第二部 第54話 コウくん
無言聖域
第二部 門戸温泉郷編
ここまで読んでいただきありがとうございます。
今回の第54話では、ガンザ失踪騒動がさらに大きくなっていきます。
そして明かされるのは、
「取られた」のではなく、
「持って行った」
という事実。
さらに、“コウくん”という新たな名前も出てきます。
読者側だけでなく、吉見や山城達も完全に置いていかれています。
ですが、それが今の無言聖域の日常なのかもしれません。
また今回は、「必要なものに居場所を与える」という、聖域側の考え方も少し描かれています。
よろしくお願いいたします。
作品の設定や登場人物については、作者ブログ「DEGUだよ。」でも少しずつ整理しています。
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「……ガンザ」
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おうりが言った。
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「出て行った」
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空気が止まる。
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聖域側。
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合同庁舎。
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その中にある。
玲桜専用の部屋。
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玲桜は常にここにいるわけではない。
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だが。
何かあれば。
ここへ来る。
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最近は。
日中ここへ来ることも増えた。
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だから。
おうりは思った。
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ここへ来れば。
玲桜に会える。
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そして。
伝えた。
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「ガンザ」
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「出て行った」
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「核を持って」
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「「「!!?」」」
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空気が変わる。
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吉見と山城が同時に叫んだ。
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「な、なんだと!?」
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「取られたのか!?」
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二人がここにいたのは偶然だった。
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西署側の控室。
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合同庁舎の隣。
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あくまで控室。
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たまたま。
客が来ていた。
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だが。
話がやばすぎた。
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おうりは首を振る。
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「取られてない」
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静かな声。
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「強い力で守られてるから」
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「簡単には取れない」
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玲桜が小さく目を伏せた。
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「……クルミ父さんか」
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静かな声。
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どれほどの力を秘めているのか。
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玲桜ですら。
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時々。
わからなくなる。
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山城が恐る恐る聞く。
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「じゃ、じゃあ」
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「核っていうのは……?」
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やばい話だった。
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全部聞いてしまっている。
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だが。
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“なぜそんな危険物を放置しているのか”
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意味がわからない。
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そう思った。
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けれど。
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口は出さない。
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それが。
正解だから。
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必要なものに。
居場所を与える。
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それが。
聖域のやり方。
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おうりが続けた。
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「コウくんが」
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「取られた」
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沈黙。
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「……コウくん?」
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全員。
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同じことを思った。
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“誰?”
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未唯が呆れた顔をする。
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「忘れちゃったの?」
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「記憶力ないのね」
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吉見が混乱する。
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「いや待て」
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「コウって」
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「ドラゴンの?」
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おうり。
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こくり。
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「ちっちゃいの」
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「いた」
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空気が止まる。
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玲桜が頭を抱えた。
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「……あの腐敗神」
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「やっぱり余計なことを」
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山城が恐る恐る聞く。
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「ち、ちっちゃいって」
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「まさか」
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未唯が普通に言う。
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「コウくん」
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「ちっちゃい竜になれるよ?」
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「「「聞いてない!!!」」」
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吉見が叫ぶ。
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玲桜は深いため息をついた。
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「……銀次」
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「追えるか」
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その瞬間。
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部屋の隅。
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寝ていた銀次が。
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片目だけ開ける。
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「……んー」
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眠そうだった。
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だが。
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鼻が。
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わずかに動く。
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空気。
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境界。
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匂い。
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“何か”を。
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探っていた。
第二部第54話を読んでいただきありがとうございました。
今回は、「コウくん」が登場しました。
……とはいえ、名前だけだと誰なのかわかりません。
吉見達と同じ気持ちになった読者の方も多いかもしれません。
実はコウは、小型化できる竜です。
しかも今回は、核を持ち出されたことでかなり弱っています。
そして今回重要なのは、
「ガンザが核を持っている」
というより、
「コウの核が持ち出されている」
という部分です。
玲桜やハクが本当に警戒しているのは、こちらでした。
また今回、銀次がかなり自然にとんでもないことを言っています。
“扉を開けた”。
しかもスピネルの頼みで。
銀次にとっては日常でも、吉見や山城からすれば完全に意味不明です。
ですが、銀次の能力は本来かなり危険なものでもあります。
普段寝ているからこそ、逆に不気味なのかもしれません。
そして最後。
スピネルは、何を見つけたのか。
そのあたりも、少しずつ描かれていきます。
世界観や登場人物については、作者ブログ「DEGUだよ。」でも少しずつ整理していますので、よろしければご覧ください。
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