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無言聖域ーーデグーたちの記録  作者: おじさんヒーロー
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81/100

第二部 第52話 腐敗神、降臨

無言聖域

第二部 門戸温泉郷編


ここまで読んでいただきありがとうございます。


今回から、少し変わった視点のお話になります。


舞台は、ごく普通のアパート。


大学へ行かず、漫画を読んで暮らしている青年。


そして――


突然現れる、“腐敗神ガンザ”。


これまで居酒屋未唯で暴れていたガンザですが、今回はかなり別方向に暴れます。


ある意味、外伝のような空気もある回ですが、無言聖域らしい「境界」の話でもあります。


よろしくお願いいたします。


作品の設定や登場人物については、作者ブログ「DEGUだよ。」でも少しずつ整理しています。


https://applebrother.wordpress.com/

大学へは行ってない。


⸻


ずっと。


部屋に篭っていた。


⸻


本当は。


大学なんて行きたくなかった。


⸻


だから。


ちゃんと言った。


⸻


「行きたくない」


⸻


でも。


聞いてはもらえなかった。


⸻


「また漫画!?」


⸻


母の声。


⸻


「大学に行きなさい!!」


⸻


「学費だって出してあげてるのに!!」


⸻


「何が不満なの!?」


⸻


うるさい。


⸻


そう思った。


⸻


だから。


家にも帰りたくなかった。


⸻


ほとんど家に寄り付かない父へ。


⸻


鎌をかけた。


⸻


「浮気のことバラさないから」


⸻


「アパート借りる資金と保証人になって」


⸻


すると。


⸻


二つ返事だった。


⸻


「いいぞ」


⸻


沈黙。


⸻


……ほんとに浮気してたんだ。


⸻


ちょっと引いた。


⸻


だが。


アパート暮らしは快適だった。


⸻


誰にも邪魔されない。


⸻


何もしなくても。


説教されない。


⸻


最高だった。


⸻


漫画。


ゲーム。


動画。


⸻


好きなものだけ。


⸻


静かな部屋。


⸻


そして。


ある日。


⸻


漫画を読みながら。


ウトウトしていた。


⸻


そのまま。


眠る。


⸻


夢。


⸻


……のはずだった。


⸻


『我は腐敗神ガンザ!!』


⸻


目が開く。


⸻


「っ!!?」


⸻


飛び起きた。


⸻


部屋。


⸻


真夜中。


⸻


暗い。


⸻


心臓がバクバクしている。


⸻


「な、なんだ今の……」


⸻


リアルすぎる夢。


⸻


その瞬間。


⸻


『我を敬え!!奉れ!!』


⸻


「うわぁぁっ!!?」


⸻


声。


⸻


今度は。


確実に。


⸻


部屋の中。


⸻


恐る恐る。


視線を向ける。


⸻


机。


⸻


漫画の山。


⸻


その上。


⸻


モルモット。


⸻


「…………は?」


⸻


ふんぞり返っていた。


⸻


黒い。


妙に偉そうな。


モルモット。


⸻


「やっと起きたか愚か者!!」


⸻


「我を放置するとは何事だ!!」


⸻


完全に喋っていた。


⸻


沈黙。


⸻


「…………」


⸻


「…………」


⸻


モルモットが鼻を鳴らす。


⸻


「我は腐敗神ガンザ!!」


⸻


「神である!!」


⸻


「崇めよ!!」


⸻


「敬え!!」


⸻


「奉れ!!」


⸻


部屋の隅。


⸻


コンビニ袋が倒れた。


⸻


現実だった。


⸻


「…………」


⸻


「夢じゃないの?」


⸻


ガンザが怒る。


⸻


「夢ではないわ!!」


⸻


「というか」


⸻


「腹減った!!」


⸻


「なんかよこせ!!」


⸻


沈黙。


⸻


青年は。


数秒考えた。


⸻


そして。


⸻


「……漫画の締切前なのに」


⸻


現実逃避みたいに呟いた。



ガンザは、ふんっと鼻を鳴らした。


「誤用ではない!」


「腐敗神たる我が、自らお前の前へ来てやったのだ!感謝せよ!」


沈黙。


青年は、机の上のモルモットを見る。


黒い。


小さい。


偉そう。


どう見てもモルモット。


だが喋っている。


しかも、妙に態度がでかい。


「……いや」


少し間。


「やっぱ夢では?」


ガンザが怒る。


「夢ではないわ!!」


「現実だ!!」


「もっと驚かんか!!」


「普通、神を見たら跪くものだぞ!!」


