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長期保管品のためご了承ください  作者: 加納安


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2/11

2、長期保管品です

 清(せい)ちゃんの家を出たら、むわっと暑い空気にさらされる。エアコンの涼しさを享受してた後だと、この温度差はつらい。

 駐車場を通り過ぎて隣、おばーちゃんの店には裏口から入ることになった。

 頼りないぐらい小さな鍵、すぐにぶっ壊されそうな扉。大丈夫なの? と思うセキュリティ。けど、昔ながらのお店だとこんなものなのかな。


「電気これだから」


 裏から入ってすぐの壁にある、たくさんのスイッチのいくつかを、清ちゃんは押しながら説明してくれた。

 明かりがついて、店の中が照らされる。雑然としてる。きれいな店、とはとても言えない。

 古いにおいがしそうな、実際にしてるかもな……そんなどんよりとした雰囲気。

 私の記憶の中にあるこの店は、もうちょっときれいだった。ただ、そのころからなんとなく薄暗かったし、物はごちゃごちゃしてた印象。街にある全国展開してる大きな手芸屋さんの、明るさとか、清潔さとか、わかりやすさとかはここにない。


「エアコンが壊れててさー、動かないんだよなー。扇風機しかない」


 天井近く、高い位置の壁に取り付けられた扇風機を強で首振り。それが今この店でできる最大の「涼」だった。正直あんまり涼しくはないけど、ないよりはまし。


「うちの家族が、必要なものはもう取ってったから。レジの中も空っぽだし。だからあとは捨てるものだけ」


 やっぱ現金は回収するよね、と、当たり前のことを思いつつ、清ちゃんの最後の言葉を私も繰り返す。


「捨てる……」


 私は改めて、店の中を見渡した。ほこりは被ってるけど、商品棚にはいろんな商品が並んだままだ。これを全部処分する……って、え、もったいなくない?

 近くにある棚の引き出しを引いてみたら、いろんな色のミシン糸が入っている。その下の引き出しも。その下の引き出しも。その下の引き出しも……。色によっては欠品になってるけど、何本も残ってるものもある。おばーちゃんがお店やってたとき、お客さんに売ってたものだから、ここにあるのは全部、未開封の未使用品。

 私は引き出しを閉めて、ため息をつく。きっと、ほかの棚の中もこんな感じなんだろう。


「もったいなさすぎる」


 心の底からわき出た私の言葉に、清ちゃんが小さくうなずいた。


「だから、欲しいもん全部持ってって。ばーちゃんからの遺言……遺言っていうほどにはちゃんとしてないやつなんだけど。お願い? ばーちゃんが、店のものは家族と、あと美裕(みひろ)にもらってほしいってずっと言ってたから」


 そこで私はやっぱり、浮かんだ疑問を尋ねた。


「だから、どうして私……?」


 おばーちゃんが私のことを気に入ってくれてた、っていうのはさっき聞いた。だけど、どうして気に入ってくれてたのかがぜんぜんわからない。

 ただの近所の、孫の幼なじみ……だって、そういう関係の人間は、私以外にもいっぱいいるのに。

 すると、清ちゃんは甚平の前立てをつまんで、扇ぐようにしながら言った。


「昔さー、だいぶこどものとき。小学校低学年ぐらい? そのときに友達みんなでこの店、遊びに来たことがあって。そのときは、この店、駄菓子とかおもちゃも売ってて。ばーちゃん、一緒にいた皆にさあ、なんでも好きなのひとつ持っていけって言ったんだけど……美裕、覚えてる?」


 それはもう、ずっとずっと、思い出すこともなかったような昔のこと。だけど、話を聞けば、じわりと記憶がよみがえる。

 当時は年の差も性別もあんまり気にすることなく、近所のこども同士、自由に集まって遊んでた。その輪の中に清ちゃんも私も一緒にいたことも何回かあった。


「で、ほかの皆はお菓子とか? あと、くじ引きの景品のおもちゃとか選んで。ばーちゃんも、にこにこ、持ってけーって、くれたんだけど。美裕はさあ、何選んだか、覚えてる?」


