第二部 第44話 約束したから
長儒会との会談は終わった。
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黒塗りの車。
山奥の屋敷。
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張り詰めていた空気も。
少しずつ解け始めている。
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長儒会の老人達は。
深く頭を下げたままだった。
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もう。
支配しようとは思っていない。
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理解してしまったから。
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聖域へ手を出す意味を。
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その時だった。
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ココアがぽつりと言った。
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「あいつら」
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静かな声。
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「始末しちゃったほうがよくない?」
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沈黙。
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長儒会側が固まる。
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吉見が吹き出しそうになる。
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山城が頭を抱えた。
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「サラッと怖ぇこと言うな!!」
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ココアは真面目だった。
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「だって」
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「また変な気起こしたら嫌じゃん」
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ももが小さくうなずく。
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「クルミ危ないのやだ」
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コスピも静かに老人達を見る。
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「監視必要」
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あいは黙ったまま。
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だが。
小さな炎が揺れていた。
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長儒会の老人達が青ざめる。
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ハクが小さくつぶやく。
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「まぁ」
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「合理的ではある」
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「おい竜!!」
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山城が叫ぶ。
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だが。
その瞬間。
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クルミが困ったように笑った。
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「だめだよ」
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空気が静かになる。
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クルミは穏やかだった。
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「せっかく」
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「約束してくれたんだから」
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静かな声。
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怒っていない。
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責めてもいない。
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ただ。
信じている。
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それだけだった。
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ココアが少しむくれる。
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「むー」
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「でもぉ」
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クルミが笑う。
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「ココア」
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「疑い続けたら」
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「きっと終わらないよ」
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沈黙。
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長儒会の老人達が。
静かにクルミを見る。
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理解できなかった。
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これほどの力を持ちながら。
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なぜ。
こんなにも。
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“優しい”のか。
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ハクが小さく目を閉じる。
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「だから」
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「聖域なのじゃろうな」
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ライも静かにうなずく。
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「うん」
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「クルミは」
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「終わらせない」
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その瞬間。
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ももがクルミへ抱きつく。
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「クルミ好き❤️」
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コスピも当然のようにくっつく。
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「一緒」
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あいは無言で背中へ。
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山城が遠い目をした。
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「……なんかもう」
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吉見が苦笑する。
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「世界を救う父親って感じだな」
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クルミは困った顔で笑うだけだった。
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その瞬間。
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世界樹の気配が。
静かに揺れた。
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まるで。
その言葉に。
安心したみたいに。




