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今まで色々な事があった……と回想する程長くも濃くもない人生だが、まあ最近は色々あった方だろう。元クラスメイトが何かヤバくなってたり、少しだけ誰かの話に出た事のある殺人鬼と話したり。前者は放置だが後者はそうはいかない。こう、好奇心的な問題故。
現在の主な住居であるとあるネットカフェの023室で、最近聞いた面白そうなネタを検索する。曰く、『ネットにとある反MRS思想の宗教のサイトがある』そうで。まあ宗教、というのは自称と俗称であって、法的には認められていない。違法な事もするらしいし。
幾つかのキーワードを組み合わせて、検索結果を三十件程スルーし、目当てのサイトに辿り着く。地味に面倒。
「──何だコレ。エロウサフルム? ウロウシャフリュウム?」
読み方は組み合わせによっては更に沢山あるのだが。脳内で様々な仏教用語とか二字熟語とか四字熟語とかを検索するが、ヒットなし。パソコンの辞書にもないから、造語かな。
サイトの内容は宗教無関係なイラスト系。あんま好きな絵柄ではない。
ようし、裏サイト探すぞー、とか気合い入れたのに隠しリンク一個だけだった。Tabキーとentarキーで一発。マジかよ。まあ凝り過ぎるとお年寄りが辛いのかもしれない。この後IDとパスワードを入力しないと裏サイトには行けないみたいだし。普通は此処からが本番なのだろうが、俺の場合は知り合いに情報屋が居るので問題ない。軽く数字とか打ち込んで、『会員031』としてサイトを流し読みする。宗教系で会員って言うのか。いや、問題はないけど。主な活動内容は殺人症の撲滅で、具体的な方法は怪しい人攫って血液検査して殺人症だったら殺す、という物騒なモノである。仕事報告を見る。あ、コレ母親だ。他にも懐かしい顔がちらほら。
ネットカフェを後にする。殺し屋さんに、仕事を依頼しよう。
「エロウサフルム教?」
「いや、読み方分かんないんですけど。反殺人症思想の宗教だそうで」
「んー……。あ、ウルザブルン教かな」
そう言うと携帯電話を開き、先程見たイラストサイトのトップページを此方に向けてきた。
「コレだよね?」
「ええ。……ウルザブルンって読めませんよね、コレ」
得弄砂布流無って。全部無理がある。『無』で『ん』は一番非道い。あんまりだ。
「読めない読めない。意味分かんないしねー」
「ま、漢字は完全に当て字ですよね」
特に洗浄効果なさそうだし。
「で、訊きたい事ってそれだけ?」
「いえ、もう少し。知り合いに殺人鬼とか居ません?」
「数人居るけど」
世も末だ。
「ええと、本名かは知らないんですけど、トミナって人知ってます?」
「茶髪の男なら知ってる」
「じゃあ次はお願いというか依頼です。その人殺そうとしてくれません?」
「いいよ。……って言いたいけどさ、殺そうとするって何?」
「一発だけでって事です。それで死ぬか、俺みたいに避けるか、掠る程度だったかってのが知りたいので」
「……ふぅん、いいよ。それさ、殺していいって事だよね?」
「ええ、勿論。……あ、幾らくらいですかね」
「殺せたら頂戴。……あー出来れば前払いで御心ばかり」
「二十万で大丈夫です?」
「君はもっとお金を大事にしなさい。家出少女が提案する額じゃねェだろ、それ。……所謂、スリ?」
「いえいえ。合意の元頂いております」
「あんま詳しく聞きたくないなぁ、それ」
いや、大した事ではないんですけどね。
「興味本位で訊くんだけど、ここ数日はずっとネットカフェだった?」また訊くか。
「ええ。あ、でも今日と明日はお金を大事にする為に女の家で寝てきます」
「……俺は羨ましがればいいのかな」
「異性愛者ですけどね、俺」
「あー……性自認は?」
「一応女です」
言い方の問題ってだけである。
結局前払い金は二万円になった。吉沢さん家を後にして、公衆電話に向かった。
一応事前に言っとかないと、ねェ。
とうとう一話で落ちてないのは、次に続くからです。




