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異世界放送部〜俺たちが異世界に届ける放送〜  作者: 雲李庵


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7/8

声を届ける

投稿頻度少し上げます

 その夜、俺たちはマルティーユの家で食事をしていた。


 異世界に来てからの初日と違って、今日はちゃんと腹が減っている。


 焼いた肉とスープと、固いパンみたいなもの。


 見た目は違うけど、味はそこまで悪くない。だが、食感が現実世界とはかなり違っていた。パンに関してはフランスパンよりも固い。


「意外と普通だな」


 俺が言うと、柚波が横で頷いた。


「ね、もっとヤバいの想像してた」


「ヤバいとは何だ」


 マルティーユがスープのおかわりを注ぎながら、首をかしげる。


「いや、異世界ってさ」


「異世界?」


「気にしないでいいやつ」


 柚波が笑って流した。俺たちからこの世界は異世界でも、マルティーユ達からは立派な現実世界であるという認識を忘れてしまう。


 そのまま食事をしながら、健二が今日集めた情報を話し始めた。


「正直なところ、これまでも大した収穫はないな」


 健二は肩をすくめる。


「他に人間がいるって話は出なかった」


「そっか……」


 柚波の声が少し落ちる。


「ただな」


 健二は続けた。


「昔はもっと種族同士の行き来があったらしい」


「昔?」


 俺が聞く。


「ああ。今よりずっと前の話だ」


 その言葉で、少し空気が変わった。


「遺跡とか、用途不明の建物もあるって話だ」


 俺は無意識にさっきまで見ていた機械を思い出していた。


 あれも、その一つなのかもしれない。


「じゃあ、その遺跡や建物を調べれば帰る方法を見つける事が出来るのか! 」


 テンションが高くなる俺に対して健二は冷静な表情だった。


「各地にあるんだぞ。探すだけで骨が折れる」


 沈黙が続く。


 その空気を破ったのは柚波だった。


「ねぇねぇ」


 軽いトーンだった。


 でも目は真剣だった。


「ちょっと....思ってたんだけど」


「うん?」


「探しに行くの、効率悪くない?」


「は?」


 俺が即答する。


「いやいや、どういうことだよ」


 柚波はパンをかじりながら続ける。


「だってさ、他にも人間いるかもしれないんでしょ?」


「まあ……可能性はあるけどな」


 健二が答える。


「だったらさ」


 柚波は顔を上げた。


「向こうからも来てもらえばよくない?」


「どうやって?」


 俺が聞く。


 柚波は当然みたいな顔をした。


「拓海。私たちの仕事、忘れちゃった? 」


「ま、まさか....」


「放送か!?」


 一瞬回りが静まり返る。


 そして、すぐにマルティーユが聞き返す。


「放、送? 」


「声を遠くに届けるやつ」


 柚波がまたマルティーユに説明する。


「それで呼ぶの」


「呼ぶって……」


 俺は頭を押さえた。


「そんな都合よく人間来るわけないだろ」


「それだけじゃなくて、エルフや他の種族からも情報を提供してくれるかもしれないし。他の人間を見たとか」


「そんな上手くいかないだろ」


 否定する俺に柚波は食い下がる。


「何もしないよりマシじゃない?」


「それはそうだけど」


「じゃあ決まり」


「勝手に決めるな」


 健二が苦笑する。


「面白い発想だな」


「でしょ?私は放送部の部長だから」


 柚波は少し得意げだ。


 でも俺は現実的な問題を思い出す。


「柚波、よく考えろ冷静になって。まず機械がない」


「あるじゃん」


「どこにだよ」


 柚波は親指で外を指した。


「マルティーユの家にあったやつ」


 俺は固まった。


「いや、あれ動かないだろ」


「直せばいいじゃん」


「簡単に言うな」


「拓海がいるじゃん」


「俺はただの放送部だぞ」


「うん」


「エンジニアじゃない」


「でも機械担当でしょ?」


「……」


 マルティーユが少し首をかしげる。


「お前たちは面白い会話をするな」


 健二が笑った。


「まあ、悪くないアイデアだと思うぞ」


「健二まで?」


 俺は頭を抱える。


「現実的じゃないって」


 その時だった。


「設備ならある」


 マルティーユが静かに言った。


「は?」


 俺たちは同時に顔を上げた。


「村の中央に塔がある」


「塔?」


「昔からある聖塔だ」


 長老も頷く。


「我らが守ってきたものだ」


「明日、見せよう」



 翌日。



 村の中央に立つその塔を見た瞬間、俺は言葉を失った。


 石造りの巨大な塔。


 しかしその上部には、明らかに人工的な金属構造が埋め込まれていた。


 俺は無意識に近づく。


 苔を払う。


 見覚えのある網状の構造。


 振動板のような形。


「……これ」


 柚波が後ろから覗き込む。


「何それ?」


 俺は答えられなかった。


 喉が詰まる。


 だが確信だけはあった。


「これ……」


 ゆっくりと息を吐く。


「スピーカーだ」


 その瞬間、柚波の目が輝いた。


「じゃあさ」


 柚波は笑った。


「いけるじゃん」


 俺は何も言えなかった。


 ただ、その塔を見上げていた。

とうとう異世界放送部スタート!

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