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西国の神  作者: あすかK
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20、軽薄な世界


 長い一日であった。

 国城三殿の一つ、政殿から見える落陽は絶景である。特にこの日のような秋晴れの日は、空を一面橙色に染めて幽玄に日が沈む。しかし、そんな景色に目を奪われる余裕もない国務参謀ワイズ・レヴィンは、ようやく己の書斎に辿り着き、一息吐いたところであった。

 清潔感を乱さぬよう、常であればしっかりと整えられた黒髪も、朝から仕事に忙殺されて乱れたままである。体も節々が痛み、何より頭が重かった。

 政務に忙殺されるなど今に始まったことではないが、それにしても今日という一日は長かった。ワイズは書卓の前にどしりと腰を下ろして頭を抱え込むと、その日一日を振り返った。

 まず早朝、まだ日も昇らぬうちに出殿すると、政殿に着くなり秘書が飛んできた。

 ——内大臣が動きました……! 中務から……修道院制度破棄の議案に御璽が下されたと!

 それはすなわち、内大臣一派が修道院を見捨て、修道院制度そのものを撤廃することに賛成したということだ。彼らは自分の立場が危うくなることを恐れて修道院を政殿から切り離した。これによってワイズの一つの目的である修道院や大司教から権力を奪うことに繋がった。

 ようやく動いたか、と喜ぶ暇もなく、ワイズは秘書たちを集めて今後の方針を固めるために会議を開いた。それが朝方のことだ。そして彼らが話し合っているその最中に、ケトロ修道院での大暴動が起きた。大暴動を聞きつけて巫女がわざわざワイズのところまでやってきて、そして国城を飛び出し街へ下ったのが昼前のことだ。

 そしてその後、ワイズは修道院制度破棄の決議案を本日付けで施行させ、国の全土に発布させた。それからまもなく予想通りケトロ修道院から官軍を要請する文書が届いたが、修道院制度を破棄した後であったため、その要請は退けられて官軍が出兵することはなかった。

 そうこうしている間に、ワイズの元に一つの報告があった。

 ——ケトロの修道院における大暴動が、巫女君によって鎮圧されました。

 なんとたった一人で、いや、獣人を一匹引き連れただけで、何千の群衆の中に飛び込んで行ったという巫女は、一人で暴動を鎮圧させたという。人間業ではないそのような芸当をやってのけた少女は、やはり巫女なのであろう。ただの少女が叫んだところで誰一人として話を聞くわけもなかろうから、恐らく巫女の不思議な技を使ったのではないかと思う。その具体的な様子までは報告に上らなかったが、あの娘ならやってのけるであろうと、妙に納得した心地でその事実を受け入れた。

 それから大暴動によって破壊された首都の一部の改築工事の件や、修道院制度が破棄されたことによりただの建物となった修道院や大聖堂の今後の処遇などを政殿の各部署と語り合っている間に、いつのまにか日が沈んでいた。ようやくそれらの話し合いが終わって彼が自分の書斎に戻ってきた時には落陽である。

 ワイズは疲弊しきった体を椅子の上に座らせて、大きく溜め息を吐いた。

 修道院の悪行が世間に発覚し、内大臣一派が修道院との癒着を諦め、民衆が決起し、これ以上なく理想的な流れで此処までやってきた。その上、民衆が決起して起きた暴動も、巫女の活躍によって最低限に鎮圧されて言う事なしである。民衆は自分たちを救ってくれた巫女を崇拝するかもしれないが、二度と修道院に縋ろうとは思うまい。必要以上に神に心酔することもなくなるだろう。彼らは目覚めたのだ。結局のところ、自分たちを護ることができるのも、自分の願いを叶えることができるのも、自分自身でしかないということに、気付いたのだ。

(……長かった)

