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異世界放送部〜俺たちが異世界に届ける放送〜  作者: 雲李庵


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1/6

放送そして異世界へ

 放送部。


 それは文化祭や体育祭で活躍し、昼の放送を担当し、時には全校朝礼の司会進行までこなす学校には欠かせない存在だ。


 だが、その実態を知る者は少ない。


 放送部の仕事は大きく二つ。


 声を届けるアナウンス担当と、それを支える機械担当だ。


 どちらか一方が欠ければ放送は成り立たない。


 そして俺――相馬拓海は、その機械担当だった。アナウンスと違い機械は目立たない。


 だが、放送部にとって機械の役割は大きく、音量の調整やミュージックをかけたりと。影からアナウンスを目立たせる、映像作品でいう演出部分だ。


「拓海ー、次の放送の原稿これでいいかな?」


 放送室の扉が勢いよく開いた。


 入ってきたのは放送部部長の北条柚波。


 肩まで伸びた髪を揺らしながら、手に持った原稿をひらひらと振る。


「んー……まあ問題ないんじゃないか」


「なんか適当じゃない?」


「俺は機械担当だからな」


「部員としての意見を求めてるの!」


 柚波は頬を膨らませた。


 放送部員は俺と柚波を含めて数人いるが、放課後前の校内放送はいつも俺たち二人が担当している。自分で言うのも何だが、顧問や教職員たちの信頼はかなり厚い。


 放送の時間が来ると柚波が話し、俺が機械を操作する。


 それがいつもの形だった。


 放送開始まで残り十分。


 俺はミキサー卓の電源を確認しながらヘッドホンを耳に当てた。


 その時だった。


 ――ザザッ。


 小さなノイズが聞こえた。


「……?」


 機材の不調か。


 古い設備だから珍しくはない。


 だが、何かがおかしい。


 ノイズの中に、声のようなものが混じっている。


 遠くから誰かが話しているような。


 そんな奇妙な音だった。


「どうしたの?」


 柚波が俺の肩越しに覗き込む。


「いや、ノイズが入ってる」


「また?」


「いつものとは違う」


 俺は音量を上げた。


 ザザッ……ザァァァ……


 ノイズが大きくなる。


 そしてその奥から。


 まるで誰かが囁くような声が聞こえた。


『――聞こえるか』


 思わず背筋が凍った。


「今の聞いたか?」


「え?」


「声だよ」


「何も聞こえなかったけど……」


 柚波が不思議そうな顔をする。


 聞き間違いか。


 そう思った次の瞬間。


 マイクの先端が淡く光った。


「拓海……?」


「触るな!」


 叫ぶより早く。放送室中のスピーカーが一斉に鳴り響いた。


 耳に突き刺すような轟音。


 眩しぐらいに白い光。


 そして視界が飲み込まれる。



 気が付くと。


 俺は草の上に倒れていた。


「いてて……」


 身体を起こす。


 見渡す限りの草原。


 学校どころか建物一つ見当たらない。


「拓海!」


 少し離れた場所から柚波の声がした。


 無事らしい。


 俺は安堵しながら立ち上がる。


 だが次の瞬間、その安堵は吹き飛んだ。


 空を巨大な影が横切った。


 見上げる。


 翼を広げた巨大な生物。


 伝説でしか見たことのない姿。


「……ドラゴン?」


 思わず呟く。


 さらに遠くの森では、小柄な緑色の生物たちが獲物を担いで走っていた。


 ゲームで何度も見た姿。


「ゴブリン……だよな」


 柚波が俺の隣まで駆け寄る。


 そして空を見上げたまま。


「ねえ拓海」


「なんだ」


「これってさ……」


 一拍置いて。


 柚波はどこか楽しそうに笑った。


「異世界ってやつじゃない?」


 こうして。


 放送部部長・北条柚波と、副部長・相馬拓海の。


 世界を変える放送が始まった。

遂に始まりました。異世界放送部の物語。異世界と放送というテーマは数年前に考えておりました。本来は、R18の予定でしたが、趣旨を変えて一般のジャンルにしました。

自分の中で、目標がありそれを達成できたら、長期投稿したいと考えています。

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― 新着の感想 ―
放送と異世界のセットは考えもしませんでした!! 異世界物好きなので続きがものすごく気になりました…!
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