第二部 第47話 彷徨う者
無言聖域
第二部 門戸温泉郷編
ここまで読んでいただきありがとうございます。
今回の第47話では、「おうり」という存在の過去が少し語られます。
歳を取らない。
病にも侵されない。
怪我をしても治ってしまう。
それは“特別”ではなく、“恐れられる理由”でした。
人から離れ、彷徨い続けた存在。
ですが、おうりは“声”を聞いていました。
泣いている者達。
帰る場所を失った者達。
そして最後に辿り着いたのが、門戸温泉郷です。
今回は、無言聖域という作品の中でも、「家」と「帰る場所」が強く描かれる回になっています。
作品の設定や登場人物については、作者ブログ「DEGUだよ。」でも少しずつ整理しています。
https://applebrother.wordpress.com/
彷徨っていた。
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ずっと。
ひとりだった。
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いつからなのか。
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どうしてなのか。
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わからない。
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覚えているのは。
遠い昔。
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両親と思われる者達。
兄弟姉妹。
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そのくらい。
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あとは。
曖昧だった。
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気持ち悪い。
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どこかへ行け。
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化け物。
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そう言われた。
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何故なのか。
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理由はあった。
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歳を取らない。
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怪我をしても。
すぐ治る。
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流行病で。
人が倒れていく。
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だが。
自分だけ。
何事もなく生きている。
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怖がられた。
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隠れるようになった。
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人から。
世界から。
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そして。
気づいたことがあった。
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“声”が聞こえる。
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泣いている者達。
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自分と同じ。
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彷徨う者。
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帰る場所を失った者。
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その存在が。
わかる。
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だから。
気がつけば。
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湯気の蔓延した町へ来ていた。
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門戸温泉郷。
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そこには。
恐ろしいものがいた。
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竜。
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異形。
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世界を壊しそうな気配。
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怖かった。
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だが。
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もっと恐ろしいものが現れた。
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黒。
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圧倒的な存在。
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足が震えた。
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声も出ない。
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怖くて。
逃げた。
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なのに。
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感じた。
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恐ろしいのに。
優しいもの。
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あたたかいもの。
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“家”。
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行かなければ。
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今。
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すぐ。
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そして。
聞こえた。
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『帰る場所』
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『なくなっちゃったかい?』
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優しい声だった。
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おうりの瞳から。
涙が落ちる。
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クルミは。
ただ静かに。
そこにいた。
第二部第47話を読んでいただきありがとうございました。
今回は、おうりの視点から描かれる回になりました。
おうりは、人ではありません。
ですが、怪物でもありません。
ただ、“普通”ではなかった。
そして、それだけで居場所を失ってしまった存在です。
今回重要なのは、
「泣いている者の声が聞こえる」
という部分です。
おうりは、自分と同じように“彷徨う者”を感じ取っています。
だからこそ、無意識に門戸温泉郷へ辿り着きました。
また今回、クルミの
「帰る場所、なくなっちゃったかい?」
という言葉も、かなり重要な意味を持っています。
敵かどうか。
何者なのか。
それより先に、“居場所を失ったか”を聞く。
それがクルミという存在です。
だからこそ、聖域には多くの者が集まるのかもしれません。
世界観や登場人物については、作者ブログ「DEGUだよ。」でも少しずつ整理していますので、よろしければご覧ください。
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