第三話 いじめダメ絶対!!
私は学校の屋上に立っていた。
フェンスの向こうから吹く風が、制服のスカートを揺らす。あと一歩踏み出せば、全部終わる。そう思ってここへ来た。でも、そんな私の目の前に、1人の少女が現れた。
『ハロー!私はキラリ!いずれ世界を救う魔法少女だよ♡ あなた、名前は?』
「えっ…えっと、その……。アミです…。」
『アミちゃんか〜、可愛い名前だね!』
彼女は嬉しそうに笑ったあと、不思議そうに首を傾げた。
『でも、なんで自殺しようとしてるの?』
「……っ!?」
心臓が跳ねた。私は何も言ってないのに、彼女はそれを言い当ててみせたのだ。
「その……私クラスメイトにいじめられてて…。もう嫌になっちゃって…。」
『なんでいじめられてるの?』
「……私ちょっと前にサッカー部の先輩に告白されて。」
『うん。』
「断ったんだけど、その先輩のことが好きな子に目をつけられて。」
『あーよくあるやつね。』
軽い口調だった。でも、不思議と馬鹿にされた感じはしなかった。
「私地味だし冴えないし……。標的になっちゃうのはしょうがないから。」
『でもさ、それアミちゃん悪くなくない?』
「……。」
『悪いのいじめてる側じゃん。』
そんな風に言われたのは初めてだった。胸の奥がじわっと熱くなる。
「でも……もう疲れちゃって。」
『……そっか。』
彼女は少しだけ困った顔をした。
すると、何か思いついたように笑みを浮かべ、私の手を引いた。
『こっちおいで。』
「えっ…?むぐ…。」
私は彼女に力強く抱きしめられた。
いい匂いがする。それに暖かくて、すごく柔らかい。
『誰にも相談できなくて、辛かったね。』
彼女の手が私の頭を優しく撫でる。
『よく頑張ったね。』
耳元で彼女に優しく語りかけられ、私は思わず泣き出してしまった。
「辛かった……苦しかった……。誰も助けてくれなかった……。」
彼女は何も言わず、ただ頭を撫で続けてくれた。
「大事なもの……全部取られちゃった……。お母さんからもらった大切なカバンも捨てられて……。男の子に、酷いことされて……。」
『……うん。』
思いの丈を全て彼女にぶちまけた。
『死ぬのは嫌?』
「うん……。」
『いじめてきた子が憎い?』
「うん……いなくなって欲しい……。」
『わかった。私に任せて。』
「えっ……。」
彼女は、にっこり笑っていた。
『いじめてきた子を教えてくれる?』
私は戸惑いながらも、クラスメイトの名前を口にした。
『その3人だけ?』
「うん。」
『わかった。じゃあ、今日はちゃんと家に帰るんだよ?』
そう言い残して、魔法少女は駆け出していった。
次の日、いじめっ子3人は学校に来なかった。
最初はみんな「サボりかな」って言ってたけど、一週間経っても姿を見せず、やがて担任の先生にこう告げられた。
「家庭の事情で転校しました。」
詳しい説明は何もなかった。
『ハロー!アミちゃん、1週間ぶりだね!調子はどう?』
放課後の帰り道。聞き覚えのある声に振り向くと、彼女が手を振っていた。
「あ、魔法少女さん!先日はありがとうございました。」
『お礼なんて大丈夫だよ!それより、いじめは無くなった?』
「はい!おかげさまで。」
『うんうん!良かった良かった。』
彼女は本当に嬉しそうに笑う。
それから、ふと思い出したように大きな紙袋を持ち上げた。
『今日はアミちゃんにプレゼントがあるんだ!』
「プレゼント?」
『じゃーん!』
袋から取り出されたのは、新品のカバンだった。誰でも知ってる有名ブランドのものだ。
「えっ、これ……私に?」
『うん!君のお母さんが贈ったカバンとは別物だけど。アミちゃんは頑張ったから、私からのプレゼントってことで!貰ってくれない?』
「で、でも…こんな高いもの。」
『いいのいいの!これは私の気持ちだから、お金の事は気にしないで!だって……』
彼女は満面の笑みでこう言った。
『あの3人、結構高く売れたから!』




