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異世界放送部〜俺たちが異世界に届ける放送〜  作者: 雲李庵


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9/9

放送の反響

 朝のエルフ村は、いつもより少しだけざわついていた。エルフたちが集まり会話をしている。


「なぁ、昨日のあれ聞いたか?」


「塔から声出てたやつだろ?」


 そんな会話が普通に飛び交ってる。


「……思ったより広がってるな」


 その様子を高台から見ている俺が言うと、柚波がパンをかじりながら頷いた。


「でしょ?」


 健二が少し笑う。


「噂になるのは早いな」


 柚波が振り向く。


「ねぇ、それってさ....」


「成功ってことじゃない?」


 俺はすぐに否定する。


「まだ一回だろ」


「でも“聞いた人がいる”のは事実じゃん」


 その言い方は妙に強かった。異世界に声を届けている者は誰もいなかったらしい。

 俺たちが放送を通して声を発信した事がエルフ達にとっては珍しかったようだ。


 昼前、村の広場では数人のエルフがマルティーユに話しかけている。


「昨日の音は何だった?」


「歌か?」


「言葉だった気がするぞ」


 数人のエルフ達の飛び交う声が聞こえる。そして、マルティーユがこっちを見る。


「お前たちの放送の話だ」


 柚波が少し嬉しそうに笑う。


「ほらね!」


 柚波は嬉しそうにマルティーユに駆け寄り、エルフ達とコミュニケーションを取り始める。


 俺はまだ半信半疑だった。遠くでその光景を眺めていた。


「ただ珍しいだけじゃないのか?」


 健二が横から言う。


「珍しいものは記憶に残る。彼らにとって珍しかったんだろうな」


 その後、塔の前に行くと、グラノールが機器を見て呟いた。


「音が返ってきてる....」


 俺が聞く。


「どういう意味だ?」


「どこかで共鳴している可能性がある。普通なら拡散だけして終わるからな」


 柚波が即座に食いつく。


「じゃ、じゃあ!! スピーカーは他にもあるってこと!?」


 グラノールは淡々と続ける。


「という事になる。だが、場所まだは特定できない」


 健二が頷く。


「最初のはそんなもんだろ」


 その夜。


 健二がふと話し始める。


「こういうのはな」


「最初の“1回目”が一番大事なんだ」


 柚波が聞く。


「なんで?」


 健二は少しだけ遠くを見る。


「世の中そういう物だ。何でも始まりが肝心だからな」


「ふーん、よく分からないなー」


 柚波は難しそうな表情をしていた。

 俺は健二の言葉を聞いて自分たちよりも十歳以上年上の言うことは説得力があると思った。


 柚波が紙を広げる。


「じゃあ次どうする?続ける....でしょ? 」


 俺は即答する。


「そりゃそうだ」


 健二が小さく笑う。


「もう止められないな」


 柚波はペンを手に取り次の台本を書き始めた。健二は今日仕入れたという情報を柚波に提供する。

 俺たちの明日の放送作りは既に始まっていた。


 その時、村の外から声がした。


「またやるのか?」


 振り向くと、エルフの一人が立っていた。身体は屈強で見るからにパワー系って雰囲気だ。


「昨日のやつ、悪くなかった」


 柚波が目を丸くする。


「え、聞いてたの?」


 エルフは頷く。


「意味は全部分からなかったが……」


「なんか良かった」


 その言葉で、柚波が一瞬黙る。


 そして小さく笑った。


「それで十分じゃん」


 健二がぽつりと言う。


「伝わるってのは、そういうことかもな」


 そして、エルフ達の中から、マルティーユが前に躍り出た。表情はいつも以上に真剣だった。


「お前たちの放送とやら、私も良かったと思った。手を貸したい。私に出来る事が....あるなら」


 俺と柚波は顔を見合わせて笑った。健二も腕を組んで満足そうに笑っている。

 放送という声がエルフ達に届き、散らばっているエルフ達と放送が一つの円になっていると思った。


 俺は外に出て塔を見つめる。


 まだ静かにそこにある。


 でももう、“ただの塔”じゃない気がしていた。


 柚波が言う。


「次、もっとちゃんとやろ。もっと、聞いた人が喜ぶような方法を」


 俺は頷く。


「……ああ」


 健二が最後に一言。


「放送ってのは、広がり始めたら早いぞ。新聞と同じでな」


「新聞と同じ? 」


 柚波が首を傾げる。


「気付いた頃には、自分が思っている以上に遠くまで届いてるもんだ」


 その言葉が、少しだけ重かった。俺たちが始めた異世界の放送は情報を集める以外の効果を発揮そうだと確信した。

異世界放送の反響よしです!

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