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無言聖域ーーデグーたちの記録  作者: おじさんヒーロー
8/28

第8話 記録される側

ここまで読んでいただきありがとうございます。


三ページの取材から始まった記録は、少しずつ形を持ち始めています。


帰れなくなる花園。

黒い娘。

黒塗りの車。

エルフの娘。


それぞれ別の出来事のように見えていたものが、同じ場所を中心に重なり始めました。


第8話では、「記録する側」と「記録される側」の距離がさらに近づく場面になります。


静かですが、境界が一段階動く回です。


「……見えた」


記者はもう一度つぶやいた。


校門の前だった。


さっきまで確かにあった。


境界が。


だが今はもうない。


人が歩いている。


車が通っている。


普通の昼だった。


それでも。


記録だけが残っている。


手帳を見る。


境界確認


観測成立


記者は静かに言った。


「書けるな」



編集部。


編集長が顔を上げた。


「どうだった」


記者は答える。


「三ページじゃ足りません」


編集長が言う。


「やめとけ」


記者は笑った。


「無理ですね」



西署。


早見が資料を見ていた。


山城が言う。


「また増えた」


机の上には同じ単語が並んでいる。


花園


黒塗りの車


未帰還


境界


そして。


新しく追加された一行。


記録者


早見が言う。


「誰だこれ書いたの」


山城が答える。


「雑誌U」



そのころ。


校舎裏。


玲桜が立っていた。


静かだった。


だが。


少しだけ違っていた。


「認識されました」


ソラが聞く。


「どこまで?」


玲桜は答えた。


「記録者です」


黒姫が言う。


「止める?」


玲桜は首を振った。


「止めません」



春の園。


世界樹の葉が揺れた。


風はない。


それでも揺れた。


スピネルが言った。


「書かれている」


月が答える。


「読まれている」


スピネルは静かに言った。


「近い」



編集部。


記者が原稿を書く。


帰れなくなる花園


黒い娘


黒塗りの車


エルフの娘


そして。


新しい見出しを書く。


境界


ペンが止まる。


その瞬間だった。


紙の上の文字が。


わずかに揺れた。


記者が顔を上げる。


「……?」


誰もいない。


だが。


確かにいた。


見られている。



校舎裏。


玲桜が静かに言った。


「確認しました」


ソラが聞く。


「なにを?」


玲桜は答えた。


「読まれています」


黒姫が言う。


「どこまで?」


玲桜は静かに答えた。


「三ページ以上です」



西署。


早見が言った。


「普通の記事じゃないな」


山城が答える。


「ああ」


そして静かに言った。


「普通の場所でもない」



編集部。


記者が最後の一行を書く。


観測成立


その瞬間だった。


窓の外の空気が揺れた。


風が止まった。


音が消えた。


そして。


誰かの声がした。


「そこまでです」


記者が振り向く。


誰もいない。


だが。


確かに聞こえた。



校舎裏。


玲桜が空を見る。


「境界が重なりました」


黒姫が言う。


「始まる?」


玲桜は答えた。


「はい」


そして静かに言った。


「次は接触です」

第8話を読んでいただきありがとうございました。


これまで観測されていた側だった場所に対して、記録する側がはっきりと認識され始める段階に入りました。


三ページの記事として始まった出来事が、少しずつ現実の出来事と重なっていきます。


次回は、帰れなくなる花園へさらに近づく動きが出てきます。


続きを楽しんでいただけたらうれしいです。

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