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異世界放送部〜俺たちが異世界に届ける放送〜  作者: 雲李庵


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6/6

古の機器

 隣の村で新開 健二と出会った翌日。


 俺たちは再びエルフの森へ戻っていた。もちろん健二も一緒だ。


「ここのエルフの森はまた違うんだな〜。案内してくれよ」


 健二は森を見回しながら俺たちに言った。


「私たちも昨日来たばかりですけどね」


 柚波が苦笑する。


 エルフの森の中心部に到着すると、長老は健二を見て静かに頷いた。


「確かに人間だな」


「どうも」


 健二が軽く頭を下げる。

 新聞記者だったと言うだけあって、人との距離感が上手い。

 長老の懐に入り込み、上手い感じに渡り合っていた。長老も俺たちの時ほど不信感はないように見えた。



 一通り事情を説明し終えた頃だった。マルティーユが俺たちの方を見る。


「そうだ」


 何か思い出したように言った。


「帰ってきたら見てもらいたい物があった」


「見てもらいたい物?」


 俺が首を傾げる。


「来てくれ」



 案内されたのはマルティーユの家だった。


 木で作られた素朴な建物だ。


 中へ入ると、生活感のある空間が広がっている。置かれている家具も全て木製や葉で出来ている。


「奥だ」


 マルティーユは部屋の隅へ向かった。


 そこには茶色の布が被せられた大きな物体が置かれていた。


「これは?」


 柚波が尋ねる。


「昔から家にあったものだ」


 マルティーユは布を掴む。


 そして。


 バサッ。


 大きな布が取り払われた。


 目の前の光景に俺は息を止めた。


「……え?」


 そこにあったのは金属の塊だった。


 錆びている。


 ところどころコケも生えている。


 長い年月を感じさせる状態だ。


 だが。


 どこか見覚えがあった。


「拓海?」


 柚波が不思議そうな顔をする。


 俺は無意識にその機械へと近付いていた。


 震える手で機械に触れる。


 ボリュームつまみ。


 入力端子。


 スライダー。


 少し見えづらいが間違いない。


「そんな……」


 健二も驚いた顔をしていた。


「おい、まさか」


 俺は頷く。


「やはり....知っていたのか」


 マルティーユが聞く。


 俺は機械を見つめたまま答えた。


「知ってるどころじゃない」


 放送部に入ってからこれまで何度も触ってきた。柚波と共に放送する際の相棒ともいえる存在だった。


 型は古い。


 かなり古い。


 でも分かる。


 これは。


「放送設備だ」


 部屋が静まり返る。


「放送?」


 マルティーユが聞き返した。


「声や音を遠くへ届けるための機械です」


 柚波がマルティーユに分かりやすいように説明する。


「遠くへ……?」


 マルティーユは理解できないという顔をしていた。


 当然だ。


 この世界にラジオもテレビもない。


 だが俺には分かった。


 これは偶然じゃない。


 異世界の遺物なんかじゃない。


 人間が作った機械だ。


「これ、どこで手に入れたんだ?」


「手に入れたわけではない」


 マルティーユは首を振る。


「私の祖父の代からあった」


「祖父の代?」


「誰も使い方を知らない。ただの古い遺物だと思っていた」


 健二が腕を組む。


「おかしいな」


「何がです?」


 柚波が聞く。


「こんなものが存在するなら、この世界は俺たちが思ってるほど単純じゃない」


 その言葉に俺も同意だった。


 異世界。


 そう思っていた。


 だが。


 放送設備がある。


 それも俺が知っている形のまま。


 偶然にしては出来すぎている。この世界は俺たちが居た世界と限りなく近い文明をしていたのだ。


 俺は改めて機械を見つめた。


 錆びたパネル。


 割れたメーター。


 読めなくなった文字。


 それでも。


 確かにそこにあった。


 俺たちの世界の痕跡が。


「もしかしたら」


 健二が呟く。


「帰る手掛かりになるかもしれないな」


 その言葉に、柚波の表情が明るくなる。


 だが俺は機械から目を離せなかった。


 なぜこんな場所にあるのか。


 誰が作ったのか。


 そして。


 なぜ俺には見覚えがあるのか。


 その答えは、まだ誰にも分からなかった。

 だが、俺たちと同じようにこれまでも人間がこの異世界に暮らしていたという痕跡が見つかったのだ。これは大きな前進だ。

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