青年は真顔だった。


「モルモットにしか見えないし」


「ぬぅぅぅっ!!」


ガンザが机を叩く。


ぺちっ。


軽い音。


威厳がない。


青年はしばらく考えたあと、恐る恐る尋ねた。


「それで……」


「何か御用ですか?」


ガンザ。


止まる。


「…………」


「…………」


「…………忘れた」


「は?」


「いや、なんか重要な理由があった気がするのだが!」


「来る途中で腹が減ってだな!」


「コンビニの匂いとか色々あってだな!」


「途中からそっちに気を取られてしまった!」


青年は頭を抱えた。


「帰ってくれ……」


「……って言うか」


⸻


青年は止まる。


⸻


「コンビニ知ってるんだ」


⸻


ガンザが胸を張る。


⸻


「当然だ!」


⸻


「最近の人間界は面白いぞ!」


⸻


「24時間食料が手に入る!!」


⸻


「神の時代にはなかった文化だ!!」


⸻


なぜか妙に感動していた。


⸻


青年はじっと見る。


⸻


「……AIロボ?」


⸻


「違うわ!!」


⸻


「神だ!!」


⸻


「腐敗神ガンザ!!」


⸻


沈黙。


⸻


その瞬間。


⸻


青年の動きが止まる。


⸻


「……ガンザ?」


⸻


聞いたことがある。


⸻


最近。


⸻


どこかで。


⸻


「……あ」


⸻


思い出した。


⸻


床に積まれた雑誌の山を漁る。


⸻


「あった!」


⸻


取り出したのは。


⸻


『ウー』


⸻


今月号。


⸻


無言聖域特集。


⸻


ドラゴンのイラスト依頼を受けて描いた号だった。


⸻


出版社から送られてきた見本誌。


⸻


ページをめくる。


⸻


そして。


⸻


「あっ」


⸻


「これだ!!」


⸻


『土産物屋おうり!!』


⸻


そこに。


⸻


ふんぞり返る。


黒モルモット。


⸻


『看板ペット』


⸻


『腐敗神ガンザ』


⸻


完全一致。


⸻


ガンザが得意げになる。


⸻


「知っていたか!!」


⸻


「流石に我自らが守る場所であるからな!!」


⸻


ふんぞり返っていた。


⸻


青年。


⸻


無言。


⸻


数秒後。


⸻


「……西署までなら送るけど?」


⸻


ガンザが即答する。


⸻


「我は用があるのだ!!」


⸻


パンパンと前足で机を叩く。


⸻


威厳ゼロ。


⸻


青年は嫌な予感しかしなかった。


⸻


「……聞かない方がいいよな」


⸻


ガンザ。


⸻


ニヤリ。


⸻


「気になるであろう?」


⸻


「気になるよな?」


⸻


ぐいっと顔を近づける。


⸻


「我の用が何か!!」


⸻


青年。


⸻


少し迷う。


⸻


だが。


⸻


気になってしまった。


⸻


「……何?」


⸻


ガンザ。


⸻


胸を張る。


⸻


「漫画を描け!!」


⸻


沈黙。


⸻


「……は?」


⸻


「我を主人公にした漫画だ!!」


⸻


「腐敗神ガンザ冒険譚!!」


⸻


「全世界で大ヒット間違いなし!!」


⸻


「映画化!!」


⸻


「アニメ化!!」


⸻


「ぬいぐるみ化!!」


⸻


「神グッズ大量展開!!」


⸻


青年。


⸻


真顔。


⸻


「帰れ」


第二部第52話を読んでいただきありがとうございました。


今回は、かなり久しぶりに“普通の人間側”から始まる回になりました。


大学へ行きたくない。


家にも居場所がない。


好きなものだけに囲まれて生きていたい。


今回の主人公は、ある意味かなり現代的な人物です。


そして、そんな部屋に突然現れる腐敗神ガンザ。


完全にホラーの導入みたいですが、本人(本神?)はわりと普通に腹を減らしています。


また今回、


「夢だと思ったら現実だった」


という部分も重要です。


無言聖域では、“境界”が曖昧です。


夢。


現実。


異世界。


通路。


気づけば、普通の生活のすぐ隣にあります。


そして、ガンザが何故この青年の前へ現れたのか。


そこも、少しずつ描かれていくかもしれません。


なお、「土産物屋おうり」と看板ペット(?)ガンザについては、外伝「看板ペット誕生」でも描かれています。


合わせて読んでいただけると嬉しいです。


世界観や登場人物については、作者ブログ「DEGUだよ。」でも少しずつ整理していますので、よろしければご覧ください。


https://applebrother.wordpress.com/

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