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side A 01

今回はグロ関連は一切ないです。今までも大した事ありませんでしたが。

 携帯電話が着信を告げる。珍しく非通知。いつもの面倒事だった。コレの所為で、私は今日と明日は遊べない。


 パソコンの電源を入れて、風呂を沸かす。風呂が沸いてすぐに、ドアが開いた。一瞬だけ、鏡が目の前にあるのか、と錯覚した。差異はあるのに。

 身長は私の方が何ミリか低く、体重はあちらの方が数キロ重い。しかしあちらは筋肉があるので、スタイルは私より良い。似たような服を着ている。外見では分からないが、同姓同名。そして顔が一番似ている。入れ替わりは不可能でも、一卵性双生児といい勝負だろう。

 彼女は「お邪魔します」と冗談めかして言った。


「このバッグの中の服、洗濯してくれる? こっちはテーブルに置いといて。じゃ、俺は風呂入る」

 リュックサックとコンビニのレジ袋を私に手渡し、彼女は風呂に入った。


「真サンはさ、一応は大学四年制のトコ行ってたよね? 学部とか何だっけ?」

「経済学部、経済科」

 知ってる癖に、とは言わなかった。

「そーなんだそーだったんだー。あ、水持ってきてー」

 冷蔵庫から水を取り出し、グラスに注ぐ。彼女に渡すと「どーも」と気の抜けた声が返ってきた。

 私のパソコンを当然のように使う、六歳年下の少女。逆らえない。

「今日はもういいよ。何かあったら部屋に行くから」

 この台詞は出ていけ、という命令に等しい。

 でも、その前に。

「……さっきから何してるの?」

「チャット。四窓中」

 私も昔チャットしてたが、四窓はひどい。

「……お休み」

「お休みー。明日の朝御飯は適当にサンドウィッチとかでいいよ」

 この人は何時に寝て、何時に起きるのだろうか。それが分からないから明日は早起きしなければならない。幸い、サンドウィッチの材料はある。携帯のアラームをセットして眠った。


 朝目覚める。アラームが原因ではなく、知り合いからのメールの着信が来たからだ。

「……げ」

 思わず声が出る。何でこんな日に。

 とりあえずリビングに向かい、水を飲む。彼女はまだパソコンをしている。

「起きたばっか? 寝てない?」

「おはよ。まだ寝てないね。あ、どうせだからサンドウィッチ作って」

「いいけどちょい相談。今日カラオケ行かない? って知り合いに誘われたんだけど、行っていい?」

「どうぞー。あ、会員カード的なの要る?」

「要らない。それと、免許証」

「え、車のだよね? 使うの?」

「私以外に運転出来る奴居ないから」

「悲惨だねそれ。男も行くんだろ?」

 何で分かるんだろう、なんて疑問は薄い。昔の経験の所為だろう。

 彼女は自分のリュックサックから財布を取り出し、免許証を指の間に挟む。

「はい、貸してあげる。事故らないようにね」

 貸してあげる。まるで自分の物みたいな言い方だ。

 ……そこまで間違ってもないか。もう。

「どうも。夜には帰るから、宜しく」

「了解。じゃ、今日も泊って明日の朝帰るよ。サンドウィッチはテーブルに置いといて。カラオケは今から?」

 現在四時五十分。待ち合わせ時間は八時だが、出来るだけ彼女の傍に居たくない。

「うん。じゃあ行ってくる」

「行ってらっしゃい。適当に御飯食べとくから、俺の分は気にしなくていいよ」

 その台詞に忠実に従った。


 暫くドライブしてから友達を車に乗せて、カラオケで十時間程歌って家に帰った。彼女はソファで寝ていたが、すぐに目を覚ました。

「おかえり。免許証返してくれる?」

「……質問。行方不明って聞いたけど」

「ガセネタだよ」

 まあ、殺して死ぬ様な女じゃない。免許証を返して、または貸して、私はそのまま眠った。

 

「おはよ、真サン。お休み中だろうけど俺もう帰るから」

 早朝四時半に叩き起こされた。

「……免許証」

「返して貰ったよ。カラオケはいいんだけどさ、ネカフェの会員カードとかポイントカードとかある? 全部頂戴」

 バッグから財布を取り出し、差し出す。彼女はカードを数枚引き抜き、自分の財布に収めた。それから自分の財布から数枚紙幣を取り出し、私の財布に入れた。

「はいお疲れさん。今月はまた来るかもだから、掃除とかはちゃんとしててね。じゃあね」

 ドアが閉まる音がする。寝直す前に、財布に入った金額を確認する。

「……最近あの人稼いでるのかな」

 十二万はちょい多い気がする。けど多い分には問題ないし、いいや。

 

 私は同姓同名の六歳年下の少女に使役されている。逆らえない理由は二つ。

 一つは、情けない事にこうやって貰える金が有難いからだ。

次はおそらくside C です。

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