第二部 第49話 腐敗神の核
無言聖域
第二部 門戸温泉郷編
ここまで読んでいただきありがとうございます。
今回の第49話は、久しぶりにかなり賑やかな「居酒屋未唯」回です。
月、スピネル、クルミ、おうり。
一番奥では静かな時間が流れている一方で、店の中央では今日も騒動が起きています。
そして今回――
腐敗神ガンザにとって、とんでもない事件が発生します。
本人(本神?)からすれば大惨事なのですが、聖域側の反応はいつも通りです。
特に、ソラと黒姫の
「不穏」
「いつものことよ」
あたりが、かなり聖域の日常を表している気がします。
今回も、少し騒がしくて、おかしな無言聖域の日常を楽しんでいただければと思います。
作品の設定や登場人物については、作者ブログ「DEGUだよ。」でも少しずつ整理しています。
https://applebrother.wordpress.com/
居酒屋未唯。
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今日も騒がしい。
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竜。
デグー。
神。
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普通なら。
世界が滅ぶ組み合わせだった。
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だが。
ここでは。
いつものことだった。
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店の一番奥。
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静かな席。
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そこに。
月。
スピネル。
クルミ。
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そして。
おうりがいた。
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喧騒から少し離れた場所。
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クルミが。
おうりへ料理を勧める。
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「お食べ」
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「遠慮はいらないよ」
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おうりは少し戸惑う。
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だが。
言われるまま。
一口。
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止まる。
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「……おいしい」
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小さな声だった。
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クルミが笑う。
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「よかった」
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その空気を。
スピネルが静かに見ていた。
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「なんだか」
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「騒がしいわね」
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月が面倒そうに答える。
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「ほっとけ」
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「いつものことだ」
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スピネルが小さく笑った。
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「そうね」
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その頃。
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あいが店の中を動いていた。
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料理。
飲み物。
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静かに。
確実に。
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そして。
ふと止まる。
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「あ」
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「いけない」
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「あ、お母さんに渡すものがあるんだった」
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その瞬間。
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ココアが元気よく手を上げた。
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「あいちゃん!」
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「私にお任せ!!」
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ソラが止まる。
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黒姫も止まる。
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あいが少し首を傾げる。
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「渡してきてくれるの?」
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「はーい!」
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元気な返事。
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その瞬間。
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ソラがぽつり。
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「不穏」
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黒姫が即答する。
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「いつものことよ」
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完全に信用されていない。
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あいは。
小さな黒い玉を取り出した。
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丸い。
黒い。
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妙に嫌な気配。
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「これ」
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「お母さんに頼まれたものよ」
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ココアが敬礼する。
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「了解!」
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そして。
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次の瞬間。
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投げた。
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「「「やっぱり!!!」」」
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店内総ツッコミ。
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黒い玉が。
宙を舞う。
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おうりがぽかんとする。
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「あう?」
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その瞬間。
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ガンザが止まった。
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モルモット姿のまま。
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目を見開く。
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「……ッ!!」
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「ア、アレは!!」
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店内の空気が変わる。
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ガンザが絶叫した。
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「我の核ぅぅぅぅっ!!」
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沈黙。
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「「「何ぃぃぃっ!?」」」
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竜達が立ち上がる。
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ハクが固まる。
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「核!?」
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コウが叫ぶ。
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「投げるなぁぁ!!」
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リョクが青ざめる。
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「そんな軽く扱うものじゃない!!」
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アオが頭を抱える。
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「なんで投げた!!」
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ココアは普通だった。
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「え?」
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「届けるだけだよ?」
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その瞬間。
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黒い玉が。
スピネルの前へ。
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ふわり。
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スピネルが片手で受け止める。
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静寂。
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スピネルが玉を見る。
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そして。
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「……ココア」
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優しい声。
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ココアがビクッとする。
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「はい」
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「投げてはいけません」
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「ごめんなさい」
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即謝罪。
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月がぼそっと言う。
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「学習しねぇな」
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クルミが苦笑する。
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「まぁまぁ」
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ガンザは震えていた。
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「我の核……」
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「投げられた……」
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完全にショックを受けていた。
第二部第49話を読んでいただきありがとうございました。
今回は、
「腐敗神の核を投げる」
という、とんでもない事件が起きました。
普通なら大惨事です。
ですが、ココアなので仕方ありません。
そして、それを見た全員の
「やっぱり」
という反応も、かなり重要です。
つまり、“予想通り”だったということです。
また今回、一番奥の席では、おうりが初めて「美味しい」と感じています。
これは小さな場面ですが、おうりにとってはかなり大きな意味を持っています。
彷徨っていた存在が、
「食べる」
「座る」
「誰かと一緒にいる」
という、ごく普通の日常へ少しずつ触れ始めています。
一方で、ガンザ。
腐敗神でありながら、完全に周囲のペースへ巻き込まれています。
ですが、それもまた無言聖域らしいところなのかもしれません。
神も竜も異形も。
気がつけば同じ卓を囲んでいる。
それが、門戸温泉郷という場所です。
世界観や登場人物については、作者ブログ「DEGUだよ。」でも少しずつ整理していますので、よろしければご覧ください。
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