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無言聖域ーーデグーたちの記録  作者: おじさんヒーロー
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第二部 第64話 月の重さ

無言聖域

第二部 門戸温泉郷編


ここまで読んでいただきありがとうございます。


今回の第64話では、ついにコウ竜の核が戻ってきます。


ですが、その経緯は予想外のものでした。


そして今回、新たに登場するのはスピネルの弟、セレンディバイト。


長い眠りから目覚めた彼が最初に見たのは、十七人の甥や姪達でした。


一方で、月が何をしていたのか。


なぜセレンを眠らせたのか。


なぜ今、目覚めさせたのか。


少しずつ、その理由も語られていきます。


よろしくお願いいたします。


また、本編と繋がる外伝はこちらになります。


DEGUだよ。 外伝その1:近道の先

https://applebrother.wordpress.com/2026/05/20/%e5%a4%96%e4%bc%9d-%e3%81%9d%e3%81%ae1%ef%bc%9a%e8%bf%91%e9%81%93%e3%81%ae%e5%85%88/

解決しないまま夜になった。


ハク達も一度ねぐらへ帰る。


時間は短い。


だが、コウ竜の核は無事に存在している。


そのため、今のところ大きな変化は起きていなかった。


⸻


その頃。


スピネルが帰ってきた。


一人連れて。


⸻


「弟よ」


⸻


セレンディバイト。


その名を聞いた瞬間。


家の中から次々と人が集まってくる。


⸻


「なら家族だね」


クルミが微笑む。


⸻


「お母さんの弟なら、おじさんだね」


アストラが言った。


⸻


「お母さん?」


セレンが固まる。


⸻


スピネルは静かに答えた。


⸻


「私の子供達」


⸻


「子供達!?」


⸻


あちこちから声が飛ぶ。


⸻


「お母さん!」


「お母さん!」


「おかあさん!」


⸻


セレンは辺りを見回す。


⸻


「何人いるんだ……?」


⸻


スピネル。


⸻


「十七人よ」


⸻


沈黙。


⸻


そして。


⸻


セレン。


卒倒した。


⸻


「倒れた!」


⸻


「おじさん弱い!」


⸻


「違うと思う」


⸻


そんな騒ぎの中。


玲桜が気づいた。


⸻


「セレン」


⸻


「何を持っている?」


⸻


セレンの手の中。


⸻


赤い玉。


⸻


コウ竜の核だった。


⸻


「!!」


⸻


「なんで!?」


⸻


セレンは首を傾げた。


⸻


「これ?」


⸻


「探してたやつ?」


⸻


「いつの間にか持ってた」


⸻


あまりにも自然だった。


⸻


「必要ならわたす」


⸻


そう言って。


⸻


なぜか。


⸻


ココアへ渡した。


⸻


「俺、いらないし」


⸻


沈黙。


⸻


全員思う。


⸻


なんでココア?


⸻


「ほい」


⸻


投げた。


⸻


やっぱり。


⸻


「玲桜くんパスー!」


⸻


さらに投げる。


⸻


「投げるな!!」


⸻


複数人が叫ぶ。


⸻


そして。


⸻


それを受け取ったのは。


⸻


月だった。


⸻


静かに受け止める。


⸻


「悪いな」


⸻


そう言って。


玲桜へ渡した。


⸻


「返しといてくれ」


⸻


玲桜は月を見る。


⸻


「何故、謝る?」


⸻


月は少しだけ目を伏せた。


⸻


「境界に落ちていた」


⸻


「借りた」


⸻


沈黙。


⸻


全員止まる。


⸻


月が拾っていた?