 私は「う」と一瞬うろたえる。ふだんは思い出さない記憶の奥。なんなら、コスプレの記憶の近く、できればあまり思い出したくないゾーンに、その記憶はあった。


「美裕さあ、おもちゃの指輪がずらっと並んだ箱を選んで、箱を丸ごと、これでひとつ! って、ばーちゃんからもらってったんだよな」


 清ちゃんが思い出したように、くくくと笑った。あんたも覚えてんのかい。忘れろや! と思うけど。私もくっきりはっきり思い出してしまった。

 私は欲望を隠せないこどもだった。欲しいものがあれば突っ走る。でもこどもってそういうものじゃない? 私だけ?

 だから、欲しいものをなんでもと言われて、真っ先にこども心に思いついたのが「ふだんお小遣いじゃ買えないもの」だ。おもちゃの指輪はひとつでも、一日分のおやつ代になってしまう。おやつが食べたければ指輪は買えない。そのぐらい特別なものだった。その指輪がたくさん刺さった指輪ケースごとひとつだと言い張れば、と、当時の私の欲望は悪知恵を働かせて、箱ごともらってしまったのだ。

 そのあと家に帰って親に報告したらめちゃくちゃ怒られたから、もしかしたら親からおばーちゃんにお詫びとかしたかもしれない。

 恥ずかしすぎる。


「ばーちゃんさあ、あれがめちゃくちゃおもしろかったらしくて。年に何回かは話してたもん、美裕のこと。美裕ちゃんは大物だ、あれぐらい素直じゃないとだめだ。私はあの子が気に入ってる……って」


 おばーちゃん、忘れてよ。忘れてよそんなこと。

 私は店内の暑さと恥ずかしさで、体中から汗がだらだら流れるのを感じた。


「だから、そういうわけで。美裕はばーちゃんのお気に入りだから。この店、好きにしていいわけ。ばーちゃんの頼みだと思って、何でも好きなもん持っていって」


 清ちゃんはあっけらかんと、私にそう言った。きっと清ちゃんは、このお店のものには、何の思い入れもないんだろう。

 店に残っているのは新品だけどほこりをかぶった品物ばかり。がらくたと言われたらそうかもしれない。

 けど、黒歴史につながるとはいえ、手芸をそれなりに数年たしなんだ私からしてみたら、この店に残っているあれもこれもが……ほんと、処分するには惜しすぎるのだ。

 でも、私のひとり暮らしの部屋には持って行っても置くスペースもないし。実家の部屋は半分物置になってるし。そして私自身、すぐになにかを作るとは考えられないし。

 私はぐるぐると考えて、ぎりりと歯をかみしめる。


「でも、私、こんなに全部は使い切れないよ」


 素直な感想だったんだけど、清ちゃんはあはは、と横で笑った。


「全部持ってくつもりなのが、さすがだよな」


 ん? それは褒め言葉? 私はちょっと疑問に思いながらも、今の自分の気持ちを包み隠さず伝えることにする。


「遠慮して、使い切れる分だけとか、私が選べるわけないから。ねえ、見てよこれ、ほこりかぶってるけど、ぜんぜん使えるよ。中、きれいだよ。……ああ、色の淡い糸は、ちょっとシミできちゃってるかもだけど……」


 そばの棚に置かれてたミシン糸を手に取って、清ちゃんの顔に突きつける。けど、彼はやっぱり、なーんにも興味がないみたいな態度だ。


「俺には価値がわかんねーから」


 清ちゃんは来月、業者がここに入って、きれいさっぱり不用品を処分しても、それで悔いはないんだろう。

 こうやってもし、私も知ることがなければ、ただ静かに井芹(いせり)手芸店に残ったものが片付けられても、きっと何も思わなかった。それが残された遺族の意志ならば。

 けど、おばーちゃんは私を覚えててくれた。忘れてほしい記憶ではあるけど、覚えててくれた。縁があったと言えばいいんだろうか。そしておばーちゃんの残した言葉を、清ちゃんも私に伝えてくれた。だったら、私にできることは、やるべきなんじゃないだろうか。