 書卓の上に肘をついて重い頭を抱え、ワイズは心底疲弊を感じていた。

 今日という一日も長かった。朝からいろいろなことがあり、多忙であった。しかし何より長かったのは、此処にくるまでの道のりだ。

 燃え盛る街を抜け出して修道院に逃げ込んだあの幼き日のことを、今でも鮮明に覚えている。神などいないのだと悟ったあの瞬間から、彼はずっとこの日を目指して来た。この国は、神などという便利な言葉に騙されて、大切なことを見落としている。早く是正しなくては。早く、人々の目を覚まさなくてはと、そればかりを考えて来た。

 そしてようやく、此処まできた。修道院はもう二度と機能しない。神への信仰も少なからず薄らぐことだろう。これで、自分を裏切った神という偶像への報復は十分に出来たはずだ。ワイズはそう思った。そう信じることに、決めた。



 ——ふと、転寝をしていたようだ。

 それだけ多忙な一日を過ごした後の休憩時間であったから、思わず眠ってしまっても致し方ないことではあった。

 ワイズは書斎の中で、船を漕ぐ。こくりこくりと浅い眠りにつく。

 そして、夢を見た。初めて見る夢であった。

 夢の中でも、ワイズは自分の書斎の中で書卓に座っていた。特に仕事をしているわけでも寝ているわけでもない。ただ、書卓の前に腰掛けてぼんやりとしていた。自分という存在はただ自分という存在でしかなく、年齢もなければ外見もない。書卓の前に腰掛けているだけの存在となる。

 ふと、そんな自分の前に幼い少女が舞い降りた。少女はどこからやってきたのだろう、いつのまにやってきたのだろう。とにかく、書卓の前に、突如現れたのだ。

『お兄ちゃん』

 あまりにも懐かしい声に、仰天した。

 今まで彼女の夢を見なかったというわけではない。だが、彼女の出てくる夢はいつもあの街が炎に焼かれた晩のことで、あの思い出したくもない修道院での地獄を見てしまう。そのため、目が覚めると大体うなされていて、もう二度と見たくないと思うのだ。

 このように何の害もない夢の中で幼き妹の姿を見るのは、実は初めてかもしれなかった。

『お兄ちゃん』

『フィオナ……』

 その妹の名を呼ぶ。妹は死んだ時のまま、あの幼い姿のまま成長していない。自分は今存在でしかないから、年齢の概念がそもそもない。幼い姿の妹に手を伸ばして、触れようとすると、妹はとても悲しい顔をした。

『お兄ちゃん……お願い、もう、苦しまないで』

 その言葉に驚き、一瞬ワイズは彼女に伸ばした手を止めた。その悲しい表情が、己の不幸な運命を嘆くものではなく、兄を哀れむ顔だったのだと知って、ただただ唖然とする。

 何を言っているのだ、と驚いた後に伸ばした手はもう、彼女には届かなかった。慌ててワイズは彼女を追って立ち上がり、必死に彼女を追おうとする。しかし、どんどん遠ざかって行く彼女に手は届かない。走っても走っても追いつけない少女に向かって、一所懸命に声を荒げる。しかし、声は音にならず、空中に離散した。それでも叫び続ける。

 ——待ってくれ、と叫んだ声は、声になっただろうか。彼女に届いただろうか。

 何故、苦しまないでなどと、兄のことを案じるように言うのだ。苦しんだのはお前ではないか。兄には何もできなかった。苦しんでいるお前に手を差し伸べることさえできなかった。ただ傍観することしかできなかった兄よりも、お前はずっとずっと苦しい思いをしたではないか。

 待ってくれ、と幾度も幾度も叫びをあげる。行かないでくれ、フィオナ、お願いだから此処にいてくれ。どうか、一人にしないでくれ。こんな無情な世界に兄を一人置いて行かないでくれ。この世界はあまりにも冷淡で、誰も助けてなんてくれないんだ。兄がお前を助けられなかったように、誰もこの兄を助けようともしてくれない。世界が怖い、この世界は怖くて仕方がない。どうして、こんな軽薄な世界の中に一人取り残されなくてはいけないんだ。

 待ってくれ、待ってくれ。どうか、俺を一人で置いて行かないでくれ——!



