。
「あ、あんたは…街中Sランク冒険者【探偵】のシャロン!!」
「先日、SSに上がったよ。それはそうとこの事件の謎は半ば解けたようなものだ」
「流石街中の名探偵!! Sランクなだけはある!」
「SSランクだよ」
「じゃあ教えてくれ。何があった?」
ハーベナーの言にシャロンは人差し指を振って言う。
「まず共通点から洗い出す。捜査の基本さ」
「解けてるんじゃないのかい?」
「女将、探偵ってのはこういう性分なんだ付き合ってやってくれ」
ハーベナーはジト目でシャロンを見るも他の冒険者に言われ、シャロンの言葉を聞く。
「まず彼ら、彼女らの性別、種族は関係ない」
「見てわかるわ」
「次に食べていたものの共通項目…」
「エール以外に共通の物は無いね」
「じゃあエールが食中毒の原因!!」
「そう結論付けるのは君たちの悪い癖だよ」
シャロンはそう言ってまたもや人差し指を振る。
「もしエールが食中毒の原因であれば他のみんなも食中毒になっているはず。そうだろう?」
「き、鍛え方が違うんだよ!」
「では聞くが、君は鍛えているが、弓士の中でエールを飲んだ人はいるかい?」
シャロンの問いに数名の手が上がる。
「【金剛弓】のザン=ブルケーノ氏を除いた弓士は戦士職と比べると貧弱なのに吐き倒れていない」
「じゃあどういう事だ?」
「それに彼ら彼女らのジョッキの中には手をつける前の物もあった」
「つまりエールが食中毒の原因では無い?」
「そう。では何が原因なのか…。そこで着目したのは彼ら彼女らの職業だ。」
「魔法師、魔術師、魔法剣士、錬成師…。あ、魔法職だけしかいない!!」
「だが同じ魔法職の女将と給仕は平然としている。2人だけじゃない。他にも魔法職がいるにもかかわらずその方たちは平然としている」
「次にもうひとつ共通点を見つける必要があった。もうひとつの共通点、それは…」
「冒険者の等級か。彼らはみな、うちの4等部屋の客だ」
ハーベナーがシャロンの言葉を遮り、発するとシャロンは
床に膝をついて項垂れた。
「女将…台詞取っちゃダメだよ…」
「ダメなのかい?」
ハーベナーの問いに一同が首を縦に振る。
「まどろっこしいね…」
「様式美のようなものなんだ許容したげて…」
「はぁ…」
ハーベナーはため息ひとつで返す。シャロンは仕切り直しと言わんばかりに話を再開する。
「女将の言う通り彼ら彼女らは4等部屋、冒険者ランクA以下の客人である」
「…という事は」
「この事件の真相は魔力酔いである!」
シャロンがドヤ顔で宣言すると吐き倒れたパーティのメンバーが待ったをかけた。
「魔力酔いってのは魔力の低く魔力を認識できる奴が濃厚な魔力に当てられて発生する症例だろ? 俺らはランクA、そりゃSやSSと比べると貧弱だ。だが市井で比べると上位に位置してる俺らのパーティの魔法師の魔力は1,000を越えてるんだ2千や3千の魔力を浴びることなんてザラじゃなかった。なのに…」
「桁が違うのだよ。私が感じとった魔力は軽く1万は越えていた」
「え゛」
シャロンの答えに周囲の高ランク冒険者はウンウンと頷いた。
「1万って化け物かよ…」
「私達の知る中で魔力1万を放出できる輩は1人しかいない」
シャロンは静かに言葉を続ける。
「世界最強の魔術師、魔導の極致、1人軍隊、『元』名無しの従者の姉の方…ユネ」
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