 なんだか不思議な使命感がわいてきた。私はこの店に残ってるものを、なんとかするべきだ。

 私は一歩、清ちゃんに近づいて、尋ねた。


「ねえこれ、売ってもいい?」


 私の質問に、清ちゃんはちょっと首をかしげてる。


「え? 店開けんの?」


 私はその言葉に、ゆるく頭を横に振る。


「そうじゃなくて。それだといろいろ許可とかいるんだよね? でもこれは、家にある不用品を売るってことで……フリマサイトで」


 そもそも、まだ使えるもったいない品とはいえ、だいぶ汚れてるのも事実。ふつうにお店を開けたとしても、お客さんに買ってもらえる気はしない。しかも、この近所の人に売るだけだと、どれだけ需要があるのかわからない。というか、需要がないから、このお店にこうやって在庫が残ってる……そういうことなんじゃないのかな。

 フリマサイトならお客さんは世界中にいるし。けっこう訳アリ商品でも、ちゃんと説明したら売れるって聞いたことがある。

 清ちゃんも私の考えに、ふーん、と感心するような声を上げた。


「ネットで売るやつ? 美裕、やってんだ?」


「やったことないけど、友達はやってたから、ちょっと知ってる。漫画とか売るの、見せてもらったりした」


 フリマサイトのアカウント自体は私も持っている。やってる友達が友達を誘うとポイントがもらえるからと誘われて、それで登録したのだ。使ったことはないけど。


「悪の温床、転売ヤーとか聞くやつ」


 清ちゃんの言うフリマサイトのイメージに、私は苦笑いを返す。


「悪いイメージしかないんだね。でもたぶん、そういうのは一握りでふつうに便利に不用品売ってる人のほうが多いよ……たぶん」


 少なくとも、私の友達はトラブルもなくぼったくることもなく使ってたもんな。

 すると、清ちゃんは大きくうなずいた。


「いいよ、売ってみれば? 俺は……あんまり、売れるとは思わないけど」


 清ちゃんの言い方は、ほんとに、この店にあるものなんか何の価値もないって、そう言ってるみたいにも聞こえた。私はそれがちょっと、悔しかった。

 おばーちゃんの店だよ? おばーちゃんが遺したものだよ? 清ちゃんの態度はあまりにもさみしい。


「ほんとに売るよ?」


 私は覚悟を決めて、彼に宣言する。まるで喧嘩を売ってるみたいな口調になったけど、清ちゃんは逆に楽しそうに、口角を上げた。


「まかせる」


「やった」


 私は思わず笑顔になっていた。もったいなさすぎるここにあるものを、私が助けていいって言われたみたいで。

 清ちゃんは話はまとまったとばかりに、首振りの扇風機を追いかけるように動きながら言う。


「ここでずっと作業すんのも地獄だし。俺んちのさっきの和室、好きに使っていいよ。もうばーちゃんに会いに来る人もいないと思うから。あの部屋だったらエアコン使えるし。あ、俺んちのWiFiのパスワードも教えるから」


「ありがとう」


 そっか。この店のものを売る、って決めたはいいけど、そういうことは全然考えてなかった。

 確かに、この極暑な環境で作業をするのは厳しすぎる。家に持ち帰るのも大変だし、すぐお隣の清ちゃんの家を使わせてもらえるなら、それはもう本当にありがたい申し出だった。

 ……でも、迷惑じゃないのかな?

