第二部 第55話 扉
無言聖域
第二部 門戸温泉郷編
ここまで読んでいただきありがとうございます。
今回の第55話では、ついに“外”へ出たガンザの行方が少しずつ見えてきます。
そして、弱っているコウくん。
さらに銀次の能力も、かなり重要な形で描かれます。
普段は眠そうで、やる気もなさそうな銀次ですが、境界や通路に関しては聖域側でも特別な存在です。
そして今回――
吉見と山城の苦労がまた増えます。
よろしくお願いいたします。
作品の設定や登場人物については、作者ブログ「DEGUだよ。」でも少しずつ整理しています。
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「いた」
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銀次が言った。
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眠そうな声。
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だが。
空気が変わる。
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「コウくん」
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その瞬間。
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赤い竜。
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コウが立ち上がる。
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「コウ!?」
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未唯も驚く。
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銀次はゆっくり続けた。
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「核取られて」
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「弱ってて」
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「さらに小さくなってる」
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空気が止まる。
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「このままだと?」
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玲桜が静かに聞く。
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銀次。
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少しだけ目を伏せた。
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「……消える」
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沈黙。
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コウが息を呑む。
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「っ……」
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ハクも険しい顔になる。
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竜にとって。
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“消える”
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それは。
死より重い。
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だが。
玲桜は冷静だった。
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「コウではなく」
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「ガンザを追って欲しいんだが」
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銀次。
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「んー」
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空中の匂いを嗅ぐみたいな仕草。
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周囲が静かになる。
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銀次は。
境界。
通路。
気配。
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そういうものを読む。
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月が“気にしてろ”と言った理由。
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それが。
これだ。
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銀次がぽつり。
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「……外へ行った」
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「たぶん」
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「「「……は?」」」
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空気が凍る。
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山城が叫ぶ。
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「そと!?」
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吉見も立ち上がる。
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「境界の外か!?」
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「核を持った腐敗神が!?」
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「どうやって出たんだ!!」
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「通路は管理されてるぞ!!」
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銀次。
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眠そうに首を振る。
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「違う」
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「通路使ってない」
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沈黙。
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その瞬間。
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銀次。
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大欠伸。
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「ふぁぁ……」
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「寝るなぁぁっ!!」
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吉見と山城が同時に怒鳴る。
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銀次。
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「んあ?」
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起きた。
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ぼんやりしている。
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そして。
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「あー……えっとね」
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のんびり話し始める。
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「お母さんが」
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「外に行くから」
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「ちょっと扉開いてね」
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「っていうから」
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玲桜。
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止まる。
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銀次は普通に続けた。
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「ぼくのは」
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「とても脆いから」
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「長くは持たないよ?」
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「って言ったんだけど」
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少し間。
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「いいわよ」
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「って母さんが言うから」
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「開けたんだ」
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沈黙。
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「…………」
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「…………」
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全員。
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同じことを思った。
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“お母さん?”
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玲桜が静かに聞く。
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「……スピネル母さん?」
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銀次。
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こくり。
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「そこから出た」
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空気が変わる。
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吉見が青ざめる。
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「待て待て待て」
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「今さらっと」
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「とんでもねぇこと言わなかったか?」
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山城も頭を抱える。
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「扉ってなんだ!!」
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「外ってなんだ!!」
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銀次は不思議そうだった。
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「外は外だよ?」
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「境界の外」
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「向こう側」
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完全に。
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説明になっていなかった。
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玲桜だけが静かだった。
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そして。
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小さくつぶやく。
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「……母さん」
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「何を見つけたんですか」
第二部第55話を読んでいただきありがとうございました。
今回は、
「外へ行った」
という銀次の一言から、一気に空気が変わる回になりました。
しかも、通路を使わずに。
これは吉見達が頭を抱えるのも当然です。
また今回、銀次の
「ぼくのは脆いから」
という言葉も、かなり重要です。
銀次の開く“扉”は、普通の通路とは少し違います。
だからこそ、管理された通路を通らずに外へ出ることもできてしまう。
ですが、銀次本人はその危険性をあまり気にしていません。
眠いので。
一方で、玲桜だけは銀次の能力をよく理解しています。
だからこそ、必要以上に責めません。
そして今回、スピネルが自ら外へ出ていることも判明しました。
腐敗神。
核。
扉。
境界の外。
かなり危険な単語ばかり並んでいますが、聖域側は意外と落ち着いています。
……慣れているので。
ですが、本当に危険なのは“何が起きるかわからないこと”なのかもしれません。
世界観や登場人物については、作者ブログ「DEGUだよ。」でも少しずつ整理していますので、よろしければご覧ください。
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