 と、金切り声で叫びをあげたところで、はっと、覚醒した。

 目覚めると、そこはいつも通りの書斎の中であった。いつのまにか夕日もすっかり沈んでしまったのか、窓の外は暗黒に包まれており、一筋の光もない。部屋を照らすのは南国製のランプの明かりのみだ。

 いつのまに転寝してしまっていたのだ、と自分を戒めながら、ワイズは机の上から起きあがった。机上に突っ伏していたため、押し付けられていた頬が痛む。ぐしゃぐしゃと髪をかきあげながら、果たして自分は寝る前まで何の仕事をしていたのだろうと机上に散った書類に手を伸ばそうとした。煌煌とランプの光が揺れている。

 ふと、そこで、気が付いた。

 まだ自分が眠りに落ちる前は、窓の外には夕日が浮かび、部屋の中も赤く照らされていたはずだ。ワイズはランプの明かりを灯さなかった。——では、一体何故、今、部屋のランプのスイッチが入っているのだ?

「——具合はどうだ」

 突如、自分の後ろから男の声がして、危うく飛び上がりそうになるほど驚いた。

 書斎にいる時にいちいち部屋を施錠していないとは言え、自分が眠っている間に誰かが無断で入室してくることなどまずない。仮にも国政の上位である国務参謀の書斎なのだ。大概の人間は気後れして近づくことすらない。

 それなのに一体誰が、と振り返ると、そこにいたのは無精髭をはやした茶髪の男であった。見慣れた薄汚い軍服をまとっている。ゆらゆらとランプの明かりに照らされてこちらを見下ろすその男を睨みつけて、ワイズは乱れた髪を結わえる紐をほどいた。

「エリック……こんなところで一体何をしている」

 ワイズの突っ伏していた書卓の後ろ、本棚に背を預けてこちらを見おろしていたのは、軍曹エリック・コーエンであった。

 彼はこの国城内で実は最もワイズをよく知り、冷徹と呼ばれた参謀にさえ唯一恐れを抱かない人物かもしれないが、しかし、一度だってこの書斎に足を運んできたことはなかった。彼は初めて訪れた参謀の書斎を興味深げに観察しながら、言う。

「よく眠っているようだったから……自然に目を覚ますまでは声をかけないでおこうと思ったんだ」

「そんなことを聞いているわけではない——ここには来るなと言ったはずだ」

 ワイズは苛立ちながら、言い放った。

 それは、二人の間の不文律であった。コーエンはワイズの隠れた右腕として影で暗躍しながらも、表面上では一介の軍曹でしかない。軍の中でもさほど位の高くない彼が国務参謀とまるで対等であるかのように話しているところを誰かに見つかってしまっては困るのだ。コーエンの『力』は隠されているからこそ利用価値がある。実は彼には『力』があり、それによって国政の手助けをしているのだと知れてしまったら、彼の役目は果たせなくなってしまう。

 故に、ワイズの書斎や家などには決して訪れないというのが二人の間での暗黙の了解であった。もしもここにいることが誰かに知れてしまったら、一大事である。

 コーエンもコーエンでそれについては理解しているようで、ワイズの睨みつけるような目線をうけて、「すまない」と小さく謝罪した。

「来るつもりはなかったんだが……つい、いてもたってもいられなくなって」

「言い訳など聞いていない。誰かに見つからなかっただろうな?」

 その問いをうけて、コーエンは困ったように言葉を濁した。その態度から、彼はここにくる間に誰か第三者に見つかってたのだと知る。ワイズは机をたたいて立ち上がり、男に迫った。