 一瞬私の頭によぎった不安を、清ちゃんはあっさり拭ってくれる。


「俺もだいたい毎日家にいるから。いつでも使って大丈夫」


 あまりにも都合よすぎる条件で、私はつい、尋ねてしまう。


「てか、清ちゃんってさあ、何の仕事してんの? 在宅? てか働いてんの?」


 高校を出てから、進学したとは聞いていない。ここの隣の家でおばーちゃんと暮らしてて……今はひとり暮らしになってる。それしか知らない。

 私の質問に、清ちゃんがまた、にやりと笑う。


「気になる?」


「気になる」


 即答したら、清ちゃんはもったいぶるように答えた。


「……また今度教えてやる」


 そしてはぐらかした答えを遠ざけるみたいに、代わりに、私の手のひらに軽くて小さな鍵をのせた。それはこの店の、裏口の鍵。


「鍵、美裕に預けとく」


 これは絶対なくせないやつだ。私はうなずいて、大事にポシェットの中にしまった。


「好きなときに店入って、好きなだけ見ていいから。あと、このへんのきれいそうな段ボール箱とか、ポリ袋とかも、荷物運ぶのに使って」


「ありがとう」


 何から何までありがたい。もしかしたら私がふつうに、店の中のもの全部自宅に持ち帰るって言っても、この人、驚きもしないんだろうな。


「今日は初日だし。暑いし。あんまり無理すんなよ」


「うん。とりあえず何があるかざっと物色させてもらうよ」


「そうして」


 そして清ちゃんは、お先にとばかりに、店から出て行った。

 私はおばーちゃんの店にひとり残された。入り口のシャッターが閉まってるからか、店の明かりをつけてても薄暗いし。ひとりになるとちょっとだけ、不安のような、そんな気持ちもわいてきた。

