第二部 第53話 追跡
無言聖域
第二部 門戸温泉郷編
ここまで読んでいただきありがとうございます。
第52話「腐敗神、降臨」を少し追記・修正しました。
ガンザと青年のやり取りや、「ウー」のくだりなど、少し流れを追加しています。
そして今回の第53話では、ガンザ失踪(?)により、玲桜達が動き出します。
とはいえ、問題なのは腐敗神本人というより――
“持ち出したもの”。
さらに今回は、銀次とナイトも登場します。
普段は眠そうな銀次ですが、実はかなり特殊な能力を持っています。
よろしくお願いいたします。
作品の設定や登場人物については、作者ブログ「DEGUだよ。」でも少しずつ整理しています。
https://applebrother.wordpress.com/
「……なんで」
⸻
玲桜は頭を抱えていた。
⸻
「こんな時に……」
⸻
完全に疲れている。
⸻
未唯が心配そうに覗き込む。
⸻
「玲桜くん」
⸻
「お疲れ?」
⸻
未唯は現在。
⸻
玲桜の膝の上にいた。
⸻
当然のように。
⸻
「未唯に」
⸻
「何かできることある?」
⸻
玲桜。
⸻
少し止まる。
⸻
本当なら。
⸻
“なら膝から降りてくれ”
⸻
と言いたかった。
⸻
だが。
⸻
言わない。
⸻
「……いや」
⸻
「いいんだ」
⸻
静かな声。
⸻
完全に諦めていた。
⸻
その頃。
⸻
腐敗神ガンザ。
⸻
失踪中。
⸻
しかも。
⸻
持ち出している。
⸻
“核”。
⸻
玲桜が小さくため息をつく。
⸻
「ナイト」
⸻
「銀次」
⸻
呼ばれた二匹。
⸻
ナイトはすぐ反応する。
⸻
「なに?」
⸻
銀次。
⸻
欠伸。
⸻
「ふぁ……」
⸻
やる気がない。
⸻
玲桜は静かに言う。
⸻
「あの身勝手な腐敗神はどうでもいいが」
⸻
「持ち出したものは」
⸻
「取り返す必要がある」
⸻
空気が少し変わる。
⸻
玲桜の目が細くなる。
⸻
「追えるか?」
⸻
ナイトは素直だった。
⸻
「わからないけど」
⸻
「やってみるよ」
⸻
即答。
⸻
いい子。
⸻
一方。
⸻
銀次。
⸻
「帰っていい?」
⸻
沈黙。
⸻
ナイトが即座にこづく。
⸻
「銀ちゃん!」
⸻
「ちゃんとやって!」
⸻
銀次は眠そうだった。
⸻
「だってぇ……」
⸻
「元々」
⸻
「お母さんに頼まれて様子見てただけだし……」
⸻
玲桜。
⸻
止まる。
⸻
「……お母さん?」
⸻
銀次。
⸻
ぽつり。
⸻
「ぼく」
⸻
「お母さんには頼まれてない……」
⸻
その瞬間。
⸻
全員。
⸻
止まる。
⸻
玲桜が静かに言う。
⸻
「お父さんには」
⸻
「言われてたんだろ?」
⸻
銀次。
⸻
視線を逸らす。
⸻
「……気にしてろとは」
⸻
「言われた」
⸻
沈黙。
⸻
全員。
⸻
同じことを思った。
⸻
“言われてるじゃないか”
⸻
ナイトが苦笑する。
⸻
「ほらぁ」
⸻
銀次は不満そうだった。
⸻
「だってぇ……」
⸻
「眠いし……」
⸻
銀次。
⸻
放っておくと。
⸻
一日中寝ている。
⸻
どこで。
そのエネルギーを消費しているのか。
⸻
誰も知らない。
⸻
……玲桜以外。
⸻
玲桜は何も言わない。
⸻
だが。
⸻
月ですら。
⸻
そんな銀次へ。
⸻
“気にしてろ”
⸻
と言った。
⸻
つまり。
⸻
何かある。
⸻
玲桜の目が静かに細くなる。
⸻
「……やっぱり」
⸻
「何かいるな」
⸻
その瞬間。
⸻
銀次の眠そうな目が。
⸻
一瞬だけ。
鋭く変わった。
⸻
空気。
⸻
通路。
⸻
境界。
⸻
“何か”を。
⸻
探るみたいに。
第二部第53話を読んでいただきありがとうございました。
今回は、玲桜側から見た「ガンザ失踪」が描かれる回になりました。
ただ、玲桜自身も言っている通り、本当に問題なのはガンザ本人ではなく、“核”です。
そして今回、銀次がかなり重要な立ち位置で描かれています。
普段は眠そうで、放っておくとずっと寝ている銀次ですが、実際には境界や通路に対して非常に鋭い感覚を持っています。
玲桜が何も言わず、月ですら「気にしてろ」と言った理由も、そこにあります。
また今回、未唯が普通に玲桜の膝へ座っているのも、ある意味いつもの光景です。
玲桜は何も言いません。
多分、諦めています。
そして最後。
銀次が感じ取った“何か”。
ガンザだけではなく、別のものも動き始めているのかもしれません。
世界観や登場人物については、作者ブログ「DEGUだよ。」でも少しずつ整理していますので、よろしければご覧ください。
https://applebrother.wordpress.com/