「誰だ? 誰に見つかった——?」

「いや、それについては問題ないと思う——」

「問題がないかどうかは俺が判断する。誰に見られた?」

 コーエンがワイズの手の内の人間であると気付かれると、途端に自由が効かなくなる。場合によっては気付いた人間を国政の舞台から追い払わなくてはならないと息巻くワイズに対してコーエンは落ち着いた様子で、だがどことなく寂しげに、呟いた。

「俺は……お前が心配だったんだ、ワイズ——お前が苦しんでいるのが、見えた」

「意味のわからんことをほざくな。誰に気付かれたのかと聞いている」

「俺がお前と繋がっているのだと気付いたその御仁も、大層お前のことを心配しておられた」

 ワイズはその言葉に眉をひそめた。「御仁」というからには、なかなか高貴な身分の人間なのだろう。高貴な身分の人間で、コーエンに気付きながらもワイズのことを心配する者といえば——とっさに思い浮かんだのは、一人だけ。

「……巫女君か?」

 コーエンは何も言わずにただ小さく微笑むと、ねぎらうようにワイズの肩を叩いた。くたびれたワイズの黒髪がぼさぼさと舞う。

「巫女君なのか、と聞いている」

 しかし、コーエンはワイズの問いにはついに答えず、呟いた。

「俺は生まれつき妙な『力』を持っていて、そのせいで人の話を盗み聞きしてしまうことはあれど……その人間の心や夢などを読むことは一度もなかったし、そんなことはできなかったんだ……だが、生まれて初めて、お前の夢を読んだ」

「夢——?」

「お前の苦しみが溢れんばかりの夢だった……それでいてもたってもいられなくなって、ここまで来てしまった」

 夢、と言われて思わずワイズも誰に見つかったのかという犯人探しをやめて、今の今までうたた寝をしながら見ていた夢を思い浮かべた。

 夢など目が覚めると同時にすぐ忘れてしまうものである。それでも必死に何の夢を見ていたのか、と思い出そうとした。——確かに、あまり楽しい夢は見ていなかった気がする。苦しんでいたようにも思える。誰かに手を伸ばして、行かないでくれとすがるような夢を見た。一体、それは誰であったか。

「お前は……ずっと、ずっと。何年も何十年も、苦しみ続けていたんだな」

 コーエンのその言葉に、ワイズはただただ眉根を寄せた。

 そんなつもりはなかった。ワイズはただ実直に、国を支えることのできる人間になるために、己の力で全てを成すことができるようになるために、努力を続けてきただけだ。——だが、自分は、ひょっとしたら、ずっと苦しみ続けてきたのだろうか。

 ふと、己の半生を振り返って疑問を抱いたワイズに、コーエンは言う。

「本当は、一番神に縋りたいと思っていたのは、お前だったはずなのにな。本当は一番、神を信じたかったはずなのにな——」

「だから、何を言っている……? 俺は、神など信じていない。この世に存在しないものに縋ることは愚かだと何度も説いたはずだ」

「そう自分に言い聞かせることがどれだけ苦しいことなのか、どうやら俺は気付いてやれなかったみたいだ……たった一人で自分に神などいないと言い聞かせ、自分を責め続け……辛かったろう」

 ワイズは目を大きく見開いた。ワイズを労うように撫でるコーエンのその後ろに、幼い妹の姿が見えたためだ。

 とっくの昔に死んだはずの妹は、当然実体としてそこに存在するわけはなかった。だが、確かにそこに彼女がいるのだと、ワイズにはわかった。幼い妹が、悲しげな瞳でこちらを見ている。その目が自分を哀れんでいるのだと気付いて、ワイズは衝撃を受けた。

 ——そういえば、さっきまで、彼女の夢を見ていた気がする。

 幼い妹は自分に対して、「もう苦しまないで」と言った。今目の前にいる男と同じだ。何年も何十年も苦しみ続けたというワイズを労ったのだ。

(俺は……苦しいのか)

