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無言聖域ーーデグーたちの記録  作者: おじさんヒーロー
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第6話 正式案件

ここまで読んでいただきありがとうございます。


「三ページの取材」から始まった出来事は、


帰れなくなる花園

黒い娘

黒塗りの車

エルフの娘


と少しずつつながり始めています。


第6話では、それらの出来事が「外側」から正式に認識され始める場面を書いています。


静かな回ですが、物語の流れが動き出す節目になります。

第6話 正式案件


「また来てるな」


早見が言った。


西署の駐車場の端だった。


山城が視線を動かす。


「あれか」


黒塗りの車だった。


前に見たのと同じ型。


同じ位置。


同じ距離。


同じ止まり方。


偶然には見えなかった。


「張ってるな」


早見が言う。


山城はため息をついた。


「誰をだ」


早見は少し考えてから言った。


「場所だ」


署内に戻ると。


机の上に封筒が置かれていた。


見覚えのない封筒だった。


赤い印が押されている。


山城が言う。


「なんだこれ」


早見が封を開ける。


中には紙が一枚だけ入っていた。


短い文章だった。


対象地域は特別観測区域に指定する


現地介入は段階制限付きとする


単独判断による接触は禁止


対象存在への直接干渉を禁ずる


山城が言う。


「警察の文書じゃないな」


課長が後ろから言った。


「その通りだ」


二人が振り向く。


課長は静かに続けた。


「正式案件になった」


同じころ。


校舎裏。


玲桜が立ち止まった。


「来ています」


ソラが聞く。


「黒塗りの車?」


玲桜は首を振った。


「違います」


そして言った。


「その後ろです」


黒姫が空を見る。


何もない。


だが。


確かにいた。


見えない観測がある。


春の園。


世界樹の葉が揺れた。


風は吹いていない。


それでも揺れた。


スピネルが立ち上がる。


「……観てる」


月が言う。


「どこからだ」


スピネルは答えた。


「外」


そして静かに言った。


「境界の外」


西署。


早見が資料を机に置いた。


地図だった。


失踪地点が並んでいる。


山城が言う。


「囲んでるな」


早見がうなずく。


「中心がある」


山城が言う。


「学校か」


早見が答える。


「ああ」


そして言った。


「取材の連中も来てた」


山城が顔をしかめる。


「雑誌Uか」


早見は笑う。


「三ページの記事だってな」


そのころ。


校門の前に。


また黒塗りの車が止まった。


前回と同じ位置。


同じ距離。


同じ静けさ。


だが。


今日は違った。


もう一台いた。


別の車だった。


黒ではない。


警察でもない。


救急でもない。


自衛隊でもない。


玲桜が言った。


「来ました」


ソラが聞く。


「誰?」


玲桜は答えた。


「外交ルートです」


黒姫が言う。


「もう?」


玲桜はうなずいた。


「はい」


そして静かに言った。


「黒塗りの車は観測です」


少し間を置いて続けた。


「こちらは確認です」


西署。


早見が窓の外を見る。


遠くに黒塗りの車が止まっている。


山城が言う。


「普通の案件じゃないな」


早見が笑う。


「最初からだ」


そして静かに言った。


「でも」


少しだけ真顔になって続けた。


「ここから先は警察だけの案件じゃない」


校舎裏。


玲桜が空を見る。


「境界が認識されました」


黒姫が言う。


「遅かったくらい」


玲桜は静かに答えた。


「はい」


そして言った。


「始まりました」

第6話を読んでいただきありがとうございました。


黒塗りの車の意味や、西署の動き、そして観測されている側だった場所が「認識される側」へ変わっていく様子を書いています。

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