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異世界放送部〜俺たちが異世界に届ける放送〜  作者: 雲李庵


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8/9

異世界放送部始動!

「こいつが、機械に詳しいやつだ」


 マルティーユが連れてきたエルフの男は、塔を見た瞬間に足を止めた。


「俺はグラノールだ」


 それだけ言って、彼は塔を見上げたまま動かない。


「これ、直せるの?」


 柚波が遠慮なく聞いた。


 グラノールは首を横に振る。


「直すんじゃない。繋ぐ」


「繋ぐって何だよ」


 俺が思わず口を挟むと、グラノールはようやくこっちを見る。


「中は生きている。外が死んでいるだけだ」


 柚波が一歩前に出る。


「じゃあ、使えるってこと?」


「条件次第だ」


 グラノールは短く答えると、もう塔に手をかけていた。


「今日中にやるぞ」


 その一言で、空気が一気に変わる。


 作業は想像以上に速かった。


 塔の表面にこびりついたコケが削られていくたびに、金属の構造が姿を現す。


 それはただの石塔じゃなかった。


 明らかに人工的な“装置”だった。


「これ、やっぱり放送機器だ」


 俺がそう言うと、健二が眉を上げる。


「放送機器?」


「音を遠くに飛ばすための仕組みだ。構造がそのままだ」


 俺が説明すると、柚波が嬉しそうに笑う。


「やっぱり拓海、そういうの強いじゃん」


「強いとかじゃなくて、分かるだけだ」


 そう返すと、グラノールが小さく頷いた。


「理解が早いな」


 問題はそこじゃなかった。


 俺は塔の内部を見ながら言う。


「これ、スピーカーはある。でも入力がない」


「入力?」


 柚波が首をかしげる。


「声を入れる部分だ。マイクとか、音を拾う場所」


 健二が腕を組む。


「じゃあ、動かないのか?」


「そのままじゃ無理だな」


 その瞬間、柚波が当然みたいに言った。


「作ればいいじゃん」


「簡単に言うな」


 俺が即答すると、柚波は笑う。


「でもさ、グラノールいるし、拓海いるし、なんとかなるでしょ?」


「俺は放送部員だぞ」


「知ってる」


「設計者じゃない」


「でも機械担当でしょ?」


 その一言で、妙に言い返せなくなった。


 健二が少し笑う。


「面白い組み合わせだな、お前ら」


 そのまま作業は続いた。


 グラノールが構造を調整し、俺が仕組みを説明し、健二が周囲の情報を整理する。


 柚波は少し離れたところで、紙に何かを書いていた。


「何書いてるんだ?」


 俺が聞くと、柚波は顔を上げる。


「台本」


「台本?」


「放送するやつ」


 俺は思わずため息をつく。


「もうそこまで決めてるのかよ」


 柚波は当たり前みたいに言う。


「柚波。台本に組み込んで欲しい事がある」


 俺は柚波が放送をすると言った時に思い浮かんでいた案を伝えた。

 それは、俺たちが放送を聴いた人たちに情報を提供を呼びかけるだけではなく、こちら側も普段のエルフやそれ以外の種族に纏わる情報を提供する事だ。

 これには、信頼や好感を得るという部分も強いが、もう一つは、放送を聞く以上有意義で楽しい物にしたいという考えがあった。


「それはいいアイデアだね! でもー、肝心の情報なくない? 」


 その時、健二が口を開いた。


「情報ならあるぞ」


「あるのか?」


 俺が聞くと、健二は頷く。


「俺は元新聞記者ってのを忘れたか? 最近、この周辺で“化け物らしき影”を見たって話が出てる」


 柚波がすぐに反応する。


「化け物?」


「確証はない。噂だ。だが、凶暴性のある物とだけ聞いたな」


 俺は塔を見上げる。


「でも、材料にはなる」


 柚波が笑う。


「じゃあそれ、入れよ」


 グラノールが最後の調整を終える。


「繋がった」


 その瞬間、塔の内部で低い振動音が鳴った。


 空気が震える。


「……動いてる」


 健二が呟く。


 俺は機器を見つめた。


「完全じゃない。でも、いける」


 柚波が一歩前に出る。


「じゃあ、始めるね」


「本気か?」


 俺が聞くと、柚波は振り返らずに言う。


「本気だよ」


 深く息を吸う音が聞こえた。


「こちら、異世界放送部です」


 その声が塔を通して広がっていく。


「もし、どこかでこの声が聞こえていたら」


「あなたが人間なら」


 柚波の声は揺れなかった。


「私たちはここにいます」


 健二が小さく笑う。


「いい始まりだな」


 だがその直後だった。


 ノイズの中に、確かに“何か別の音”が混ざった。


 一瞬だけ。


「今の……」


 俺が思わず言う。


 柚波が振り返る。


「聞こえたよね?」


 健二の表情が変わる。


「いるな」


 塔はまだ鳴っている。


 誰かに向かって。


 確実に“届き始めている”

 俺たちの放送は確かに伝わっている。俺は小さいながらも手応えを感じていた。


 ここに、異世界放送部の始動だ。

ちょっとメカニックや科学のことが辻褄が合わない部分あるかもしれませんが、創作物として多めに見てくださいませ。

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