 ワイズは俯いて自分の胸を押さえた。

 そう言われてみれば、もう何年も、己の心の内を見ないようにしてきたような気がする。感情など不必要だと打ち捨てて、ただ目的のためだけに生きた。自分を護るために、自分の大切なものを護るために、護るだけの力を手に入れるために、その目的にだけ向かって生きてきた。自分の感情には、ずっと蓋をしてきた。

 そうか——と、唐突に、氷解した。

 自分は神を憎んでいるのだと、ずっと思ってきた。だが、実際には本当に憎んでいた相手は神ではない。神などいないのだと悟った絶望感は今でも忘れることのできないものであるが、同時に覚えた憎しみを向けた相手は、神ではなかった。——妹を、大切なものを護ることのできなかった、自分だ。

 フィオナを、妹を護れと両親に言われたあの炎の渦の下、彼は幼い妹の手を引いて逃げ出した。何がなんでも彼女を護るのだと両親に約束したのに、彼は妹を護ることができなかったのだ。そしてその責任を、神に押し付けた。なぜ神は自分たちを救ってくれなかったのだと、憎悪を抱き、嫌悪したのだ。

 確かに、自分は神を信じたかったのかもしれない、と今になって思った。神などいないと自分に言い聞かせる一方で、胸の内では誰かに助けを乞うていた。誰も助けてくれないこの非情な世界の中で一人で生きるのは、あまりにも恐ろしい。どうして誰も助けてくれないのだろう。神が、神に匹敵する何かが、自分を助けてくれればいいのにと。

「フィオナ……」

 ワイズはぽつりと呟いた。その名前は、今目の前にいるコーエンにさえ教えたことのない、妹のものだ。コーエンは初めて聞く名に一瞬驚いたような顔をしたが、すぐにワイズが自分ではないどこかを見ているのに気付いて閉口した。ひょっとしたら『力』を持っている彼にも、後ろに控える幼き妹の姿が見えているのかもしれない。

「すまない、フィオナ……お前を助けられなかった兄を、許してくれ……」

 書斎の端にひっそりと控える実体なきフィオナは、兄ににこりと微笑んだ。彼女は少しも兄を恨んでなどいない。彼女を助けることができずに見殺しにすることしかできなかった兄を、許すというのだ。

「すまない、フィオナ……すまない……」

 にこりと微笑んだ妹は、満足したようにふわりと浮いて、兄の前から消えていった。消え行くフィオナの前に立ち尽くすワイズは、ぐっと拳を握りしめる。力を入れていなければ、自ずと涙が溢れてしまいそうだった。

 神などいない、誰もこの世界では助けてなどくれない。そう思ってずっと生きてきたが、もしも、もしも神が存在するならば——ワイズは奥歯を噛み締めて、消え行く妹の姿を見送った。——もしも神がいるならば、死んだ妹に、もう二度とあんな苦しみを与えないでほしい。そしてできることなら、次は、彼女を護ってあげられる誰かを、傍においてやってほしい。無力だった自分のような人間ではなくて、彼女を護ってやれるような、誰かを——。

 ワイズは、あの幼き日から時を経て実に三十年ぶりほどに、神への祈りを捧げた。それは信心深く神に懺悔するようなものではなく、ただ己の力ではどうしようもないことを縋るものだ。ワイズは、三十年ぶりに、神に縋った。

 後ろに黙って立っていたコーエンが、なだめるようにワイズの肩を叩いた。人のぬくもりが、心地よく感じられた。そういえば、あまりにも当たり前のように存在しているから忘れていたことではあるが、自分はずっと彼に助けられたように思う。

 誰も助けてくれないなどと嘆いていたことが、あまりにもおこがましい勘違いであったことに、気がついた。

 自分は人知れず、誰かに助けられているのだ。ならば——自分も、彼らを助けよう。

 国務参謀ワイズ・レヴィンは、初めて、己の感情に従い、決断をした。この国にいる全ての民を、自分にできるだけの力で助けていこうと、初めて心に誓った。


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