 だけど、ここにあるものは、全部私が好きにしていいんだから。お宝を探そう。ひとつでも、捨てられるものを減らそう。

 とはいえ、フリマサイトで販売するのも、準備が必要で、その手間を考えたら多少は儲けたくもなる。いや、儲けるとか考えちゃだめなのかな。でも考えるよな。

 まず選ぶのは、確実に売れそうなものにしよう。

 私の頭の中で、感情が切り替わる。

 もったいない、なんとかしたい、捨てたくない。そこに、せっかくなら売って儲けてやろうという色がついた。

 どうせ私はこういう奴だよね。欲張りで……、と、一瞬落ち込みかけて、だけど、おばーちゃんが言ってたという言葉を思い出す。

 おばーちゃんは私のこういうところを気に入ってくれたって言ってたし。きっとこんなことを考えるのも、悪いことじゃないんだよな。

 私は開き直る気持ちで、ミシン糸がずらりと並ぶ棚に向き直る。

 まずはここから、やっちゃおう。


 *


「あついー」


 私は段ボール箱――推定100サイズの箱にぎっしりとミシン糸を詰めたものを、店から清ちゃんの家に運んだ。

 久しぶりにしたメイクも、もうどろっどろに流れてるし、清ちゃんからもらったお茶のペットボトルの中身も半分以上なくなったし、すでに常温。

 へとへとになった私が戻ってきたのに気づいて、清ちゃんが二階から下りてくる気配。

 清ちゃんはエアコンの効いた部屋にいたみたいで、すっかり涼しい顔だ。


「運ぶもの、まだあんの? 手伝おっか?」


 清ちゃんの申し出に、私は頭を横に振る。


「今日はこれだけ」


「そっか」


 清ちゃんは玄関で私の持ってきた箱を引き取ると、和室に運び入れてくれた。

 元気があるなら仕分けしようと思ったけど、あまりにもドロドロで今日はもう疲れてしまった。

 私は清ちゃんに尋ねる。


「また明日来ていい?」


「どうぞ」


「ほんとにいつでも大丈夫?」


「いいよ。玄関開けっぱなしだし。勝手に入ってくれて」


 防犯上どうなのと思うけど、このあたりではこれが普通だったりする。


「じゃあ、一応メッセージ送って、それから上がるときはでっかい声で宣言してから、入るから」


 私の申し出に、清ちゃんはちょっと目を見開いて、それからくしゃっと顔をゆがめて、笑った。


「そうして」


 私は飲みかけのペットボトルのお茶を飲みながら、我が家に帰る。くたくたの体に、眩しい西日がとてもきつかった。


 *


 帰宅してすぐにお風呂に入った。おばーちゃんの店で作業してるときは薄暗さのせいで気づかなかったけど、手は真っ黒だし、ロングスカートも裾がかなり汚れてた。

 明日からはひらひらしてない服で行かなきゃな。

 ぐちゃぐちゃのメイクを落として、体中洗って、湯船につかる。

 なんか、めちゃくちゃ、ほっとする。

 これが労働の充実感……。

 久しぶりに、お風呂って気持ちいいなって思ってる。最近はもう、仕方なくシャワー浴びてるだけだったから……。

 一瞬、頭の中に嫌なことがよぎりそうになって、私は慌てて湯船から出た。

 よけいなことを考えてる暇はないんだ。私は夏休みの間に、おばーちゃんに託された商品たちを、できる限り換金するのだ。


 *


 私は夕食のときに、両親に今日の清ちゃんちでのできごとを話した。

 閉店した井芹手芸店の在庫を片付ける手伝いをすることになったことを、両親は不思議がりながらも、いいんじゃない? と言ってくれた。


「まー、とにかくもったいないよねえ、全部処分となると」


 母もおばーちゃんの店を思い出すように呟いてた。


「お母さんも裁縫道具、なんか使うならもらってくるよ」


 けど、母は私の申し出に、うーんと少し首をかしげる。すぐには思いつかないらしい。


「縫物なんかほとんどしないし……ちょっとボタンつけたりするにしても、黒とか白とかの糸があれば間に合うから」


「だよねえ。趣味で何か作るんじゃないと、使いきれないよね」


 私もコスプレをやめてから、手芸からすっかり遠ざかってる。私の黒歴史を支えてくれたミシンも、ひとり暮らしの家には持っていかずに、今もこの家に眠っている。

 すると父が、思い出したように言った。


「井芹さん、美裕の指輪事件覚えてくれてたんだな」


「やめてよ、事件とか言うの」


 とっさに私は言い返したけど、横から母もしみじみと言う。


「事件だっだよ、もー、盗んできたんじゃないかって私もお父さんも不安になって。井芹さんちに電話して、おばーちゃんと話して、おばーちゃんが、ほんとにあんたに全部くれたって聞いて、もう、こんな遠慮のない子に育てたとか叱られるつもりだったのに、おばーちゃん、そんぐらい図太くないとやってけないし、素直に育っていい子だって言ってくれたんだから」


「でっかい人だったよなあ、井芹さん」


「ね。ほんと、いいおばーちゃんだった」


 そんなふうに両親が言うものだから、私もなんだかしんみりしてしまう。


「もっと元気なときに、会いに行けばよかった」


 少なくとも私は、数年前までは手芸店に行く用事があったんだ。だけど、材料を買うのは百円ショップとか、街の大きな手芸屋さんとか……。近所にあるおばーちゃんの店には立ち寄らなかった。だからいつからあの店が閉まってたのかも、おばーちゃんが施設に入ってたとか、そんなことも知らなかった。

 それなのにおばーちゃんは、私のことを覚えててくれて、今こうやって、残ったものを託してくれている。


「おばーちゃんも、美裕が店のもの片付けてくれたら、それでうれしいと思うよ」


「清助(せいすけ)くんも助かるだろうし。ひとりでいろいろ大変そうだもんな」


「そうよねえ。美裕、清ちゃんが困ってたら助けてあげなさいよ」


「うん」


 そううなずいたものの、私はいまいちまだ、ピンとこない。今日久々に再会した清ちゃんは、つかみどころがなくて正体不明、飄々としてたし……。

 私が彼を助けることができる、なんてことになるのかどうかは、まだよくわからなかった。


 *


 寝る前、眠れなくて、ぐるぐる考えて、どうでもいい動画見て、深夜まで。それで昼近くまで起きられなくて、という今までの私はもういない。

 今日からは忙しいのだ。そんなことに時間を使っている暇はない。

 おばーちゃんちを物色して、すぐに売れそうなものは目星がついた。それをいくらで売るかとか、どんな組み合わせで売るかとか……考えることはたくさんある。

 フリマサイトのアカウントもちゃんと使えるようにしておこう。未設定だった項目を埋めて、本人確認。荷物の送り方も調べてみたり。

 参考になりそうな梱包動画を見ているうちに、私は寝落ちしていた。

 今日のできごとが相当楽しかったのか。私は夢の中でもおばーちゃんの店の中を物色していた。

 そんな私を遠くから、清ちゃんは見て笑ってた――。

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