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異世界放送部〜俺たちが異世界に届ける放送〜  作者: 雲李庵


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2/6

最初の遭遇

 どこまでも草原が続いていた。歩き続けても変わらない景色が広がっていた。


 俺は思わず息を吐いた。


 さっきまで放送室にいたはずなのに、気が付けばこんな場所だ。どういう現象でこの世界に来てしまったのか分からない。


 空には巨大な影が横切っている。

 翼の生えた生物――ドラゴンだ。空想やフィクションで見たドラゴンが今俺たちの上を飛んでいる。


 はっきりと目に映る。これが夢じゃないことだけは分かってしまう光景だった。


「本当に……異世界なのかな」


 隣を歩く柚波が、不安そうに呟いた。


「少なくとも俺の知ってる大阪ではないな」


「そこは日本じゃないって言うところでしょ」


 こんな状況でも、柚波は少しだけ笑った。


 その笑顔に、少しだけ救われる。


 正直、俺だって余裕はない。柚波も笑ってくれているが不安なのは同じだろう。


 何が起きたのかも分からないまま、俺たちは草原を歩き続けていた。どこかに異世界から戻る答えを探すように。


「とりあえず、情報が少なすぎるな」


「だね」


 柚波はそう言うと、ポケットからメモ帳を取り出した。


「何してるんだ?」


「記録」


「記録?」


「こういうの、後で必要になるかもしれないでしょ」


 そう言って柚波はペンを走らせる。


『空にドラゴン確認』


『草原が広い』


『気温は春くらい』


『周囲に人影なし』


「……放送原稿みたいだな」


「放送部だしね」


 少しだけ、いつもの柚波に戻った気がした。


 だからこそ余計に、この状況が現実だと突きつけられる。


 しばらく歩いたその時だった。


 草むらの奥で、音がした。


 ガサッ、と乾いた音。


 俺は足を止める。


「……今の聞こえたか?」


「うん」


 柚波の声が一気に緊張を帯びる。


 次の瞬間、草むらから何かが飛び出してきた。


 小柄な人型。


 緑色の肌。


 手には棍棒。


 牙を剥き出しにしている。


「……ゴブリン」


 思わず口から出た。


 ゲームや映像で見たことがある形そのままだった。


 その一体がこちらを見て、ニヤリと笑う。


 そして――叫んだ。


「ギャギャッ!」


 その声を合図にしたように、草むらから次々と姿を現す。

 五体、十体……いや、それ以上かもしれない。ゴブリンの群れが俺たちの前を覆っている。


「……マジかよ」


 背中に冷たいものが走った。


 勝てるとか以前の問題だ。


 言葉が通じるような相手ではなさそうだ。逃げる事しか選択肢にはない。


「柚波、走れ!」


「うん!」


 二人で一気に駆け出した。


 背後から複数の足音が追ってくる。


 振り返る余裕はない。


 ただ必死に足を動かす。


 だが、相手の方が速い。


 距離が少しずつ縮まっていく。


「はぁ……っ、はぁ……!」


 柚波の息が荒くなる。そして、次の瞬間柚波は転んでしまった。俺は柚波の元に駆け寄って背中に背負う。


 俺も限界が近い。


 それでも止まるわけにはいかなかった。柚波を背負った俺は急いで走る。


「拓海ごめん。重いでしょ? こんな事になるなら、昨日ケーキ食べなきゃよかった」


「柚波、力抜いとけよ。その方が早く走れるから」


 柚波を背負いゴブリンから逃げる俺。


 そして――


 前方からも気配がした。


「っ……!」


 回り込まれていた。


 逃げ道がない。


 ゴブリンたちがじわじわと包囲を狭めてくる。


 完全に詰みだ。


 心臓が嫌な音を立てている。


 足が震える。


 柚波を降ろして俺は、一歩前に出た。


「柚波、下がれ」


「でも……!」


「いいから!」


 俺は柚波の前に立つ。


 何ができるわけでもない。


 それでも、背中だけは守るつもりだった。


 ゴブリンたちが一斉に動いた。


 棍棒が振り上げられる。


 その瞬間――


 空気を裂く音がした。


 ヒュンッ!


 矢だ。


 一本の矢が先頭のゴブリンの肩を貫いた。


「ギャアアッ!」


 悲鳴。


 さらに続けて矢が飛ぶ。


 正確に、次々とゴブリンを打ち抜いていく。


 包囲の一角が崩れた。


 ゴブリンたちは混乱し、距離を取る。


「な、何だ……?」


 俺は振り返った。


 そこに立っていたのは、一人の女性だった。


 銀色の髪。


 尖った耳。


 弓を構えたまま、こちらを見ている。


 人間じゃない。


 でも、どこかで見たことのある存在。


「無事ですか?」


 落ち着いた声だった。


 その一言で、張り詰めていたものが少しだけ緩む。


 俺と柚波は顔を見合わせた。


 そして同時に理解する。


 ――エルフだ。


 彼女は静かに弓を下ろしながら言った。


「こんな場所を武器も持たず歩くなんて……あなたたちは何者ですか?」


 俺は一瞬だけ言葉に詰まった。


 「お、俺たち、さっきまで放送部にいたんです」

ここから異世界の物語が始まります。

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― 新着の感想 ―
拓海さんかっこいい…d(˙꒳˙* ) 柚波ちゃんも可愛いですっ やっぱ逃げるシーンとか戦闘シーンはキャラクターの素が見えて大好きです! というかもう2人とも推しです…w
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