⸻


なら。


⸻


なぜ黙っていた。


⸻


なぜ今まで。


⸻


月はスピネルを見る。


⸻


「セレンを起こすのに丁度良かった」


⸻


「!」


⸻


スピネルが月を見る。


スピネルは月を見た。


⸻


「何故……」


⸻


静かな声だった。


⸻


「何故、助けてくれたの?」


⸻


セレンのこと。


⸻


世界が崩壊した日。


⸻


自分のこと。


⸻


全部含めて。


⸻


月はしばらく黙っていた。


⸻


いつものように。


⸻


言葉は少ない。


⸻


だが。


⸻


その瞳は優しかった。


⸻


「ずっと」


⸻


ぽつりと月が言う。


⸻


「聞こえていた」


⸻


スピネルが目を見開く。


⸻


「……?」


⸻


月は続けた。


⸻


「助けて」


⸻


「と」


⸻


それだけだった。


⸻


それだけなのに。


⸻


スピネルには十分だった。


⸻


世界が崩壊した日も。


⸻


セレンが眠りについた日も。


⸻


今も。


⸻


月はずっと聞いていた。


⸻


誰にも届かない声を。


⸻


助けを求める声を。


⸻


そして。


⸻


手を伸ばした。


⸻


ただ、それだけだった。


⸻


スピネルは何も言えなかった。


⸻


月らしい。


⸻


あまりにも月らしい答えだった。


⸻


月の考えは。


スピネルならわかる。


⸻


姉を失ったセレンディバイト。


⸻


あのままでは壊れていた。


⸻


だが。


⸻


スピネルの傍に居続ければ。


⸻


今度は。


⸻


スピネルの代わりに戦い続ける。


⸻


姉を守るために。


⸻


自分を壊しながら。


⸻


それは。


⸻


スピネルも傷つく。


⸻


セレンも傷つく。


⸻


だから。


⸻


眠らせた。


⸻


この世界が平和になるまで。


⸻


月の重さで。


⸻


境界に落ちた核。


⸻


月はすぐに気づいた。


⸻


そして。


⸻


核を使い。


⸻


セレンを起こした。


⸻


同時に。


⸻


起きている異変を。


⸻


そっとスピネルへ伝えた。


⸻


スピネルなら。


⸻


気づく。


⸻


誰が呼んでいるのか。


⸻


何が起きようとしているのか。


⸻


月は静かにスピネルを見た。


⸻


言葉は少ない。


⸻


だが。


⸻


その想いは。


⸻


十分すぎるほど伝わっていた。

第二部第64話を読んでいただきありがとうございました。


今回は、かなり月らしい回になった気がします。


月は普段、多くを語りません。


ですが今回、


「助けて、と聞こえていた」


その一言に、月という存在がよく表れているように思います。


世界が崩壊した日。


セレンが眠りについた日。


そして今。


月はずっと、誰にも届かない声を聞いていました。


だから手を伸ばした。


ただ、それだけです。


また今回、セレンにとっては衝撃の連続だったと思います。


久しぶりに会った姉。


知らない世界。


そして十七人の甥や姪。


卒倒するのも無理はありません。


さらに、行方不明だったコウ竜の核も無事に戻りました。


……戻ったのですが。


投げるな。


という声が何度も聞こえた気がします。


ココアはいつも通りでした。


そして最後に。


スピネルが月へ尋ねた、


「何故、助けてくれたの?」


という問い。


月の答えは短いものでしたが、きっとスピネルには十分だったのでしょう。


長い時を越えて再会した姉弟。


そして、それを見守っていた月。


少しだけ静かな回になりました。


次回もよろしくお願いいたします。


また、本編と繋がる外伝はこちらになります。


DEGUだよ。 外伝:ここが私たちの家


https://applebrother.wordpress.com/2026/05/30/%e5%a4%96%e4%bc%9d%ef%bc%9a%e3%81%93%e3%81%93%e3%81%8c%e7%a7%81%e3%81%9f%e3%81%a1%e3%81%ae%e5%ae%b6/


関連動画はこちら


https://youtube.com/shorts/Md1Us5Rs0uY?si=lVNWlYKnOD10aX-S

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