第7話 見えてしまった記録
ここまで読んでいただきありがとうございます。
「三ページの取材」から続いている雑誌Uの記録は、これまで断片的に描かれてきましたが、第7話では取材側が少しだけ境界に近づきます。
帰れなくなる花園。
黒い娘。
黒塗りの車。
エルフの娘。
それぞれ別の出来事のように見えていたものが、同じ場所に集まり始めています。
今回は、その“記録する側”に変化が起きる回です。
第7話 見えてしまった記録
「三ページじゃ足りないな」
記者は言った。
編集部の机の上には資料が並んでいた。
写真はない。
録音もない。
証拠もない。
だが。
記録だけが増えている。
帰れなくなる花園
黒い娘
黒塗りの車
そして。
新しく加わった言葉。
エルフの娘
記者はペンを止めた。
「……同じ場所だ」
編集長が顔を上げる。
「確定か」
記者は答えた。
「ほぼ」
そして言った。
「行ってきます」
編集長は静かに言った。
「近づきすぎるな」
記者は笑った。
「三ページ分だけですよ」
⸻
学校の前だった。
昼だった。
人もいる。
車も通る。
普通の場所だった。
だが。
違っていた。
記者は立ち止まった。
「……近い」
空気が違う。
音が違う。
距離が違う。
説明できない違いだった。
⸻
校門の前に。
黒塗りの車が止まっていた。
前にも見た車だった。
同じ位置だった。
同じ距離だった。
同じ止まり方だった。
記者はメモを取る。
「観測位置固定」
そして。
一歩。
前に出た。
⸻
その瞬間だった。
風が止まった。
音が消えた。
人の声が遠くなった。
記者が立ち止まる。
「……?」
見えた。
校門の奥に。
何かがある。
門ではない。
壁でもない。
だが。
境界だった。
⸻
そのときだった。
声がした。
「そこまでです」
振り向く。
玲桜が立っていた。
いつの間にか。
すぐ後ろに。
記者が言った。
「関係者ですか」
玲桜は答えた。
「違います」
そして静かに言った。
「記録者ですね」
記者の手が止まる。
「……なぜ」
玲桜は答える。
「書いていますから」
⸻
記者が聞いた。
「ここは何ですか」
玲桜は少し考えてから言った。
「まだ記事にならない場所です」
記者は笑った。
「もう書いてますよ」
玲桜は静かに言った。
「知っています」
⸻
その瞬間だった。
風が戻った。
音が戻った。
距離が戻った。
境界が消えた。
⸻
記者は立ち尽くしていた。
手帳を見る。
さっき書いた文字が残っている。
境界確認
記録対象あり
観測成立
記者は小さく言った。
「……見えた」
⸻
遠くで。
玲桜が空を見ていた。
黒姫が言う。
「大丈夫?」
玲桜は答えた。
「はい」
そして静かに言った。
「三ページになります」
第7話を読んでいただきありがとうございました。
これまで観測されていた側だった場所に対して、取材側が初めて「見えてしまう」段階に入ります。
三ページの記事として始まった記録が、少しずつ現実と重なり始めました。




